平川新『日本の歴史第12巻 開国への道』(2008年11月刊行)

 小学館『日本の歴史』12冊目の刊行となります。一般向け通史にしては、日露外交史の記述が多すぎるかな、とも思いますが、ヨーロッパから見た「帝国」としての日本像の紹介、大塩平八郎・水野忠邦・遠山景元・鳥居耀蔵といった著名な人物の評価や天保の改革の見直しなど、江戸時代後期の歴史に詳しくない私のような一般読者にとっては、なかなか楽しめる一冊になっていると思います。

 本書では、幕府や諸藩の政治が「世論」を重視し、それに対応した政策をとろうとしていたことが、具体的な事例とともに論証されており、以前の江戸幕府観に慣れた人にとっては、こうした見解は新鮮に思われるかもしれません。私にとっては新鮮な見解が、具体的な事例とともに紹介されているという意味で、これまで刊行された小学館『日本の歴史』12巻のなかで、本書はもっとも面白く読めました。

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