ネアンデルタール人は寒冷化により絶滅

 ネアンデルタール人は急激な寒冷化が原因で絶滅したとの研究が発表され、報道されました。これは、海洋堆積物の分析などから気候変動を推定復元し、ネアンデルタール人の絶滅と結びつけた研究です。この気候変動は、地球と太陽の位置関係の影響によるものではないか、と推測されています。
 寒冷化にともない、ネアンデルタール人は欧州各地から姿を消していき、より温暖なイベリア半島南部に避難したのですが、そこでも24000年前頃には、けっきょく寒冷化が短期に急激に進行し、その結果としての水不足と、狩猟対象としていた動物の減少による飢餓がネアンデルタール人を絶滅に追い込んだというわけです。

 ネアンデルタール人は寒冷な気候に特殊適応した人類集団であるという見解は定説になっていますが、そのネアンデルタール人でも絶滅に追い込まれるような寒冷化があったのではないか、というわけです。
 ただ、現生人類はこの期間も欧州南部に避難しつつも生き延びているわけで、寒冷化にともなう資源の不足により、ネアンデルタール人と現生人類が共存できるだけの人口収容力がなくなり、ネアンデルタール人が現生人類に資源獲得競争で遅れをとって絶滅した、ということなのかもしれません。

 ただそのさいに、少数派になったネアンデルタール人が多数派の現生人類に吸収される形で混血があった可能性はけっして低くないと思います。また、ネアンデルタール人が現生人類に生存競争で敗北した理由を、両者の潜在的な知的資質の違いに求める見解が通説となっていますが、そうではなく、欧州人とタスマニア島のアボリジニーのように、両者の社会的な蓄積の違いが運命を分けたのではないか、と私は考えています。

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