ネアンデルタール人はじゅうらい考えられていたよりもさらに東方に進出

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 古人骨のミトコンドリアDNA分析の結果、ネアンデルタール人が、じゅうらい考えられていたよりもずっと東方にまで進出していたことが判明した、との研究報道されました。ニューヨークタイムズなどでも取り上げられています。こうした古人骨は断片化されていることも少なくなく、人類種の決定が困難な場合が多いのですが、ネアンデルタール人のミトコンドリアDNA分析の第一人者であるシュヴァンテ=ペーボ博士のチームの研究によると、二つの人骨から抽出されたミトコンドリアDNAを分析したところ、欧州のネアンデルタール人のミトコンドリアDNAと類似していた、とのことです。

 人骨のうちの一つは、ウズベキスタン東部のテシク=タシュ遺跡で発見されていた子供のもので(7万年前頃)、じゅうらいからネアンデルタール人だと考えられていたものの、一部では異論があったようなのですが、これでネアンデルタール人と確定したことになります。じゅうらい、ネアンデルタール人の分布域の東限は、このテシク=タシュ遺跡とされてきたのですが、今回分析されたもう一つの人骨は、アルタイ山脈のオクラドニコフ洞窟出土のもので(38000~30000年前頃)、ネアンデルタール人は、じゅうらい考えられていたよりもずっと東にまで進出していたことになります。テシク=タシュ遺跡とオクラドニコフ洞窟の位置はこの地図を参照してください。

 ペーボ博士は、ネアンデルタール人が現在のモンゴル国や中華人民共和国の領土にまで進出した可能性だけではなく、アジアのエレクトス的形態の消滅にも関わっていた可能性にまで言及しています。現生人類のアフリカ単一起源説の主唱者とも言えるストリンガー博士は、中国の広東省にあるMaba(馬壩)遺跡から出土した断片的な頭蓋骨(13万年前頃?)とネアンデルタール人のそれとのいくつかの類似性を指摘し、Maba人骨にDNAが残っていたら、ネアンデルタール人と似ているのか、それとも他の異なった系統に属すのか、分析するのも面白いだろう、とナショナルジオグラフィックにて述べています。

 しかし、ネアンデルタール人研究の世界的権威であるエリック=トリンカウス博士は、ネアンデルタール人以外の絶滅古人類も、ネアンデルタール人と同系統のミトコンドリアDNAを有しているかもしれない、と上記ニューサイエンティストの報道にて指摘し、そうした古人骨のミトコンドリアDNAの分析結果が出るまでは、オクラドニコフ洞窟出土の人骨をネアンデルタール人と断定することはできない、と慎重な見解を示しました。


 以上、この研究についてざっと述べましたが、トリンカウス博士は慎重な見解を示しているものの、オクラドニコフ洞窟出土の人骨がネアンデルタール人のものであることはほぼ確実だろうと思います。ネアンデルタール人の活動範囲はアルタイ山脈のあたりにまで広がりましたが、これはさほど驚くべきことではないでしょう。ただ、ネアンデルタール人がここからさらに中国(ここでは、現在の中華人民共和国の領土ではなく、清代本部18省のことを指しています)にまで進出していたかとなると、地形の険しさからして、難しかったのではないでしょうか。

 ストリンガー博士の指摘は傾聴すべきでしょうが、断片化された人骨となると、判断の難しいところがあり、リチャード=クライン博士は、ネアンデルタール人が存在していた時代の中国の人類集団はネアンデルタール人と似ていない、と上記ニューヨークタイムズの報道にて指摘しています。このブログではたびたびクライン博士の見解に異議をとなえてきましたが、この問題については、クライン博士の指摘のほうに分があるように思われます。

 おそらく、ネアンデルタール人は中国には進出しなかったのでしょう。中国の中心部に進出した現生人類以外の人類集団は、基本的にはアフリカから南回りで到達した可能性が高いように思われます。ネアンデルタール人の分布域の南限はイスラエルで、南・東南アジアでは発見されていないことから考えても、今後中国でネアンデルタール人の骨が出土する可能性は、かなり低いと言ってよいでしょう。

この記事へのコメント

2007年10月05日 23:56
Macで見ていますが、何ら文字化けは起こっていません。
2007年10月06日 00:12
報告ありがとうございました。
PCに入っているフォントの問題だと思うのですが、最近のPCなら大丈夫なようです。

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