形態学からの現生人類とネアンデルタール人との混血の否定

 ネアンデルタール人と現生人類との混血の証拠ではないかとされている、ルーマニア出土の後期更新世の‘Cioclovina’人骨は、完全に現生人類の範疇に入り、ネアンデルタール人との混血を示すものではない、との研究報道されました。‘Cioclovina’人骨は、年代の確実な欧州最初期の現生人類とされています。この研究は、今年8月7日分の記事で紹介した研究を否定するものです。

 この研究では、立体的な幾何学上の形態学的分析を用いて、ネアンデルタール人も含むアフリカ・レヴァント・欧州の中期~後期更新世の人骨群が検証されています。その結果‘Cioclovina’人骨は、全般的にやや頑丈であるなど微妙な点で現代人とは異なるものの、頭蓋の形態において完全に現代人的であることを示しており、ネアンデルタール人との混血の所産だという仮説は支持されない、と結論づけられています。

 ただ、この論文の著者であるハーヴァティ博士は、ネアンデルタール人と現生人類との混血の可能性を否定しておらず、限定的な混血があった可能性も認めています。これには私も同感で、なかなか難しいとは思いますが、形態学または遺伝学の分野から、ネアンデルタール人と現生人類との混血の決定的な証拠を示す研究が提示されることを期待しています。


参考文献:
Katerina Harvatia, Philipp Gunza, and Dan Grigorescu.(2007): Cioclovina (Romania): Affinities of an early modern European. Journal of Human Evolution, 53, 6, 732-746.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2007.09.009

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