インドにおける最初期の現生人類

 インドにおける最初期の現生人類について論じた研究(Kumar et al.,2008)が公表されました。現生人類の出アフリカについては、アフリカ東部からアラビア半島を経てインドへという経路が有力視されていて、その年代は5万年前よりもさかのぼり、70000~66000年前頃ともされています。

 この研究では、インドにおける最初期の現生人類の移住者は、ミトコンドリアDNAのハプログループではM2系統に代表されるのではないか、と推測されています。M系統は、N系統と同じくL3系統から分岐し、非アフリカ人はMまたはN系統に属します。M2系統は、37000年前までには存在していたと考えられます。

 最初期の移住者は狩猟採集民と考えられますが、最終氷期最大期と氷河期末期(23000~14000年前頃)のインドの気候は乾燥して厳しいものであり、狩猟採集民にとって楽なものではありませんでした。気候的条件が改善された12000~7000年前頃になって、人口の急速な拡大が起きました。

 その後、3000年前頃の農業拡大の結果として、森林伐採により狩猟採集民の伝統的な生活範囲が失われていき、狩猟採集民集団は断片化されると共に、農耕民に同化していきました。こうして、最初期の移住者の構成要素は衰退していくことになりました。


参考文献:
Kumar S. et al.(2008): The earliest settlers' antiquity and evolutionary history of Indian populations: evidence from M2 mtDNA lineage. BMC Evolutionary Biology, 8:230.
http://dx.doi.org/10.1186/1471-2148-8-230

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