オモ人骨の年代
ホモ=サピエンス(現生人類)の起源を論じるさいに、ほとんど必ずと言ってよいくらい言及されるオモ人骨(オモ1号とオモ2号)の年代についての論文2本(Feibel., 2008, McDougall et al.,2008)が公表されました。両方ともオンライン版での先行公開で、まだ印刷されていません。まだ要約しか読んでいませんが、ブログの記事でやや詳しく知ることができました。オモ1号人骨は解剖学的にはほぼ完全な現代人とみなされていますが、オモ2号人骨はやや原始的とされています。
オモ人骨については、リチャード=クライン博士により後世の人骨の嵌入ではないか、との疑問が呈されています。また、発見からかなりの年代が経過しており、発見時の正確な層を特定できるのか、との疑問もあります。この2本の論文では、さまざまな証拠から、発見時にオモ人骨の存在した層の推定がなされています。ファイベル博士の論文(Feibel., 2008)では、オモ人骨の出土した層が改めて層序学的に分析され、オモ1号とオモ2号はほぼ同じ層から出土した、とされています。
イアン=マクドーガル博士らの論文(McDougall et al.,2008)は、オモ人骨の出土したキビシュ層の各層の堆積が急速であることと、地中海における腐泥の沈殿と同時に起きていることとを指摘し、オモ1号の年代は、下限値の104000±7000年前に近いのではなく、上限値の198000±1400年前に近いのであり、195000±5000年前と推測される、としています。これは、マクドーガル博士らの以前の論文(McDougall et al.,2005)の結論を支持するものとなります。
マクドーガル博士達は、2003年に公表され、当時は最古の現生人類人骨とされたホモ=サピエンス=イダルツ(White et al.,2003)を強く意識しているようで、オモ人骨はイダルツより4万年古く、年代の確実な最古の現生人類人骨なのだ、と指摘しています。オモ人骨は、現生人類の起源を追求するうえでひじょうに重要なので、今後のさらなる研究の進展が期待されます。
参考文献:
Feibel CS.(2008): Microstratigraphy of the Kibish hominin sites KHS and PHS, Lower Omo Valley, Ethiopia . Journal of Human Evolution, 55, 3, 404-408.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2008.05.011
McDougall I. et al.(2005): Stratigraphic placement and age of modern humans from Kibish, Ethiopia. Nature, 433, 733-736.
http://dx.doi.org/10.1038/nature03258
McDougall I. et al.(2008): Sapropels and the age of hominins Omo I and II, Kibish, Ethiopia. Journal of Human Evolution, 55, 3, 409-420.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2008.05.012
White TD. et al.(2003): Pleistocene Homo sapiens from Middle Awash, Ethiopia. Nature, 423, 742-747.
http://dx.doi.org/10.1038/nature01669
オモ人骨については、リチャード=クライン博士により後世の人骨の嵌入ではないか、との疑問が呈されています。また、発見からかなりの年代が経過しており、発見時の正確な層を特定できるのか、との疑問もあります。この2本の論文では、さまざまな証拠から、発見時にオモ人骨の存在した層の推定がなされています。ファイベル博士の論文(Feibel., 2008)では、オモ人骨の出土した層が改めて層序学的に分析され、オモ1号とオモ2号はほぼ同じ層から出土した、とされています。
イアン=マクドーガル博士らの論文(McDougall et al.,2008)は、オモ人骨の出土したキビシュ層の各層の堆積が急速であることと、地中海における腐泥の沈殿と同時に起きていることとを指摘し、オモ1号の年代は、下限値の104000±7000年前に近いのではなく、上限値の198000±1400年前に近いのであり、195000±5000年前と推測される、としています。これは、マクドーガル博士らの以前の論文(McDougall et al.,2005)の結論を支持するものとなります。
マクドーガル博士達は、2003年に公表され、当時は最古の現生人類人骨とされたホモ=サピエンス=イダルツ(White et al.,2003)を強く意識しているようで、オモ人骨はイダルツより4万年古く、年代の確実な最古の現生人類人骨なのだ、と指摘しています。オモ人骨は、現生人類の起源を追求するうえでひじょうに重要なので、今後のさらなる研究の進展が期待されます。
参考文献:
Feibel CS.(2008): Microstratigraphy of the Kibish hominin sites KHS and PHS, Lower Omo Valley, Ethiopia . Journal of Human Evolution, 55, 3, 404-408.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2008.05.011
McDougall I. et al.(2005): Stratigraphic placement and age of modern humans from Kibish, Ethiopia. Nature, 433, 733-736.
http://dx.doi.org/10.1038/nature03258
McDougall I. et al.(2008): Sapropels and the age of hominins Omo I and II, Kibish, Ethiopia. Journal of Human Evolution, 55, 3, 409-420.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2008.05.012
White TD. et al.(2003): Pleistocene Homo sapiens from Middle Awash, Ethiopia. Nature, 423, 742-747.
http://dx.doi.org/10.1038/nature01669
この記事へのコメント