『イリヤッド』「柱の王国」についての考察

 アトランティスの場所の手がかりになるとして、シュリーマンが晩年に解読に夢中になったとされる、ギリシアのミハリス=アウゲリス編纂の『イソップ物語』に収録された「柱の王国」については、113話にて明らかにされ、自分なりに考えてもみましたが、
https://sicambre.seesaa.net/article/200701article_21.html
次号の発売を前に、上記リンク先での推測と重なるところがあるものの、もう一度現時点での自分なりの考えを述べることにします。まずは、上記リンク先でも紹介しましたが、その粗筋をもう一度掲載しておきます(以下の青文字の部分です)。

 夢を見ることのできない梟の女王は、どうしたら夢を見られるのか、と兎の女王に相談しました。兎の女王は、夜寝ないからだ、と梟の女王に答えます。夜寝ることにした梟ですが、それでも夢を見られませんでした。そこで梟の女王は、本当のことを教えてくれないとあなたを食べてしまう、と兎の女王を脅しました。
 慌てた兎の女王は、「兎の国の中央にそびえる柱のてっぺんには神様が住んでいます。夢を見たいなら、柱を登って神様にお願いしなければなりません」と本当のことを教えました。梟の女王はその柱を自分のものにしようと、兎の国に宣戦布告しました。戦うことが嫌いな兎の女王はあっさりと国を明け渡し、梟の女王は神様に会うために柱を登っていきました。

 夢を見たい梟の女王は一心に柱を登っていきましたが、登っても登っても神様のいる頂上にたどり着きません。梟の女王はとても疲れて、神様に会うことを諦めました。梟の女王は神様に会おうとした傲慢さを恥じ、自ら飛ぶことをやめました。天の神様は梟の女王をあわれに思い、落ちていく彼女に夢を贈りました。
 梟の女王は死んでしまいました。梟の女王の遺体を見た兎の女王は神様が落ちてきたと勘違いしました。神様が死んだと思った兎の女王は悲しみに暮れ、泣きながら大地を踏み鳴らしました。やがて女王の悲しみは国中に広がり、すべての兎が地面を踏み鳴らしました。すると地震が起きて兎の国は沈み、兎たちはちりじりに逃げていきました。


 兎とは最古の文明を築いた人々、つまり彼の島=アトランティスの住人の象徴で、梟とは、アトランティスと戦ったとされるアテナを中心とする連合軍の象徴のことだと思われます。この話は、戦わずして国を明け渡したことと、兎が地面を踏み鳴らして地震が起きたという点では、6・7巻にて語られた出雲の民話と共通しますので、両者の根源は同じものだと思われます。
 違うのは、出雲民話では兎が騙まし討ちにあい、夢について語られていないということです。おそらく、騙まし討ちも夢もアトランティスの秘密に関する重要なキーワードで、両者は相補う関係にあるのではないでしょうか。
 これは的外れな解釈かもしれないのですが、アリストテレスは「アトランティスはそれを創造した者自らが破壊した」と発言したとされていますので、騙まし討ちにしたのは、アテナを中心とした連合軍と、それと提携した一部の裏切り者のアトランティス人で、その一部のアトランティス人が「秘密の箱を運ぶ人々」や「山の老人」の前身となったようにも思われます。

 夢を見られないというのは、『イリヤッド』ではたいへんなトラウマがあることを意味していますが、この場合は、「人類の根源に関わる秘密」を知っているから、と解釈するのがよさそうです。ただ、ヘロドトス『歴史』では、夢を見られないのはアトランティス人だとされていて、「柱の王国」では夢を見られないのは梟だとされています。
 これをどう解釈すべきか、難しいところですが、兎は夢を見られるようになる方法は知っていても、夢を見られるとはされていないので、兎=アトランティス人も夢を見られない、と解釈するのがよさそうです。梟が夢を見ようとして柱を登ったものの、疲れて諦めてしまったというのは、「人類の根源に関わる秘密」を知った者が夢を見られるようになるのはたいへん困難で、ほとんど無理だということを象徴しているのではないかと思います。
 おそらく、「人類の根源に関わる秘密」を知ったうえで夢を見られるようになるには、すべてに絶望して死を選ぶような追い詰められた精神状況にでもならないと、無理だということではないでしょうか。兎=アトランティス人はそれを知っているので、無理に夢を見られるようになろうとは思わないし、梟にも当初は嘘を教えようとしたのではないかと思います。

 以上、考察とはいえないような水準の思いつきを述べてきましたが、最終回を迎えて、この解釈が大外れだったことが判明したら、かなり恥ずかしいものがありますなあ(笑)。

この記事へのコメント

kiki
2007年02月03日 14:33
劉公嗣さん、こんにちは!
『イリヤッド』ルスティケロとオコーナーの謎についてと
『イリヤッド』アトランティス会議での発言も読ませて頂きました。
考察や分析、いつもながら大変興味深く、
感嘆しつつ読ませて頂きました。

「イリヤッド」では、様々な要素が色々と絡み合っていて、
ちょっとしたことでも後々の話に重要なこともあり、
なかなか先を読むことが難しいですね。
人物も、初期に登場して消え去っていた人が、
いつひょっこりあらわれるか分からないですしね。

伝説については、私も「足を踏みならす」「夜に寝ないから」
「神様が死んでしまったと思って」が引っかかっていますw。

それでは、また!
2007年02月03日 20:42
これはkikiさん、いつもお読み
いただき、ありがとうございます。

次号の発売が迫り、じつに楽しみに
しているところです(笑)。
兎の伝説については、専門の赤穴博士
による謎解きがあるのではないかと
期待しているのですが。

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