競馬パートI国昇格に伴う問題

 今年から、日本・・・といいますか正確には日本中央競馬会(JRA)がパートI国に昇格することとなり、昨年11月にその発表がありました。JRAは日本競馬の統括機関ではないはずですが、競馬主催者としての規模がずば抜けて大きいだけに、事実上日本競馬を代表する機関として扱われてきたのは、仕方のないところがあるのでしょうし、おそらく国際セリ名簿基準委員会(ICSC)も、JRAだけではなく日本全体をパートI国として扱っているのでしょう。まあそれはともかくとして、ICSCから、国際グレードレース以外のレースに‘G’の文字を使用しないよう勧告があった、との報道がありました。
http://www.sanspo.com/keiba/top/ke200702/ke2007022800.html
 JRAは自称の格付けと正規の(国際的)格付けを同列に扱ってきて、日本のマスコミもそれに倣ってきたわけですが、パートI国である日本において、正規のGIであるジャパンカップならともかく、リステッドレースでしかない日本ダービー(東京優駿)が凱旋門賞やブリーダーズカップクラシックなどと同列にGIと扱われていることは、さすがに見過ごせないということなのでしょう。

 これにより、JRAの皐月賞・日本ダービー・菊花賞などの日本調教馬限定のレースをGIと称することができなくなり、JRAが対応に困っているとのことです。もっとも、こうなることはずいぶん前から分かっていたことで、1984年に始まったJRAのグレード制が、自称グレードでしかないというのも、ずいぶん前から指摘されていたことでした。
 そうした矛盾は、JRAがGIと認定する安田記念と、その前哨戦でJRAがGIIと認定する京王杯スプリングカップのグレード認定をめぐる問題でもすでに明らかになっていました。JRAのGIとしてはジャパンカップの次に国際競争となった安田記念が長らく正規のグレードレースでなかったのは、JRAが申請してもGIに認定されそうになく、JRAの自称グレードと矛盾するからでした。そのため、前哨戦の京王杯スプリングカップが2001年にGIIと認定されたあとも、JRAは安田記念のグレード認定の申請を見合わせ、安田記念は2004年になってやっと国際GIに認定されました。

 こうしたことがあったので、パートI国昇格に伴う問題点はJRAも把握しているのかと思っていたら、山野浩一先生によると、パートI国昇格により日本ダービーをGIと称することができなくなることを(本当はパートII国だった時代でも許されることではなかったのですが・・・)、どうもJRAの職員の9割は知らなかったようだとのことで、驚いてしまいました。いまさら日本ダービーをグレードのないレースと称することは興行面での悪影響があるでしょうし、なんとも難しいところです。
 南関東では、JRAとの交流重賞のうち、ダートグレード競走格付け委員会による格付けはGI・GII・GIIIと、南関東独自のグレードはG1・G2・G3と表記されていて、関東オークスのグレード表記はGII・G1と併記されていますが、たとえ日本国内のみの表記としても、こうした二重基準をICSCが認める可能性は低そうですので、JRAや競馬マスコミにとって望ましい解決策となると、容易に思いつきません。

 クラシックを外国調教馬にも開放すれば、数年後にはGIに認定されそうですが、外国産馬の出走が認められたのさえ21世紀になってからのことで(しかも外国産馬の出走頭数に制限があります)、持ち込み馬の出走すら認められていなかった時期があるのですから、外国調教馬へのクラシックレース開放はなかなか難しそうです。もっとも、皐月賞・日本ダービー・菊花賞は、高額賞金で伝統のあるレースで、日本国内の競馬関係者のほとんどは相変わらずこれらを目標とし続けるでしょうから、グレード表記が認められなくても、急速に衰退することもないでしょう。
 まあ現実問題として、JRAのクラシックレースに有力な外国調教馬が出走してくる可能性は低く、時間をかけて生産者を説得していき、機を見て外国調教馬に開放し、グレードを獲得するしかないのだと思います。それまでは、グレードなしの高額賞金レースとして盛り上げていくというのが、とりあえず現時点ではもっとも現実的な対応でしょうか。

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