鐘江宏之『日本の歴史第3巻 律令国家と万葉びと』(2008年2月刊行)
小学館『日本の歴史』3冊目の刊行となります。本書は、このような通史ものとしては珍しく、政治史の記述がきわめて少ないのが特徴となっています。このような全集ものの通史でも、たとえば第2巻『日本の原像』のような主題別の巻ならば、このような構成でもよいでしょうし、巻末にてこのような構成とした理由が述べられてはいますが、通常の巻でこのような構成になっていることには、やや疑問が残ります。
ただ、そうした点をのぞけば、個々に紹介された事例や、8世紀初頭における、それまでの朝鮮半島経由での文化・技術の導入から、自覚的な中国文明の摂取という転換を示した全体的な構想など、なかなか興味深い記述・構成になっていると思います。とくに面白いと思った指摘は、現代日本の「はんこ(印章・印鑑)」社会の直接の源流が、律令体制ではなく中世の禅宗社会にあることと、教団道教の導入をめぐるやり取りです。
古代日本国家が、意図的に教団道教を排除していたことは有名ですが、遣唐使が玄宗に謁見したとき、仏教だけではなく道教を日本に持ち帰ってはどうか、と玄宗が日本からの使節に勧めたことは知りませんでした。さすがに日本側も玄宗の面前でこれを断ることはできなかったようで、申し訳程度に何人かに道教を学ばせたそうですが、教団道教がなぜ古代日本において忌避されたのか、今後時間を見つけて調べてみようと思います。
ただ、そうした点をのぞけば、個々に紹介された事例や、8世紀初頭における、それまでの朝鮮半島経由での文化・技術の導入から、自覚的な中国文明の摂取という転換を示した全体的な構想など、なかなか興味深い記述・構成になっていると思います。とくに面白いと思った指摘は、現代日本の「はんこ(印章・印鑑)」社会の直接の源流が、律令体制ではなく中世の禅宗社会にあることと、教団道教の導入をめぐるやり取りです。
古代日本国家が、意図的に教団道教を排除していたことは有名ですが、遣唐使が玄宗に謁見したとき、仏教だけではなく道教を日本に持ち帰ってはどうか、と玄宗が日本からの使節に勧めたことは知りませんでした。さすがに日本側も玄宗の面前でこれを断ることはできなかったようで、申し訳程度に何人かに道教を学ばせたそうですが、教団道教がなぜ古代日本において忌避されたのか、今後時間を見つけて調べてみようと思います。
この記事へのコメント