人類のアメリカ大陸への初の移住は15000年前頃

 古くから議論になっている、人類のアメリカ大陸への移住時期について、アラスカ南部のプリンスオブウェールズ島の「膝の上洞窟」で発見された、10300年前頃の人骨から抽出したミトコンドリアとY染色体のDNAを分析し、現代のアメリカ大陸の先住民3500人と比較したところ、アメリカ大陸への初の移住は15000年前頃と推測される、との研究が発表され、報道されました。
 以前にも、ミトコンドリアDNAの分析からアメリカ大陸移住の時期が推測されたことがありますが、その推定値は古すぎたのではないか、というのがこの論文の主張するところです。また、最初期のアメリカ大陸への移住者の経路は太平洋岸沿いであり、移住者たちは熟練の漁師たちだったので、急速に移動できたのではないか、とも推測されています。

 人類のアメリカ大陸への移住については、遅くとも12000年前にはアメリカ大陸に人類はいたということと、アメリカ大陸には現生人類しかいたことがない、という二点のみ合意が成立していますが、移住時期や経路などは、さまざまな仮説が提示されています。おそらく、すぐに結論は出ないでしょうし、現在のアメリカ大陸の先住民の祖先ではない人類集団がアメリカ大陸の初期の人類だった可能性もありますが、ともかく今後の研究に期待したいところです。


参考文献:
Brian M. Kemp, Ripan S. Malhi, John McDonough, Deborah A. Bolnick, Jason A. Eshleman, Olga Rickards, Cristina Martinez-Labarga, John R. Johnson, Joseph G. Lorenz, E. James Dixon, Terence E. Fifield, Timothy H. Heaton, Rosita Worl, and David Glenn Smith.(2007): Genetic analysis of early holocene skeletal remains from Alaska and its implications for the settlement of the Americas. American Journal of Physical Anthropology, 132, 4, 605-621.
http://dx.doi.org/10.1002/ajpa.20543

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