ネアンデルタール人には精神的悩みが少なかった?
人類の特徴である言語と創造性は、大脳新皮質のある部分の成長期間が延びたことによるもので、それは精神的障害とも関連したものであり、その遺伝的変化(複数の可能性もあります)は、現生人類の誕生時か、現生人類の種形成後に生じたものだろう、とする研究が発表され、報道されました。またこの研究では、ネアンデルタール人の脳は現生人類と比較して急速に成長し、その結果ネアンデルタール人の言語と創造性は発達しなかったので、ネアンデルタール人は現生人類と比較して、精神的障害に悩まされることは少なかっただろう、ともされています。
成長期間の長さが現生人類に「高度な」認知能力をもたらした、とする見解は以前からありますが、ネアンデルタール人との比較についていえば、現時点では断言が難しいだろうと思います。現在、ネアンデルタール人のゲノム解読が進められていますので、その完了後にはあるていどの見通しが立つかもしれません。それでも、検証はなかなか難しいだろうと思いますが。
現生人類のアフリカ単一起源説が優勢となって以降、ネアンデルタール人の絶滅理由を説明しやすいため、現生人類とネアンデルタール人との違いを強調する傾向が強くなりましたが、ネアンデルタール人に現生人類のような言語や創造性を認めていないことなど、この研究にもそうした傾向が見られます。
もちろん、この傾向が結果的に妥当である可能性は低くないでしょう。ただ、歯の分析からネアンデルタール人と現生人類との成長速度の違いを指摘した3年前の研究にたいして、同じく歯の分析から、ネアンデルタール人の成長速度は現生人類と変らない、とする研究が昨年になって発表されたように(このブログでも取り上げました)、現生人類のアフリカ単一起源説が優勢となって以降の、ネアンデルタール人と現生人類との違いを強調する傾向には、やや行き過ぎがあったのかもしれません。
参考文献:
H. Lee Seldon.(2007): Extended neocortical maturation time encompasses speciation, fatty acid and lateralization theories of the evolution of schizophrenia and creativity. Medical Hypotheses, 69, 5, 1085-1089.
http://dx.doi.org/10.1016/j.mehy.2007.03.001
成長期間の長さが現生人類に「高度な」認知能力をもたらした、とする見解は以前からありますが、ネアンデルタール人との比較についていえば、現時点では断言が難しいだろうと思います。現在、ネアンデルタール人のゲノム解読が進められていますので、その完了後にはあるていどの見通しが立つかもしれません。それでも、検証はなかなか難しいだろうと思いますが。
現生人類のアフリカ単一起源説が優勢となって以降、ネアンデルタール人の絶滅理由を説明しやすいため、現生人類とネアンデルタール人との違いを強調する傾向が強くなりましたが、ネアンデルタール人に現生人類のような言語や創造性を認めていないことなど、この研究にもそうした傾向が見られます。
もちろん、この傾向が結果的に妥当である可能性は低くないでしょう。ただ、歯の分析からネアンデルタール人と現生人類との成長速度の違いを指摘した3年前の研究にたいして、同じく歯の分析から、ネアンデルタール人の成長速度は現生人類と変らない、とする研究が昨年になって発表されたように(このブログでも取り上げました)、現生人類のアフリカ単一起源説が優勢となって以降の、ネアンデルタール人と現生人類との違いを強調する傾向には、やや行き過ぎがあったのかもしれません。
参考文献:
H. Lee Seldon.(2007): Extended neocortical maturation time encompasses speciation, fatty acid and lateralization theories of the evolution of schizophrenia and creativity. Medical Hypotheses, 69, 5, 1085-1089.
http://dx.doi.org/10.1016/j.mehy.2007.03.001
この記事へのコメント