野生チンパンジーの研究による「おばあさん仮説」の検証
野生チンパンジーは閉経と寿命が尽きるのがほぼ同じである、との研究が公表されました。閉経後も女性が長く生きるのは霊長目では人間だけの特徴であり、その「おばあさん」が子育ての経験を活かして繁殖の成功度を高め、集団の繁栄に寄与した、とする「おばあさん仮説」が提示されています。しかし、現存生物で人間にもっとも近縁な生物であるチンパンジーについては、大規模な研究がなかったこともあり、異論も提示されていました。
この研究では、野生チンパンジー6集団を調査したところ、チンパンジーと人間の出生率は、40代に衰え始めるという、似たような型を示しました。しかし、チンパンジーは人間とは異なり、生殖機能の衰えと寿命が尽きることがほぼ一致し、健康な女性は晩年まで高い出生率を維持していました。このことから、チンパンジーには閉経後にも長く生きるとの仮説を支持する証拠は見つけられなかった、とされています。
「おばあさん仮説」は、石原都知事の発言により日本でも有名になりましたが、「おばあさん」がどうというよりは、平均寿命の向上が人類集団の発展要因になった、と考えるのがよいでしょう。この研究は、大規模な調査だったという点で貴重なものであり、今後は、閉経後も長く生きるようになったのが人類史においてどの時点だったのか、という研究が進展することを期待しています。
参考文献:
Melissa Emery Thompson, James H. Jones, Anne E. Pusey, Stella Brewer-Marsden, Jane Goodall, David Marsden, Tetsuro Matsuzawa, Toshisada Nishida, Vernon Reynolds, Yukimaru Sugiyama, and Richard W. Wrangham.(2007): Aging and Fertility Patterns in Wild Chimpanzees Provide Insights into the Evolution of Menopause. Current Biology, 17, 2150-2156.
http://www.current-biology.com/content/article/abstract?uid=PIIS0960982207022725
http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2007.11.033
この研究では、野生チンパンジー6集団を調査したところ、チンパンジーと人間の出生率は、40代に衰え始めるという、似たような型を示しました。しかし、チンパンジーは人間とは異なり、生殖機能の衰えと寿命が尽きることがほぼ一致し、健康な女性は晩年まで高い出生率を維持していました。このことから、チンパンジーには閉経後にも長く生きるとの仮説を支持する証拠は見つけられなかった、とされています。
「おばあさん仮説」は、石原都知事の発言により日本でも有名になりましたが、「おばあさん」がどうというよりは、平均寿命の向上が人類集団の発展要因になった、と考えるのがよいでしょう。この研究は、大規模な調査だったという点で貴重なものであり、今後は、閉経後も長く生きるようになったのが人類史においてどの時点だったのか、という研究が進展することを期待しています。
参考文献:
Melissa Emery Thompson, James H. Jones, Anne E. Pusey, Stella Brewer-Marsden, Jane Goodall, David Marsden, Tetsuro Matsuzawa, Toshisada Nishida, Vernon Reynolds, Yukimaru Sugiyama, and Richard W. Wrangham.(2007): Aging and Fertility Patterns in Wild Chimpanzees Provide Insights into the Evolution of Menopause. Current Biology, 17, 2150-2156.
http://www.current-biology.com/content/article/abstract?uid=PIIS0960982207022725
http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2007.11.033
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