クラーク=ハウエル博士死去

 偉大な古人類学者であるクラーク=ハウエル博士が、3月10日に癌のため81歳で亡くなったとの報道がありました。進化総合説の旗手として学界に登場し、考古学・地質学・進化生物学・生態学・霊長類学・民族誌学などを統合した、現在の古人類学の成立にたいへんじゅうような役割をはたしました。

 レヴァントの謎に満ちた人骨群などを進化総合説的立場から解釈し、西アジアには特殊化していないネアンデルタール人がいて、現生人類と、特殊化したいわゆる古典的ネアンデルタール人との直近の祖先になった、というプレ=ネアンデルタール説を主張したことでも知られています。現在では、現生人類の起源はもっとさかのぼることが知られていますが、このプレ=ネアンデルタール説が公表されたのが1950年代であったことを考慮すれば、気候とネアンデルタール人の体型との関連を指摘したこととあわせて、ハウエル博士の先見の明を示しているように思われます。

 また、1952年の論文における、現生人類が欧州に進出したとき、古典的ネアンデルタール人がすでに消滅していたのか、侵入してきた現生人類によって絶滅させられたのか、現生人類と交雑したのか、まだ定かではないとの見解は、現代でも通用するものだと思います。

 ご冥福をお祈りいたします。

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