『イリヤッド』の検証・・・66話~88話
入矢は、アトランティスの手がかりと思われるシュリーマンのフィルムを求めて、ベルリンに向かいます。それぞれの話が単行本のどの巻に収録されているかについては、
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/iliad001.htm
を参照してください。
●私の立場はプラトンに似ている(66話)
レームのこの発言からすると、レームは密かにアトランティスの研究を進めていたようです。かつてレームは、グレコ神父の側近らしき男性から、アトランティスの存在を信じているのか?と尋ねられ、「まさか!あれはプラトンの作り話でしょ」と答えていますが、父が殺されたことから、アトランティスの研究について深く言及することには慎重なのでしょう。
●ゼウスの洞窟の壁画の意味するところ(72話)
主要人物で登場するのはグレコ神父だけという、全123話のなかでも異例の72話ですが、ひじょうに重要な手がかりが示されたように思われます。正直なところ、連載の完結した今となっても、この壁画の意味するところを充分に理解できてはいないのですが、現生人類とネアンデルタール人は遭遇して共存するようになり、ネアンデルタール人は司祭的な役割を果たすなどして、現生人類に「夢を見る能力」=高度な想像力・精神性を教え、現生人類は神と交信できるようになった(信仰という概念を知った)ので、現生人類はその功績を讃えて、ネアンデルタール人を神として崇めるようになった、ということでしょうか。ディオドロスは、努力した人間がその功績ゆえに神になった、と考えました(73話)。
●『旧約聖書』では別の地名でアトランティスが語られている可能性がある(74話)
アトランティスの自称がどのようなものだったのか、作中では明確になっていません。『旧約聖書』でアトランティスと深い関係がある地名はタルシシュで、これはアトランティス文明の後継者となります(119話)。
●現世と来世を自在に行き来する梟の女神(76話)
夜は死、昼は生と考えていた古代人にとって、闇夜を自在に飛び回る梟は特別な存在だった、と入矢は言っています。それゆえに梟は神とされたのですが、この梟の神が元々はネアンデルタール人で(123話)、ネアンデルタール人ではなく梟だとアマゾネス族が言い張ったのだ(121話)、ということが後に明らかになっています。
死んで甦った人間は神になる(109話)ともされていますし、太古の現生人類には、ネアンデルタール人は現世と来世を自在に行き来していた、という観念があったのかなとも思ったのですが、たんにアマゾネス族が人類の禁忌が広く知られるのを恐れて、ネアンデルタール人の像を梟と言い張った結果、梟の生態から、現世と来世を自在に行き来する女神という性格が形成されたことを意味しているだけなのかもしれません。
●ヘロドトス『歴史』の一節(79話)
「アトランティス人は動物を食さず・・・けっして夢を見ない」との一節です。アトランティス人が夢を見ないのは、アトランティス人が絶望したから(122話)でしょうが、「動物を食さず」の箇所は、連載が完結した今でもよく分かりません。
●「山の老人」が恐れている書物は『旧約聖書』とヘロドトス『歴史』(84話)
ヘロドトス『歴史』については、前項でも触れましたが、アトランティス人は夢を見ない、という箇所が問題なのでしょう。『旧約聖書』のどこを恐れているのかとなると、断言はできないのですが、アトランティス文明の後継者であるタルシシュの記事でしょうか。
●『漁師と魔物』の物語(85話)
年老いた漁師が、海岸で拾った真鍮の壺の蓋を開けると、中から魔物が現れ、命をとると言い出します。魔物は、壺に閉じ込められてから最初の400年は、自分を壺から解放する者があれば、この世のあらゆる富を送ろうと思ったが、誰も現れないので激怒し、自分を解放した者はぜったい殺すと誓います。
おそらくこの魔物は、ソロモン王が真鍮の壺に封じ込めたアトランティスの手がかりを象徴したものだと思われます。また、アトランティス文明の高度な技術・豊かさを象徴したものでもあるのでしょう。ただ、誰も現れないので~ぜったい殺すと誓う、という箇所をどう解釈すべきか、悩むところです。秘密結社の暗躍もあり、しだいに忘れ去られつつあるアトランティス人の怨念の象徴、といったところでしょうか。
●秘密結社の幹部会議(86話)
グレコ神父を問い質すための幹部会が開催されますが、このときオコーナーが出席しています(118話のオコーナーの発言より)。しかし、「オコーナー氏は飛行機事故で、アリンガム卿はドゥブロブニクで変死」との発言があります。秘密結社の幹部のうち、グレコ神父以外の幹部は、推薦者は別として、お互いに相手を知らないはずなのですが、このときは、オコーナーがグレコ神父の到着前に他の二人に真意を打ち明け、三人は相互に自らの正体を明かしていますので、この描写は変な感じです。
たとえそのようなことがなかったとしても、オコーナーは整形していないようですので、目の前に同じ顔の人物がいたら(幹部は顔写真を見ながら発言しています)、奇異に思うのではないでしょうか。オコーナーがじつは生きているという設定は最初から決まっていたでしょうから、この場面は、もっと思わせぶりな台詞だとよかったように思われます。
●ネアンデルタール人の分布域と人類最古の文明の発祥地が重なる(88話)
ベームはその例として、中近東・地中海沿岸を挙げていますが、それ以外の地域からもネアンデルタール人の骨は多数発見されていますし、ネアンデルタール人の滅亡から文明の誕生までには、作中でもかなりの時間を要しているようですから、重視しなくてもよいかな、と思います。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/iliad001.htm
