類人猿の身ぶりと言語の起源

 チンパンジーとボノボの身ぶりが、人類の言語の起源を解明する手がかりとなるかもしれない、とする研究が発表され、報道されました。
http://www.pnas.org/cgi/content/abstract/0702624104v1
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/6610447.stm
 比較対象となったのは、チンパンジーとボノボそれぞれ二つの集団(チンパンジーは計34匹、ボノボは計13匹)で、両者の意思伝達方法における、合図と特定の行動との関連の強さが測定されることになり、顔の動きや発生と、手や腕を用いた身ぶりとを比較したところ、前者は18、後者は31の合図を区別できました。

 同じような顔の動きと発声は、両方の種で同様に用いられていたのにたいして、身ぶりの用法は、種内でも種間でも大きく異なりました。顔の動きや発声があるていど限定された意味を持っているようなのにたいして、身ぶりはかなりの柔軟性があるように思われます。また、身ぶりによる意思伝達において、ボノボはチンパンジーよりも柔軟さを示しています。チンパンジーとボノボにおける身ぶりの柔軟性は、言語の起源が身ぶりにあるとする説を支持するものだ、と研究者たちは考えています。

 言語は人類の重要な特徴であるため、その起源には大きな関心が寄せられていますが、言語の重要な特徴として恣意性がよく挙げられますので、ボノボとチンパンジーにおける身ぶりの柔軟性は、言語の起源を探るうえで重要な手がかりとなりそうです。もっとも、ボノボもチンパンジーも、その祖先が人類の祖先と分かれた後にも進化を続けているわけで、その行動が人類の祖先のそれとどこまで類似しているのか不明なところもある、ということを念頭においておかねばならないでしょう。


参考文献:
Pollick AS. et al.(2007): Ape gestures and language evolution. PNAS, 104, 19, 8184-8189.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0702624104

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