ウズベキスタンでネアンデルタール人骨発見

 ウズベキスタンで発見された、ネアンデルタール人のものと思われる人骨についての研究(Glantza et al.,2008)が公表されました。まだ要約しか読んでいませんが、ブログの記事でやや詳しく知ることができました。この論文は校正中で印刷されておらず、確定版ではないので、印刷されたら国会図書館で全文を閲覧してプリントアウトしようと思います。

 中央アジアでは中部旧石器時代の人骨が少なかったのですが、ウズベキスタンのオビ=ラクマート洞穴とアンヒラーク洞窟という二つの中部旧石器遺跡から、2003年になって人骨が発見されました。どちらもルヴァロワ式石器が共伴しましたが、アンヒラーク洞窟ではオビ=ラクマート洞穴ほどルヴァロワ式剥片石器が多くはなく、アンヒラーク洞窟の石器はイランのクンジー洞窟のそれと似ている、とのことです。また、カットマークや焼いた跡の見られる動物骨も共伴しました。

 オビ=ラクマート洞穴では堆積物から年代が測定され、石灰質の沈殿物によるウラン系列法により、10~7万年前頃との結果が得られました。電子スピン共鳴法では、上層が73000~57000年前、下層が87000年前との結果が得られました。アンヒラーク洞窟では人骨(AH-1)は中足骨しか発見されず、年齢も種も確定できていませんが、予備的な放射性炭素年代測定法では、43900~38100年前との結果が得られました。

 オビ=ラクマート洞穴の人骨(OR-1)は、ばらばらになった永久歯の上顎歯列と、120以上の断片的な頭蓋から成り、9~12歳くらいの子供と推測されています。その歯列状態からOR-1はネアンデルタール人だと推測され、比較的厚い頭蓋断片も、OR-1がネアンデルタール人だと示唆しています。

 しかし、OR-1のいくつかの頭蓋断片に見られる頭頂の孔は、現代人の37%に見られますが、ネアンデルタール人とされるアムッド1号・シャニダール1号などには見られません。また、オビ=ラクマート洞穴の人骨の外耳道は低く、これは現生人類にも見られる特色です。ただ、OR-1の内耳の形態を見ると、小さく広い後半規管が確認され、これはネアンデルタール人に見られる特色です。

 全体的に、OR-1はネアンデルタール人的特徴を示していますが、現生人類的特徴も示しているように思われます。このことから、OR-1はネアンデルタール人と現生人類との混血を示している、との解釈も可能でしょうが、種内における変異とも解釈できます。OR-1の存在した場所と年代を考慮に入れると、現時点では後者のほうが妥当であるように思われますが、この問題については、古人骨のさらなる検証が必要となるでしょう。


参考文献:
Glantza M. et al.(2008): New hominin remains from Uzbekistan. Journal of Human Evolution, 55, 2, 223-237.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2007.12.007

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