五味文彦『日本の歴史第5巻 躍動する中世』(2008年4月刊行)

 小学館『日本の歴史』5冊目の刊行となります。「新視点・中世史、人びとのエネルギーが殻を破る」とのことで、1970年代の小学館版『日本の歴史』の「日本史の社会集団」や、2000年代の講談社版『日本の歴史』の「**史の論点」の巻と似た役割を担うことになるのでしょう。

 碩学の著作だけあって、さまざまな史料・研究が引用され、幅広い視点から中世が論じられています。色々と興味深い指摘がなされているのですが、とくに面白いと思ったのは、中世都市が三つに類型化されていることです。その典型が京都・博多・奈良であり、それぞれの都市の原理・基軸・性格を列挙していくと、京都(中央・ヒト・政治)・博多(境界・モノ・港湾)・奈良(異界・ココロ・宗教)となります。中世初期のこれら三都市に続いて多数の都市が中世に登場しますが、そうした都市の多くは、この三類型の要素の複合から成っています。

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