蜂の社会性の起源

 蜂の社会性がどのように発達してきたか、という問題について指摘した研究(Hughes et al.,2008)が公表されました。日本語要約を参照すると、この研究は以下のようなものです。

 多数のミツバチ・アリ・大型のハチは強い協力関係で結ばれた社会を形成しています。この研究では、こうした生活様式が選択されたのは、便利だからではなく、ファミリー遺伝子の伝承に適しているからだ、と指摘されました。

 繁殖能力のない働きバチや働きアリが、群れにわずかしかいない繁殖能力のある個体の子を世話するような「真社会性」社会に見られる「利他主義」は、長い間、進化のうえで謎とされてきました。この研究では、真社会性昆虫であるミツバチ・大型のハチ・アリ267種の雌の交尾行動が比較されました。

 その結果、古い種ではすべて一夫一婦制でした。まれに雌が複数の雄と交尾するような種も確認されましたが、それは最近になって進化したものでした。この研究結果により、一夫一婦制ひいては高い近縁性が真社会性の進化の鍵であったという説が裏付けられました。

 このため、「血縁選択説」の推測通り、真社会性という協力体制はおそらく、血縁関係にある個体が共通して所有する遺伝子の一部を後世に確実に伝えられるようにする手段として進化した、と推測されます。


参考文献:
Hughes WOH. et al.(2008): Ancestral Monogamy Shows Kin Selection Is Key to the Evolution of Eusociality. Science, 320, 5880, 1213-1216.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1156108

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