大河ドラマ『風林火山』第9回「勘助討たれる」

 昨日放送分の感想です。平蔵が晴信にむけて射た矢は板垣に遮られ、勘助は平蔵を逃がして身代わりに捕らえられます。勘助を殺そうとする板垣をとどめた晴信は、自ら成敗すると言いますが、偽軍師山本勘助を討ち取った、と宣言して勘助を斬らずに引き上げます。
 晴信がなぜ勘助を助けたのかよく分かりませんでしたが、勘助に武田への仕官を勧めていることからして、有能な人物だけに斬るのは惜しいと判断したのかもしれません。また、勘助は信虎に愛する人を殺されたので、信虎に反感を抱いている晴信には、勘助への同情心が少なからずあるのかもしれません。生き恥を晒したと屈辱感にうちひしがれた勘助は、平蔵と別れて一人さまよい、駿河に落ち延びて無為な日々を過ごします。

 原作を読んでいないので断言はできませんが、勘助が武田に仕官するまでは脚本家の創作とのことなので、ミツを武田信虎に殺され、勘助が武田に怨みを抱くというのも、おそらくは脚本家の創作なのでしょう。そうすると、なぜ勘助が武田に仕官したのかという説明が必要になり、この勘助の心理描写に説得力がないと、ここまでよい感じで進んできたこの作品の質を一気に低下させる恐れもあります。もっとも、勘助の怨みの直接の対象は信虎なので、晴信に仕えるのには抵抗がないという解釈もできますが・・・。
 その意味で、今回は転機だったのですが、勘助の出番がほとんどなく、勘助の心の動きがほとんど描かれなかったため、とりあえず評価は先延ばしということになります。次回以降で、勘助の心理状況の変化がどのように描かれるのか、注目しています。信虎を追放した晴信の手腕を高く評価したという流れになるのでしょうか。

 勘助の心理描写と並んで今回の見所だったのは、この作品のヒロインとも言うべき諏訪家の姫様である由布の初登場(初回にちょっとした顔見せはありましたが)だったのですが、やはり容貌に難があるのが・・・。確かに、名家の姫様だからといって美人だとはかぎりませんし、美人ならよいというものでもないのは、昨年正月にテレ朝で放送された『風林火山』を見て痛感しましたが、それにしてもこの配役は何とかならなかったのでしょうか。演技のほうは、台詞がほとんどなかったので、評価するのは時期尚早かもしれませんが、わずかな台詞から判断するとかなりの不安があります。
 女優としての経験の差があるとはいえ、案の定、由布姫役の方は、晴信の妹役の桜井幸子さんに美しさ・儚さ・可憐さという点で完全に負けていました。事前に得た情報では、勘助は由布姫を敬慕し、密かに恋心を抱くとのことですが、どうもそのようにもっていくのは苦しいように思われます。ミツ役の方が由布姫も演じれば、かつてともに生きることを決意した女性に似た姫様なので、敬慕して密かに恋心を抱くというのも分かるのですが・・・。また、信虎が由布姫に一目ぼれするという描写がありましたが、これもかなりの無理があるような・・・。

 今回は、勘助の出番があまりなく、信虎・晴信父子の確執が中心に描かれましたが、晴信役の方の演技は最初のころよりよくなっていて、信虎役の仲代氏とともに、父子の間の緊張感をわりとよく表現できていたように思われます。晴信はついに謀反の決意を固め、次回はいよいよ両者の確執が表面化しますが、晴信の家臣団への工作がどのように描かれるのか、楽しみです。

この記事へのコメント

スペードのA
2007年03月06日 15:18
劉公嗣さん、こんにちは。
由布姫は、ちょっと緊張気味といった感じでしたね。今後良くなってくれることを期待したいです。勘助が今何を考えているのかがちょっと分かりにくくなってますね。晴信に命を助けられたのですが、それほど感謝している様子もないように見えます。
2007年03月07日 07:54
スペードのAさん、
コメントありがとうございました。

由布姫は今後も厳しいかなあと
思っています。

勘助は今回は出番が少なかった
ですねぇ。次回での心理描写に
期待しています。

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