絶滅ホモ属からの遺伝的継承

 “archaic Homo”(ここでは「絶滅ホモ属」と訳しておきます)と現生人類との混血について指摘した研究が公開されました。適応的な対立遺伝子が絶滅ホモ属から現生人類へと継承された、つまり両者の間に混血のあった可能性が指摘されています。絶滅ホモ属との混血が稀であっても、混血で得られた対立遺伝子に現生人類にとって選択的利点があれば、それが現生人類の間で固定・拡散することはありえます。

 脳の発達に関係するマイクロセファリンを含むいくつかの遺伝子座が、絶滅ホモ属から現生人類へと継承された遺伝子の候補となります。これは、現生人類の認識の進化が、ネアンデルタール人のような絶滅ホモ属の遺伝的遺産にあるていど依存していた可能性を示唆します。

 この研究は、昨年11月9日分の記事で紹介した論文などに依拠し、ネアンデルタール人のような絶滅ホモ属と現生人類との混血を指摘しています。遺伝学的には、ネアンデルタール人と現生人類との混血を否定する研究がほとんどですが、核内DNAの分析が進めば、混血の痕跡が発見される可能性があるのではないか、と私は考えています。その意味で、現在進行中のネアンデルタール人のゲノム解読には大いに期待しています。


参考文献:
John Hawks, Gregory Cochran, Henry C. Harpending, and Bruce T. Lahn.(2008): A genetic legacy from archaic Homo. Trends in Genetics, 24, 1, 19-23.
http://dx.doi.org/10.1016/j.tig.2007.10.003

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