シリアのフンマル遺跡での新たな発掘

 まだ日付は変わっていないのですが、6月19日分の記事を掲載しておきます。今年5月8~10日にかけて開催された、「中東およびその隣接地域の下部・中部旧石器時代」というシンポジウムにおける報告の要約です(P26)。シリアのフンマル遺跡は1980年代に発掘され、フンマル文化(フンマリアン)という新たな文化が認識されました。その後、1999~2005年にも発掘が行なわれ、この報告では、新たな発掘と分析に基づいた、フンマリアンの位置づけが提言されています。

 フンマル遺跡では11000以上の石器と、200以上の骨の断片が発見されており、フンマリアン6層の年代は22~16万年前頃となります。フンマリアンはウム=エル=トレルといった他の旧石器遺跡でも見つかっています。フンマル遺跡ではラミナール(薄片)技法が確認されましたが、同時にルヴァロワ技法も確認されています。

 フンマル遺跡で見られる薄片技法は、イスラエルのハヨニム洞窟でも確認されており、両者の比較が進められています。また、パルミラに近いジャート=アジュラとドウアラアという二つの洞窟遺跡からも、薄片石器群が発見されており、大まかにはタブンD層型に分類されています。フンマル遺跡などに見られる薄片技法の流行は、中東における旧石器時代の変遷を解明するうえで、興味深い事例となりそうです。

参考文献:
Wojtczak D.(2008): The Hummalian industry from Hummal. The Lower and Middle Palaeolithic in the Middle East and Neighbouring Regions.

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック