ルドルフェンシスの復元

 1972年にケニアで発見された人骨‘KNM-ER1470’は、大きな脳(752cc)と平らな顔面というホモ属と似た特徴を持ちながら、年代が古い(当初は290万年前頃とされましたが、現代では190万年前頃とされています)ということで、人類史上の位置づけ・分類をめぐって、長期にわたって議論がなされてなかなか決着せず、人類種区分の困難さ・人類進化の複雑さを象徴していると化石だと言えるでしょう。
 現在では、一応ホモ=ルドルフェンシスという種に分類されており、その基準化石となっていますが、ルドルフェンシスという種区分は妥当ではなく、ハビリスにまとめたほうがよいのではないかという見解や、ルドルフェンシスはホモ属ではなく、アウストラロピテクス属またはケニアントロプス属に位置づけるほうがよいのではないか、という見解が提示されていて、現在でも異論が絶えません。

 このER1470を改めてコンピュータ上で復元し直したところ、顔面は以前の復元より突出し、推定脳容量は526ccと下方修正された(つまり、以前の復元より「原始的」になったということです)、との研究が発表され、報道されました。
http://www.msnbc.msn.com/id/17873752/page/2/
この研究は、今後論文として掲載予定とのことです。
 ER1470は、150以上の破片からなるだけに、その復元は難しく、今回のように新たな復元が提示されるのはもっともだと思いますが、新たな推定脳容量については異論も提示されていて、ER1470の推定脳容量が526ccという新見解が通説となるかどうかは微妙なところです。これを契機として、他のルドルフェンシスの化石の検討が進めば、ルドルフェンシス(と分類されている化石群)の人類史上における位置づけがさらにはっきりとしてくるかもしれず、今後の研究に期待したいところです。

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