フロレシエンシスの形態と島嶼化

 フロレシエンシスの小柄な形態は島嶼化によるもの、との研究が発表され、報道されました。島嶼化とは、小さな孤島に大型動物が長期間隔離されると小型化するという現象で(逆に、小型動物は大型化します)、フロレシエンシスの発表当初から、この小柄な形態は島嶼化によるもの、と説明されていました(新種説ではなく現生人類説を主張していた研究者も同様です)。

 その意味では、じゅうらいの研究と基本的に変わりはないのですが、39もの種・亜種の霊長目の生物について検証したことが、この研究の新しく注目すべきところだと思います。大型霊長目は52~80%ほど縮小しているとのことで、フロレシエンシスは現代インドネシア人の52%ほど、エレクトスの55%ほどの大きさと推定されているので、他の大型霊長目の小型化の範囲内に収まります。

 もっとも、フロレシエンシスを現代インドネシア人・エレクトスと比較していることからも分かるように、フロレシエンシスがエレクトスの子孫か、それとも小頭症の現生人類かという、現在古人類学界で激論がかわされている議論には加わらず、この問題については見解が述べられていません。島嶼化ではフロレシエンシスの脳の小ささを説明することが困難なので、もうすぐ再開されるだろうリアン=ブア洞窟の発掘で、新たな頭骨、もしくはミトコンドリアDNAを採取できる保存状況のよい人骨が発見されることを期待しています。

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