『イリヤッド』の検証・・・17話~24話
17話より新たな展開に突入し、入矢はサントリーニ島に赴き、アトランティスのじゅうような手がかりである円盤を入手します。それぞれの話が単行本のどの巻に収録されているかについては、
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/iliad001.htm
を参照してください。
●秘密結社の名称について(19話)
作中で登場した秘密結社の名称については、紀元前のギリシアに存在した「古き告訴人」、おもにキリスト教徒からなると思われ、紀元後325年にローマ教会に属した「秘密の箱を運ぶ人々」、遅くとも12世紀には存在した「山の老人」の三つが明かされています。現代の秘密結社は、「山の老人」と呼ばれることが多いようです。秘密結社の成立経緯や組織の詳細については、けっきょく全貌が明かされたわけではないので、これらの秘密結社の相互関係や名称の由来については、よく分からないところがあります。
ただ、「秘密の箱を運ぶ人々」については、その名称の由来がはっきりしていると言え、アトランティスと人類の禁忌について記した文書群を収めた、「秘密の箱」を管理する人々のことを意味しています。「古き告訴人」についてはいまでもよく分からないままで、「山の老人」については、ネアンデルタール人を指すことが明かされたものの(118話、121~123話)、なぜネアンデルタール人が「山の老人」と呼ばれているのかは、けっきょく不明なままです。
ミハリス=アウゲリス『ソロンの詩』によると、「山の老人」とは秘密結社の通り名で、真の名を唱えれば秘密結社を撃退できる、とされています(19話)。グレコ神父も「山の老人」が通り名だと発言していることを、後にオコーナーが明かしていますが(118話)、そのときのオコーナーの発言によると、秘密結社は「山の老人の記憶を消し去る結社」と呼ぶべきだろう、とグレコ神父が述べたことになっています。
では、「古き告訴人」と「秘密の箱を運ぶ人々」のいずれが秘密結社の正式名称かというと、秘密結社は数万年間続いたとされていますので(117話でのオコーナーの発言より)、文字記録の始まった後に成立しただろう後者は正式名称ではないでしょう。「古き告訴人」はどうなのかというと、これが正式名称ではないという明確な根拠こそないものの、「古き告訴人」の名称は7巻以外では登場しないので、違う可能性が高いかな、と思います。
おそらく、秘密結社には正式名称なく、『ソロンの詩』の「真の名を唱えれば秘密結社を撃退できる」との一節は、ヒムラーの赤穴博士にたいする発言(59話)も考慮すると、秘密結社が隠蔽したい禁忌が明かされれば、秘密結社の存在意義がなくなる(その結果としてアトランティス探索者を殺害する必要がなくなる)、ということを意味しているように思われます。
●最初の神も戦士も女性(24話)
アトランティス文明を築いたのは女性で、文明が始まったころは母系社会だったということを意味しているのでしょうが、最初の戦士が女性だったという伏線は、後に活かされているようには思われません。女性の戦士といえばアマゾネスで、入矢も小林益雄もアマゾネスについて言及しています。後にアマゾネスは作中でじゅうような役割を担いますが、作中では最初の戦士というわけでもなさそうです。あるいは、単にアマゾネスを連想させるだけの役割だったのかもしれません。小林は入矢堂の近所に住んでいるようですし、家に戻った妻とともに最終回で登場するのかと予想していましたが、この24話だけの登場となりました。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~hampton/iliad001.htm
を参照してください。
●秘密結社の名称について(19話)
作中で登場した秘密結社の名称については、紀元前のギリシアに存在した「古き告訴人」、おもにキリスト教徒からなると思われ、紀元後325年にローマ教会に属した「秘密の箱を運ぶ人々」、遅くとも12世紀には存在した「山の老人」の三つが明かされています。現代の秘密結社は、「山の老人」と呼ばれることが多いようです。秘密結社の成立経緯や組織の詳細については、けっきょく全貌が明かされたわけではないので、これらの秘密結社の相互関係や名称の由来については、よく分からないところがあります。
