佐々木敏『龍の仮面』
徳間書店より2003年4月に刊行された小説です。佐々木氏については以前触れたことがありますが、
https://sicambre.seesaa.net/article/200708article_31.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200711article_31.html
本書も佐々木氏の他の作品と同様に国際政治サスペンスで、中国と米国を中心として、近未来の国際情勢を描いた作品となっています。
都市と農村の格差・軍内部にとどまらない中国全体の多元的状況といった中国の実情を背景としつつ、中国の軍上層部と米国の上層部の思惑が交錯しつつ物語が展開していきますが、日本などの中国周辺国のミサイル防衛網が構築されたら、中国が分裂しようが内戦状態になろうがかまわない、という前提のもとに米国の工作が進んでいくのはさすがにどうかと思います。あくまで小説ですから、面白く読者にうけそうな設定にしたということでしょうか。また、工作員の選定の描写に顕著なのですが、人物造形というか人物観にやや皮相なところがあるようにも思われます。
本書で指摘された中国の問題点については、妥当なところが少なくありませんが、中国の多元的状況と分裂、さらには台湾「独立」の可能性については、強調しすぎているところがあるかな、と思います。読者としておもに日本人が想定されていたでしょうから、少なからぬ日本人の願望を反映した結果なのでしょう。本書を読んだ中国人の中には、日本の世界における相対的地位が低下している中での、日本人の現実逃避の表れではないか、と優越感を抱く人も少なくないように思われます。
https://sicambre.seesaa.net/article/200708article_31.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200711article_31.html
本書も佐々木氏の他の作品と同様に国際政治サスペンスで、中国と米国を中心として、近未来の国際情勢を描いた作品となっています。
都市と農村の格差・軍内部にとどまらない中国全体の多元的状況といった中国の実情を背景としつつ、中国の軍上層部と米国の上層部の思惑が交錯しつつ物語が展開していきますが、日本などの中国周辺国のミサイル防衛網が構築されたら、中国が分裂しようが内戦状態になろうがかまわない、という前提のもとに米国の工作が進んでいくのはさすがにどうかと思います。あくまで小説ですから、面白く読者にうけそうな設定にしたということでしょうか。また、工作員の選定の描写に顕著なのですが、人物造形というか人物観にやや皮相なところがあるようにも思われます。
本書で指摘された中国の問題点については、妥当なところが少なくありませんが、中国の多元的状況と分裂、さらには台湾「独立」の可能性については、強調しすぎているところがあるかな、と思います。読者としておもに日本人が想定されていたでしょうから、少なからぬ日本人の願望を反映した結果なのでしょう。本書を読んだ中国人の中には、日本の世界における相対的地位が低下している中での、日本人の現実逃避の表れではないか、と優越感を抱く人も少なくないように思われます。
この記事へのコメント