12000年前のシャーマン?

 レヴァント南部のヒラゾン=タクティット洞窟遺跡(イスラエル北部)で発見された女性人骨は、現時では世界最古のシャーマンと考えられる、と論じた研究(Grosman et al., 2008)が報道されました。この遺跡は、定住の開始・採集から農耕生活様式への変化と関連する、明白な社会経済的変化が進行していたナトゥーフ文化(ナトゥーフィアン、15000~11500年前)期のもので、年代は12000年前頃とされています。

 この遺跡の発掘により墓の存在が明らかになりましたが、そこには小柄で年配で障害のある女性が埋葬されていました。その女性には、50もの完全な亀の甲羅や、猪・鷲・牛・豹・2匹の貂の体の一部や、人間の足といった副葬品が伴っていました。この墓と隣接する墓や他のナトゥーフィアン期の墓には類例がないことから、この研究では、この女性は特別な地位にあり、社会経済的変化に伴う思想・観念の変化により生じた信仰体系におけるシャーマンだったと考えられる、としていますが、断定するのは時期尚早だろう、と私は思います。


参考文献:
Grosman L. et al.(2008): A 12,000-year-old shaman burial from the southern Levant (Israel). PNAS, 105, 46, 17665-17669.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0806030105

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