ただ、「秘密の箱を運ぶ人々」については、その名称の由来がはっきりしていると言え、アトランティスと人類の禁忌について記した文書群を収めた、「秘密の箱」を管理する人々のことを意味しています。「古き告訴人」についてはいまでもよく分からないままで、「山の老人」については、ネアンデルタール人を指すことが明かされたものの(118話、121~123話)、なぜネアンデルタール人が「山の老人」と呼ばれているのかは、けっきょく不明なままです。
ミハリス=アウゲリス『ソロンの詩』によると、「山の老人」とは秘密結社の通り名で、真の名を唱えれば秘密結社を撃退できる、とされています(19話)。グレコ神父も「山の老人」が通り名だと発言していることを、後にオコーナーが明かしていますが(118話)、そのときのオコーナーの発言によると、秘密結社は「山の老人の記憶を消し去る結社」と呼ぶべきだろう、とグレコ神父が述べたことになっています。
では、「古き告訴人」と「秘密の箱を運ぶ人々」のいずれが秘密結社の正式名称かというと、秘密結社は数万年間続いたとされていますので(117話でのオコーナーの発言より)、文字記録の始まった後に成立しただろう後者は正式名称ではないでしょう。「古き告訴人」はどうなのかというと、これが正式名称ではないという明確な根拠こそないものの、「古き告訴人」の名称は7巻以外では登場しないので、違う可能性が高いかな、と思います。
おそらく、秘密結社には正式名称なく、『ソロンの詩』の「真の名を唱えれば秘密結社を撃退できる」との一節は、ヒムラーの赤穴博士にたいする発言(59話)も考慮すると、秘密結社が隠蔽したい禁忌が明かされれば、秘密結社の存在意義がなくなる(その結果としてアトランティス探索者を殺害する必要がなくなる)、ということを意味しているように思われます。
●最初の神も戦士も女性(24話)
アトランティス文明を築いたのは女性で、文明が始まったころは母系社会だったということを意味しているのでしょうが、最初の戦士が女性だったという伏線は、後に活かされているようには思われません。女性の戦士といえばアマゾネスで、入矢も小林益雄もアマゾネスについて言及しています。後にアマゾネスは作中でじゅうような役割を担いますが、作中では最初の戦士というわけでもなさそうです。あるいは、単にアマゾネスを連想させるだけの役割だったのかもしれません。小林は入矢堂の近所に住んでいるようですし、家に戻った妻とともに最終回で登場するのかと予想していましたが、この24話だけの登場となりました。
この記事へのコメント
最終回には不満もありますが、全体としては、『イリヤッド』は素晴らしい作品だったと考えています。
『イリヤッド』を専門に語るサイトはあまりないようですので、お互いになんとか盛り上げていきたいものですね。
大変緻密で興味深い分析で、「なるほど」とおもっております。
これからも検証よろしくお願いします。
「古き告訴人」に関してなのですが、確か「ソクラテスの弁明」には、アニュトス一派を「新しき弾劾」、正体不明の弾劾者を「旧き弾劾者」と呼ぶ場面があるのでそこからとったのかなと思います。
これは貴重な情報をご教示いただき、ありがとうございました。
西洋の古典をあまり読んでいないものですから、知りませんでした。
実は、イリヤッドのネタ本のひとつを発見しました。
もしかすると、劉公嗣さんは既にご存じだったかも知れませんが。
「古代文明の謎はどこまで解けたか」のⅠ、Ⅱ、Ⅲ巻です。
ところどころ、この本を参照したとわかる部分があります。
作画もこの本を参考に色々描かれています。
この本は、なかなかおもしろい本でした。
古代の歴史の謎についての通説を検証したもので、
自分が史実だと思っていたことがそうではなかったと
分かったりw。
昔は古代文明にすごく関心があったのですが、21世紀に入ったあたりから他の分野に関心が移ったので、近年では古代文明関係の本はほとんど読んでおらず、『古代文明の謎はどこまで解けたか』もぜんぜん知りませんでした。ご教示ありがとうございます。
図書館か大型書店に行ったときに探してみます。