中期石器時代の南アフリカにおける、人類の環境への対応と石器技術の関係

 中期石器時代の南アフリカにおける、石器技術の変遷と環境変化との関係を論じた研究があります。まだ要約しか読んでいませんが、国会図書館だと全文の閲覧・プリントアウトが可能なので、国会図書館に行ったときに、他の論文とあわせてプリントアウトしようと考えています。

 この研究では、ブロンボス洞窟とクラシーズ河口洞窟群という、南アフリカの中期石器時代の二つの重要な遺跡が取り上げられています。ブロンボス洞窟のスティル=ベイ文化と、その後に続く、クラシーズ河口洞窟群のハウイソンズ=プールト文化の石器技術が、行動学的・生態学的研究成果とともに検証され、環境変化にたいする人類の対応という文脈のなかに位置づけられています。前者は両面加工の尖頭器が、後者は細石器が特徴的な文化です。

 この研究における検証が示しているのは、スティル=ベイ文化は、酸素同位体ステージ4(71000~59000年前頃)の開始における環境条件の悪化の結果として生じた、ということです。この環境条件の悪化により、資源は不足し、広範囲に分布することになりました。スティル=ベイ文化における両面加工の尖頭器に特化した戦略は、広範囲への移動により、石器素材の供給源から離れることが多くなったことに対応したものと考えられます。その後に続くハウイソンズ=プールト文化は、情報共有戦略の改善として出現し、より作業に特化した道具により、資源はもっと効率的に利用されました。

 人類の活動が環境に大きく左右されることは言うまでもありませんが、人類の活動のなかでもとくに痕跡の豊富な石器の技術的変遷を、環境変化への対応と関連させて論じたという意味で、興味深いものがあります。今後、他の地域・他の技術についても、環境の変化との関係が検証されることが期待されます。


参考文献:
Grant S. McCall.(2007): Behavioral ecological models of lithic technological change during the later Middle Stone Age of South Africa. Journal of Archaeological Science, 34, 10, 1738-1751.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jas.2006.12.015

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック