人類の脳の進化と精神分裂症

 健常者と精神分裂症の患者との比較から、人間の脳の進化と新陳代謝との関係について論じた研究(Khaitovich et al.,2008)が公表されました。この研究によると、脳におけるエネルギー代謝に関連する遺伝子と代謝物質が、健常者と精神分裂症とでは異なっており、この異なった箇所が、他の異ならない箇所よりも、人間の認識能力に大きな影響を与えているだろう、とのことです。

 この研究では、他の霊長類との比較といった先行研究の成果も参照すると、人間の認識能力に関わる遺伝子は、人類進化において比較的近年の間に、おそらくは正淘汰の結果として、急速に変化したように見える、とされています。こうしたことから、人間の脳内の代謝物質における変化が、人間の認識能力の進化における重要な段階だったかもしれない、と示唆されています。また、精神分裂症が人間の脳進化の高価な副産物である、という理論も支持される、とのことです。


参考文献:
Khaitovich P. et al.(2008): Metabolic changes in schizophrenia and human brain evolution. Genome Biology, 9, 8, R124.
http://dx.doi.org/10.1186/gb-2008-9-8-r124

この記事へのコメント

ますらお
2008年12月17日 08:21
精神分裂病は今現在、統合失調症と名称が変わっています。

理由は分かりませんが、以前までの数十年間、私の父は統合失調症で、母と共に苦労して生きてきました。
精神分裂病という名前は、精神病患者の方や家族の者にしてみれば、とても差別的な言葉を意味していると思っていました。


まだまだ、日本の中においては精神病患者の方々への偏見や無知が根強くありますので、どうか今後は統合失調症と明記していただきいです。

宜しくお願いいたします<(_ _;)>
2008年12月17日 23:29
ご指摘を受けて、ちょっと調べてみました。

そうすると、6年前に、日本精神神経学会総会によって訳語が「統合失調症」と変更されていたことを知りました。

ご指摘を受けるまで、このことはまったく知らず、自分の無知を恥じ入るばかりです。

今後は、気をつけます、申し訳ありませんでした。

この記事へのトラックバック