アジアモンスーンと歴史との関係

 アジアモンスーンと東アジアの歴史との関係を論じた研究(Zhang et al., 2008)が公表されました。この研究では、万向(Wanxiang)洞窟にあった石筍から再現した過去1810年間のアジアモンスーンの記録から、その威力が北半球の気温・氷河サイクル・太陽活動の変動にどう関係してきたかについて、考察されました。その結果、気温とアジアモンスーンの相関関係が1960年頃に変化しており、20世紀後半におけるアジアモンスーンの変化の要因としては、自然現象よりも人間の行動のほうが大きいのではないか、と示唆されています。

 またこの研究で注目されるのは、アジアモンスーンと東アジアの政治動向との関連が追及されていることです。農業用灌漑には欠かせない水を提供してきたアジアモンスーンが強かった時代である北宋などの王朝では、稲作が発展して人口が急増したとされます。一方、アジアモンスーンが弱く結果的に乾燥した時代と、唐・元・明といった王朝が滅亡した時代は一致するのではないか、と指摘されています。


参考文献:
Zhang P. et al.(2008): A Test of Climate, Sun, and Culture Relationships from an 1810-Year Chinese Cave Record. Science, 322, 5903, 940-942.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1163965

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