を参照してください。
●私の立場はプラトンに似ている(66話)
レームのこの発言からすると、レームは密かにアトランティスの研究を進めていたようです。かつてレームは、グレコ神父の側近らしき男性から、アトランティスの存在を信じているのか?と尋ねられ、「まさか!あれはプラトンの作り話でしょ」と答えていますが、父が殺されたことから、アトランティスの研究について深く言及することには慎重なのでしょう。
●ゼウスの洞窟の壁画の意味するところ(72話)
主要人物で登場するのはグレコ神父だけという、全123話のなかでも異例の72話ですが、ひじょうに重要な手がかりが示されたように思われます。正直なところ、連載の完結した今となっても、この壁画の意味するところを充分に理解できてはいないのですが、現生人類とネアンデルタール人は遭遇して共存するようになり、ネアンデルタール人は司祭的な役割を果たすなどして、現生人類に「夢を見る能力」=高度な想像力・精神性を教え、現生人類は神と交信できるようになった(信仰という概念を知った)ので、現生人類はその功績を讃えて、ネアンデルタール人を神として崇めるようになった、ということでしょうか。ディオドロスは、努力した人間がその功績ゆえに神になった、と考えました(73話)。
●『旧約聖書』では別の地名でアトランティスが語られている可能性がある(74話)
アトランティスの自称がどのようなものだったのか、作中では明確になっていません。『旧約聖書』でアトランティスと深い関係がある地名はタルシシュで、これはアトランティス文明の後継者となります(119話)。
●現世と来世を自在に行き来する梟の女神(76話)
夜は死、昼は生と考えていた古代人にとって、闇夜を自在に飛び回る梟は特別な存在だった、と入矢は言っています。それゆえに梟は神とされたのですが、この梟の神が元々はネアンデルタール人で(123話)、ネアンデルタール人ではなく梟だとアマゾネス族が言い張ったのだ(121話)、ということが後に明らかになっています。
死んで甦った人間は神になる(109話)ともされていますし、太古の現生人類には、ネアンデルタール人は現世と来世を自在に行き来していた、という観念があったのかなとも思ったのですが、たんにアマゾネス族が人類の禁忌が広く知られるのを恐れて、ネアンデルタール人の像を梟と言い張った結果、梟の生態から、現世と来世を自在に行き来する女神という性格が形成されたことを意味しているだけなのかもしれません。
●ヘロドトス『歴史』の一節(79話)
「アトランティス人は動物を食さず・・・けっして夢を見ない」との一節です。アトランティス人が夢を見ないのは、アトランティス人が絶望したから(122話)でしょうが、「動物を食さず」の箇所は、連載が完結した今でもよく分かりません。
●「山の老人」が恐れている書物は『旧約聖書』とヘロドトス『歴史』(84話)
ヘロドトス『歴史』については、前項でも触れましたが、アトランティス人は夢を見ない、という箇所が問題なのでしょう。『旧約聖書』のどこを恐れているのかとなると、断言はできないのですが、アトランティス文明の後継者であるタルシシュの記事でしょうか。
●『漁師と魔物』の物語(85話)
年老いた漁師が、海岸で拾った真鍮の壺の蓋を開けると、中から魔物が現れ、命をとると言い出します。魔物は、壺に閉じ込められてから最初の400年は、自分を壺から解放する者があれば、この世のあらゆる富を送ろうと思ったが、誰も現れないので激怒し、自分を解放した者はぜったい殺すと誓います。
おそらくこの魔物は、ソロモン王が真鍮の壺に封じ込めたアトランティスの手がかりを象徴したものだと思われます。また、アトランティス文明の高度な技術・豊かさを象徴したものでもあるのでしょう。ただ、誰も現れないので~ぜったい殺すと誓う、という箇所をどう解釈すべきか、悩むところです。秘密結社の暗躍もあり、しだいに忘れ去られつつあるアトランティス人の怨念の象徴、といったところでしょうか。
●秘密結社の幹部会議(86話)
グレコ神父を問い質すための幹部会が開催されますが、このときオコーナーが出席しています(118話のオコーナーの発言より)。しかし、「オコーナー氏は飛行機事故で、アリンガム卿はドゥブロブニクで変死」との発言があります。秘密結社の幹部のうち、グレコ神父以外の幹部は、推薦者は別として、お互いに相手を知らないはずなのですが、このときは、オコーナーがグレコ神父の到着前に他の二人に真意を打ち明け、三人は相互に自らの正体を明かしていますので、この描写は変な感じです。
たとえそのようなことがなかったとしても、オコーナーは整形していないようですので、目の前に同じ顔の人物がいたら(幹部は顔写真を見ながら発言しています)、奇異に思うのではないでしょうか。オコーナーがじつは生きているという設定は最初から決まっていたでしょうから、この場面は、もっと思わせぶりな台詞だとよかったように思われます。
●ネアンデルタール人の分布域と人類最古の文明の発祥地が重なる(88話)
ベームはその例として、中近東・地中海沿岸を挙げていますが、それ以外の地域からもネアンデルタール人の骨は多数発見されていますし、ネアンデルタール人の滅亡から文明の誕生までには、作中でもかなりの時間を要しているようですから、重視しなくてもよいかな、と思います。
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