数え方と文化の発達

 一般的には、文化が発達するとともに計数の仕組みも複雑になっていき、たとえば、短かったり物に特化したりしている数え方は、数の概念の発達における初期段階と考えられています。しかし、そうした通念に反するような例があることを指摘した研究が公表されました。この研究には日本語の要約もあります。

 メラネシアとポリネシアの言語のなかには、大規模で抽象的な「発達した」数え方から、短かったり物に特化したりしている数え方が派生している例が認められます。たとえば、ココナッツ100個を表す言葉は、カヌー100艇を表す言葉と異なっています。こうした単純な数え方は、より大きな計算単位を用いるため、文字による表記方法を持たない人々の間では、遠距離での商取引の支払いや貢ぎ物の経過を追跡するさいに有利だったとされます。

 人類の文化は多様であって、ある傾向は認められても、そうした傾向に反する例もしばしば認められるものなのでしょう。文字のない文化においては、この研究で紹介されているメラネシアやポリネシアのような言語の変遷は、合理的とも言えます。人類は、その社会的条件のなかで柔軟に合理性を発揮するのであり、その在り様は一つとは限らない、ということなのだと思います。


参考文献:
Sieghard Beller and Andrea Bender.(2008): The Limits of Counting: Numerical Cognition Between Evolution and Culture. Science, 319, 5860, 213-215.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1148345

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