安田次郎『日本の歴史第7巻 走る悪党、蜂起する土民』(2008年6月刊行)

 小学館『日本の歴史』7冊目の刊行となります。さまざまな分野の話題が手際よくまとめられており、南北朝時代~15世紀末までをこの分量でまとめた通史としては、無難な出来になっていると思います。本書では、この時代の様相を、生産力の発展とそれによって生み出された富の争奪を軸とした、階級間闘争として描く傾向にあった以前の歴史観にたいして、むしろ飢饉や疫病などのさまざまな危機への対応を中心として動いていた、とする見解が作用されています。この見解は魅力的ですが、通説となるには、自然科学も含めての諸分野との学際的研究も必要になるでしょう。

 本書で提示された見解で面白いと思ったのは、土一揆と応仁の乱との関係です。土一揆は応仁の乱の間はあまり勃発しておらず、応仁の乱の前後には盛んだったとのことです。このことから、土一揆と足軽の主力はかなり重なり合うのではないか、と推測されます。他には、義満・義持父子の関係について、義持が義満の路線を否定した側面が強調されてきたのにたいして、継承・発展させた側面も少なからずある、との指摘も興味深いものでした。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック