人類進化の諸説にたいする統計学的評価
人類の進化についてはさまざまな説が主張されていますが、人類進化に関する遺伝学の諸データを統計学的に評価した研究が公表されました。近年のほとんどの遺伝学的データは、我々現代人の起源が最近のアフリカにあることを支持していますが、アフリカ起源の現生人類とユーラシアの先住ホモ属(たとえばネアンデルタール人)との間で完全な置換が起きたのか、それとも混血があったのか不明なままです。
この研究では、アフリカ人・アジア人・先住アメリカ人の50の核遺伝子座のデータが用いられ、統計学的に処理されました。その結果、多地域進化説や同化説と比較して、急激な増加を伴うアフリカ人による置換という単純なモデル(現生人類のアフリカ単一起源説)のほうが、可能性が高い(78%)ことが分かりました。現生人類の起源は141000年前頃、現生人類の出アフリカは51000年前頃、アメリカ大陸への植民は10500年前頃と考えられます。
また、この統計が支持する単一起源説は、現代人における常染色体座の深い系統(分岐年代がミトコンドリアDNAやY染色体よりも古くなります)をも説明できます。常染色体座の系統の深さは、ホモ=エレクトスとの混血の痕跡だと以前は解釈されました。
以上、この研究についてざっと見ました。考古学の研究成果を参考にすると、出アフリカやアメリカへの移住の年代が新しすぎるように思えるのが気になりますが、興味深い研究です。核遺伝子座の研究が多地域進化説に否定的なのは当然としても、先住ホモ属が現生人類に同化されたとの説にも否定的なのには困惑しています。
ミトコンドリアDNAとY染色体の研究においては、現生人類とユーラシアの先住ホモ属との混血の証拠はこれまでのところ得られていませんし、今後どれだけ現代人のミトコンドリアとY染色体のDNAを採取して分析したところで、おそらくその証拠は得られないでしょう。しかし、核DNAの研究では、現生人類と先住ホモ属との混血の痕跡が見つかるのではないかと期待していましたし、じっさいその可能性を示唆した研究もあるので(昨年8月29日分の記事と、昨年11月9日分の記事とで紹介しました)、正直なところこの研究を知って失望してしまいました。
確かに、現代人間の変異については、ミトコンドリアとY染色体よりも常染色体の(少なからぬ遺伝子座の)ほうが大きいとは思いますが(分岐年代が古くなります)。現生人類と先住ホモ属との混血の遺伝学的根拠とは、現代人の常染色体の多様性を誤って解釈したということになるのでしょうか。ただ、同化説がほぼ否定されたというわけでもないと思いますので、今後も私は同化説を主張していきます。
この研究では、アフリカ人・アジア人・先住アメリカ人の50の核遺伝子座のデータが用いられ、統計学的に処理されました。その結果、多地域進化説や同化説と比較して、急激な増加を伴うアフリカ人による置換という単純なモデル(現生人類のアフリカ単一起源説)のほうが、可能性が高い(78%)ことが分かりました。現生人類の起源は141000年前頃、現生人類の出アフリカは51000年前頃、アメリカ大陸への植民は10500年前頃と考えられます。
また、この統計が支持する単一起源説は、現代人における常染色体座の深い系統(分岐年代がミトコンドリアDNAやY染色体よりも古くなります)をも説明できます。常染色体座の系統の深さは、ホモ=エレクトスとの混血の痕跡だと以前は解釈されました。
以上、この研究についてざっと見ました。考古学の研究成果を参考にすると、出アフリカやアメリカへの移住の年代が新しすぎるように思えるのが気になりますが、興味深い研究です。核遺伝子座の研究が多地域進化説に否定的なのは当然としても、先住ホモ属が現生人類に同化されたとの説にも否定的なのには困惑しています。
ミトコンドリアDNAとY染色体の研究においては、現生人類とユーラシアの先住ホモ属との混血の証拠はこれまでのところ得られていませんし、今後どれだけ現代人のミトコンドリアとY染色体のDNAを採取して分析したところで、おそらくその証拠は得られないでしょう。しかし、核DNAの研究では、現生人類と先住ホモ属との混血の痕跡が見つかるのではないかと期待していましたし、じっさいその可能性を示唆した研究もあるので(昨年8月29日分の記事と、昨年11月9日分の記事とで紹介しました)、正直なところこの研究を知って失望してしまいました。
確かに、現代人間の変異については、ミトコンドリアとY染色体よりも常染色体の(少なからぬ遺伝子座の)ほうが大きいとは思いますが(分岐年代が古くなります)。現生人類と先住ホモ属との混血の遺伝学的根拠とは、現代人の常染色体の多様性を誤って解釈したということになるのでしょうか。ただ、同化説がほぼ否定されたというわけでもないと思いますので、今後も私は同化説を主張していきます。
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