網野徹哉『興亡の世界史12 インカとスペイン 帝国の交錯』
講談社の『興亡の世界史』シリーズ13冊目となります(2008年5月刊行)。アンデス地域とスペインを交錯させつつ、両者が出会った16世紀前半からではなく、その前の両者の歴史から説き起こし、両者が決別した19世紀前半までを叙述した、なかなかの意欲作だと思います。
スペイン史(イベリア半島)における排除・強制・同化と寛容・共生という二つの方向性からの、スペイン統治下のアンデス地域にたいする視点は興味深いものでした。この時代のスペイン・南米史については詳しくないので、この時代のスペインは不寛容だとの印象が強かったのですが、私が想像していた以上にこの時代のスペインは多様な社会だったようです。
16世紀後半~17世紀前半の、スペイン帝国内におけるポルトガル系商人の台頭と弾圧については、不勉強なためにこれまで知らなかったことなので、興味深いものがありました。スペイン衰退の要因を、こうした不寛容さに求めると分かりやすいのですが、じっさいには色々と複合的な要因があるのでしょうし、不寛容さと衰退の因果関係は私の見識では断定できません。
やや残念だったのは、スペインの「黒い伝説」が巻末のラス=カサスの人物伝でちょっと触れられていたくらいだ、ということです。イベリア半島の大半がかつてイスラーム勢力に支配されていたということで、他のヨーロッパ諸国からのスペインへの視線に偏見があったことが指摘されていますが、この問題とスペインの「黒い伝説」の浸透との関係について、やや詳しく著者の見解を読みたかったものです。
スペイン史(イベリア半島)における排除・強制・同化と寛容・共生という二つの方向性からの、スペイン統治下のアンデス地域にたいする視点は興味深いものでした。この時代のスペイン・南米史については詳しくないので、この時代のスペインは不寛容だとの印象が強かったのですが、私が想像していた以上にこの時代のスペインは多様な社会だったようです。
16世紀後半~17世紀前半の、スペイン帝国内におけるポルトガル系商人の台頭と弾圧については、不勉強なためにこれまで知らなかったことなので、興味深いものがありました。スペイン衰退の要因を、こうした不寛容さに求めると分かりやすいのですが、じっさいには色々と複合的な要因があるのでしょうし、不寛容さと衰退の因果関係は私の見識では断定できません。
やや残念だったのは、スペインの「黒い伝説」が巻末のラス=カサスの人物伝でちょっと触れられていたくらいだ、ということです。イベリア半島の大半がかつてイスラーム勢力に支配されていたということで、他のヨーロッパ諸国からのスペインへの視線に偏見があったことが指摘されていますが、この問題とスペインの「黒い伝説」の浸透との関係について、やや詳しく著者の見解を読みたかったものです。
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