手首の研究から示されるフロレシエンシス新種説

 インドネシアのフローレス島で発見された更新世後期の人骨群については、このブログでもたびたび取り上げてきましたが、新種の人類フロレシエンシスなのか、それとも病変の個体を含む小型の現生人類なのかという問題をめぐって、激論が続いています。今回“Science”誌に掲載された研究では、手首の分析から新種説が採用されており、BBCなど多数の報道機関で取り上げられました。

 この研究によると、フローレス島で発見された更新世後期の人骨群の正基準標本である‘LB1’の手根骨を分析したところ、‘LB1’ の手根骨は、現生類人猿やアウストラロピテクス属やホモ=ハビリス(ハビリスをホモ属ではなくアウストラロピテクス属に分類する見解もあります)のそれと区別がつかなかったのにたいし、現生人類やネアンデルタール人のそれとは異なっていた、とのことです。

 このことから、‘LB1’を含むフローレス島で発見された更新世後期の人骨群は、病変・発達障害の現生人類ではなく、ネアンデルタール人と現生人類との最終共通祖先集団(70~40万年前頃のホモ=ハイデルベルゲンシス?)の登場以前に、後に現生人類やネアンデルタール人へと進化する人類集団と分岐した集団の子孫であり、人類の新種ではないか、とされています。

 これはたいへん興味深い研究で、フロレシエンシスは新種ではないとする傾向の強かった“Science”誌に掲載されたことも、その感を強くします。これで新種否定派すべてが納得するということはないでしょうが、1月31日分の記事8月18日分の記事で紹介したように、今年になってフロレシエンシスが新種である可能性を指摘した研究が複数提示されており、フロレシエンシスが新種である可能性が高くなったかな、と思います。昨日の記事でも述べたように、フロレシエンシスは、ハビリス的な人類集団の子孫か、ハビリスとエレクトスとの中間的な人類集団の子孫なのかもしれません。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック