原聖『興亡の世界史07 ケルトの水脈』
講談社の『興亡の世界史』シリーズ8冊目となります(2007年7月刊行)。キリスト教・古典古代文明とならんで、欧州文明の源流とされるケルトが取り上げられていますが、本書でも強調されているように、ケルトの定義はじつに曖昧です。私はケルトについての専門書を読んだことがなく、予備知識が乏しいということもあってか、本書を読んでも、ケルトがいかなるものなのか、どうもはっきりと思い描くことができませんでした。もっとも、予備知識の乏しい分野でしたので、色々と教えられるところが多く、つまらなかったというわけではありません。
本書の基本的な視座には、近代民族主義的歴史観への批判があり、近代になって「再発見」されたケルトと、古代のケルトとを安易に結びつけることへの批判は納得できるものでしたし、そうした視点は、日本史を学ぶさいにも必要なものなのでしょう。また、キリスト教のなかでもとくにカトリックが、土着の異端的要素を取り込みつつ勢力を拡大していったことは、以前より指摘されていますが、本書においては、現代のみならず、中世・近世の異端的要素を、キリスト教浸透以前のケルトの伝統と安易に結びつけることに慎重な態度がとられており、こうした点にも共感できます。欧州文明の源流の一つとされるゲルマンも、本書と同じような視点で、『興亡の世界史』シリーズにて取り上げてもらいたいところですが、このシリーズでの刊行がないのは残念です。
本書の基本的な視座には、近代民族主義的歴史観への批判があり、近代になって「再発見」されたケルトと、古代のケルトとを安易に結びつけることへの批判は納得できるものでしたし、そうした視点は、日本史を学ぶさいにも必要なものなのでしょう。また、キリスト教のなかでもとくにカトリックが、土着の異端的要素を取り込みつつ勢力を拡大していったことは、以前より指摘されていますが、本書においては、現代のみならず、中世・近世の異端的要素を、キリスト教浸透以前のケルトの伝統と安易に結びつけることに慎重な態度がとられており、こうした点にも共感できます。欧州文明の源流の一つとされるゲルマンも、本書と同じような視点で、『興亡の世界史』シリーズにて取り上げてもらいたいところですが、このシリーズでの刊行がないのは残念です。
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