出アフリカと気候の関係

 出アフリカには気候が大きく関係していた、とする研究が報道されました。イスラエル南部のネゲヴ砂漠の洞窟の錘乳石・石筍・二次生成物を調べたところ、異常に降水量の多かった時代が14万年前頃に始まることが分かり(11万年前頃まで続き、13万年前頃から12万5千年前頃までがもっとも降水量の多かった時期とされます)、これは現生人類の中東への最初の進出時期と一致する、とのことです。多雨期にはサハラ砂漠やシナイ半島の砂漠が縮小し、それらの地域を経由して現生人類が出アフリカを果たしたのだ、とも推測されています。

 気候が人類の行動に大きな影響を与えるのは当然ですが、現生人類のアフリカ外への最初の進出と、降水量の増加した時期を関連づけることには慎重であるべきでしょう。もちろん、降水量の増加と砂漠の縮小にともない、現生人類の出アフリカが促進されたということはあるでしょうが、そうした気候でなくとも、環境適応力の高い現生人類ならば、出アフリカを果たしても不思議ではないでしょう。中東では、確実に15万年前よりもさかのぼる人骨はほとんど発見されていませんが、今後、たとえば16万年前頃の現生人類の人骨が中東で発見される可能性もそれなりにあるとは思います。

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