フロレシエンシスの祖先集団も小柄だった?
まだ日付は変わっていないのですが、6月18日分の記事を掲載しておきます。今年2月4~6日にかけてキャンベラで開催されたオーストラリア国立大学考古学科学会議で、フロレシエンシスについてのデビー=アーギュー博士の報告(Argue et al.,2008)が報道されました。PDFファイルで要約を読めます。
アーギュー博士は以前、フロレシエンシスの正基準標本とされるLB1人骨を分析し、フロレシエンシスを新種とする見解を支持しました(Argue et al.,2006)。その研究では、2人の小頭症患者を含む現代人、アウストラロピテクス属、177万年前頃のドマニシ人、ホモ属のハビリス・エルガスター・エレクトスが、LB1と比較されました。この研究では、LB1の四肢の比率がアウストラロピテクス属に近いことが指摘されました。
今回の報告では、頭蓋と下顎骨の分岐学的分析が行なわれ、サピエンス・ハイデルベルゲンシス・エレクトス・エルガスター・ハビリス・ドマニシ人と、LB1との比較が行なわれました。その結果、以前の研究成果も合わせて考えると、フロレシエンシスが小柄なのは島嶼化によるのではなく、その祖先集団が小柄だったからだ、と推測されています。
LB1の頭蓋はエルガスターまたはハビリスと似ていましたが、これが示唆しているのは、エルガスターまたはハビリスとフロレシエンシスとが共通祖先をもっていたということのみだ、とアーギュー博士は考えています。アーギュー博士によると、フロレシエンシスの祖先集団は225~200万年前頃にアフリカを離れたと考えられますが、その後すぐに東南アジアにまで進出したのではなく、アフリカから東南アジアへといたる途中でフロレシエンシスへと進化した可能性もある、とのことです。
フロレシエンシスを、エレクトスが島嶼化により小型化したことで進化した人類ではなく、エレクトス以前の人類集団において、現生人類の直系祖先と分岐した人類の子孫と考えることには、一定以上の根拠があると言えるでしょう。ただ、フロレシエンシスとアウストラロピテクス属との類似性は収斂進化によるものかもしれない、との指摘もあるので(Morwood et al.,2008,P87-88)、フロレシエンシスの起源についてはまだ確定したとは言えない状況でしょう。もちろんその前に、現在フロレシエンシスとされているLB1を含む人骨群が、現生人類なのか否かという問題を確定しなければなりません。
参考文献:
Argue D. et al.(2006): Homo floresiensis: Microcephalic, pygmoid, Australopithecus, or Homo? Journal of Human Evolution, 51, 4, 360-374.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2006.04.013
Argue D.(2008): Homo floresiensis: what is it? Where does it fit in the human story? ANU Archaeological Science 2008 Conference.
Morwood M, and Oosterzee PV.著(2008)、馬場悠男監訳、仲村明子翻訳『ホモ・フロレシエンシス』上・下(日本放送出版協会、原書の刊行は2007年)、関連記事
アーギュー博士は以前、フロレシエンシスの正基準標本とされるLB1人骨を分析し、フロレシエンシスを新種とする見解を支持しました(Argue et al.,2006)。その研究では、2人の小頭症患者を含む現代人、アウストラロピテクス属、177万年前頃のドマニシ人、ホモ属のハビリス・エルガスター・エレクトスが、LB1と比較されました。この研究では、LB1の四肢の比率がアウストラロピテクス属に近いことが指摘されました。
今回の報告では、頭蓋と下顎骨の分岐学的分析が行なわれ、サピエンス・ハイデルベルゲンシス・エレクトス・エルガスター・ハビリス・ドマニシ人と、LB1との比較が行なわれました。その結果、以前の研究成果も合わせて考えると、フロレシエンシスが小柄なのは島嶼化によるのではなく、その祖先集団が小柄だったからだ、と推測されています。
LB1の頭蓋はエルガスターまたはハビリスと似ていましたが、これが示唆しているのは、エルガスターまたはハビリスとフロレシエンシスとが共通祖先をもっていたということのみだ、とアーギュー博士は考えています。アーギュー博士によると、フロレシエンシスの祖先集団は225~200万年前頃にアフリカを離れたと考えられますが、その後すぐに東南アジアにまで進出したのではなく、アフリカから東南アジアへといたる途中でフロレシエンシスへと進化した可能性もある、とのことです。
フロレシエンシスを、エレクトスが島嶼化により小型化したことで進化した人類ではなく、エレクトス以前の人類集団において、現生人類の直系祖先と分岐した人類の子孫と考えることには、一定以上の根拠があると言えるでしょう。ただ、フロレシエンシスとアウストラロピテクス属との類似性は収斂進化によるものかもしれない、との指摘もあるので(Morwood et al.,2008,P87-88)、フロレシエンシスの起源についてはまだ確定したとは言えない状況でしょう。もちろんその前に、現在フロレシエンシスとされているLB1を含む人骨群が、現生人類なのか否かという問題を確定しなければなりません。
参考文献:
Argue D. et al.(2006): Homo floresiensis: Microcephalic, pygmoid, Australopithecus, or Homo? Journal of Human Evolution, 51, 4, 360-374.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2006.04.013
Argue D.(2008): Homo floresiensis: what is it? Where does it fit in the human story? ANU Archaeological Science 2008 Conference.
Morwood M, and Oosterzee PV.著(2008)、馬場悠男監訳、仲村明子翻訳『ホモ・フロレシエンシス』上・下(日本放送出版協会、原書の刊行は2007年)、関連記事
この記事へのコメント