川尻秋生『日本の歴史第4巻 揺れ動く貴族社会』(2008年3月刊行)

 小学館『日本の歴史』4冊目の刊行となります。災害・地方政治の在り様・各地の戦乱・宗教の変容・貴族の生活・外交など、幅広く取り扱われています。その分、個々の事象について深く掘り下げられていないとの感想もあるとは思いますが、概説書としてはこれでよいのではないでしょうか。

 イエ成立の原動力を、「公」のなかに「私」が入り込んでいくという、9世紀末~10世紀初における社会の構成原理の変革に求める見解は、なかなか興味深いものがあります。もっとも、「公」と「私」という概念の区別が、多分に現代的視点によるものではないのか、との疑問も残ります。和歌を用いて当時の交通を復元するという試みも、なかなか興味深いものがありました。

この記事へのコメント

2008年04月01日 00:08
今年に入ってから、中国語テキスト二冊と漫画『カラマーゾフの兄弟』以外、本を買っていません。劉公嗣さんの紹介されている『興亡の世界史』や小学館『日本の歴史』シリーズも、結局、「積ん読」になるのではないかと思って買っていません。また、買っておきながら読まないで「積ん読」している本もたくさんあります。
 今は、前から「積ん読」してあった、というか親父からもらった河口慧海の『チベット旅行記』をぼつぼつ読み出しています。
2008年04月01日 23:56
積ん読という悪習は宋代に始まると小島毅『中国の歴史07 中国思想と宗教の奔流』にありましたが、私も購入したのに読んでいない本がかなりあります。

古書店で安く購入した本がほとんどで、近年の刊行でないから後回しにしようと考えて、読まないままになってしまいます。

この記事へのトラックバック