『イリヤッド』12巻(3)
古人類学関係の残りの報道についてはまだ調べきれていないので、先に『イリヤッド』12巻のほうを述べていきます。12月4日分の続きです。
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_4.html
襲撃者を撃退した入矢とバトラー神父は、ユカタン半島のチチェンイツァにいるゼプコ老人を訪ねます。ゼプコ老人は30年間、チチェンイツァでピラミッド登りを繰り返しつつ、アトランティスの痕跡を探しています。このチチェンイツァのピラミッドは傾斜が急で、登ろうとして落下する事故が絶えない、とゼプコ老人の口から語られますが、近年になって、やはり危険だということで、登るのは禁止になりました。
ゼプコ老人と入矢・バトラー神父とは、ピラミッドの頂上で出会います。このマヤ文明がアトランティスだと思うか?とゼプコ老人から訊かれた入矢は、年代・技術などからいって違うだろうと言い、アメリカ大陸とユーラシア・アフリカ大陸との間には、コロンブスが訪れるまで交流がなかったと思う、と述べます。では、エジプトとそっくりなこのピラミッド群をどう思うか?とゼプコ老人に訊かれた入矢は、偶然の一致だと答えます。
ゼプコ老人は入矢に、自分は30年間ここでアトランティスの痕跡を調査したが見つからず、アメリカ大陸は絶対にアトランティスではない、と言います。ゼプコ老人によると、パウルはゼプコ老人の父に、ハインリッヒ=シュリーマンも最初は南米大陸(中米も含めて南米としているのでしょう)がアトランティスだと考えていたが、南米になければカナリア諸島以外にありえないと言った、とのことです。
なぜカナリア諸島に行かないのか?とバトラー神父に訊かれたゼプコ老人は、金がないから、と答えます。さらにゼプコ老人は、ユカタン半島かカナリア諸島にアトランティスがなければ、プラトンのいうアトランティスは存在しないとシュリーマンは考えていた、と言います。
ゼプコ老人はさらに、アトランティスについての自説を、入矢とバトラー神父相手に熱心に語ります。初のアフリカ周航者とされる、フェニキア人のハンノは、アフリカ北西部の大西洋岸にあったとされるケルネという島を植民地としたという伝説と、ケルネはかつてアトランティスの領土だったとするディオドロス『歴史叢書』を引用しつつ、ゼプコ老人は自説を力強く述べ続けます。
伝説では、ハンノはケルネから巨大な湖もしくは内海を航海し、そこで三つの島と、色とりどりの木の生い茂る陸地、かぐわしい匂いを放つ島、活火山を目撃したとされますが、ゼプコ老人は、これがカナリア諸島のことだと断言します。
バトラー神父から、内海とはどこのことだ?と問われたゼプコ老人は、バトラー神父に自分の想像図を見せます。その地図では、太平洋に巨大な大陸アトランティスが浮かび、アトランティスとアフリカは内海をはさんだ位置関係にありました。
バトラー神父が入矢に感想を尋ねると、入矢は、ハンノの航海伝説は実話だとしても紀元前7~6世紀のことだ、とそっけなく答えます。カナリア諸島行きは気が進まないようだね、とゼプコ老人に問われた入矢は、悩んでいる、と答えます。
ゼプコ老人になぜか、と問われた入矢は、この何年か地中海沿岸にアトランティスの痕跡を見つけたが、悲しいことにその間に何人かの人が落命したので、もう人の死は見たくない、今さら自分が違うと思う場所に行って時間を費やす必要があるか疑問だ、と答えます。
これを聞いたゼプコ老人は、30年間アトランティスに心血を注いできた自分の前でよくそんなことが言えるな、と入矢に反発し、アトランティスがメキシコ(ユカタン半島)かカナリア諸島になければ、プラトンのいうアトランティスは存在しない、というシュリーマンの考えはどうするのだ?と入矢に詰め寄ります。
入矢は、シュリーマンが本当にカナリア諸島を候補地の一つとして考えていたのか?と疑問を呈し、メキシコなら分かるが、カナリア諸島は小さすぎる、と否定します。ゼプコ老人は、大西洋上の大陸が沈み、小さな島だけが残った、と反論しますが、入矢は非科学的だ、と一蹴します。
ゼプコ老人が、「これだから学者先生はこまる!あんたはカナリア諸島の何を知ってる?」と問い詰めると、入矢は考古学的にはぜんぜん知らない、と告白します。カナリア諸島の先住民グアンチェスがミイラを作っていた話は?とのゼプコ老人の問いにも、入矢は知らない、と答えます。
百聞は一見に如かずだ、と言うゼプコ老人にたいして、入矢は、グアンチェスがどの程度の文明を持っていたのだ?と反問します。ゼプコ老人は一瞬言葉につまり、しぶしぶ、14世紀にスペイン人が入植したときの島民の文化水準は新石器時代程度だった、と答えます。
金属を知らない文明がアトランティスなわけない、という入矢にたいして、国が沈んで退化したんだ、とゼプコ老人は言いますが、入矢は納得しません。二人の間はすっかり険悪な雰囲気となり、バトラー神父は頭を抱えます。入矢を頭でっかちと罵り、こうしている間に誰かがカナリア諸島でアトランティスの手がかりを見つけるかもしれない、というゼプコ老人にたいして、可能性は万に一つもない、と入矢は一蹴します。
ピラミッドを降りてメキシコのカンクーンに赴いた入矢・バトラー神父・ゼプコ老人の三人は、歩きながら話を続けますが、相変わらず険悪な雰囲気で、間に立っているバトラー神父がとりなそうとしても、好転する気配がありません。
バトラー神父が雰囲気を変えようとして、カナリア諸島の先住民グアンチェスがどこから来たのか、とゼプコ老人に尋ねると、グアンチェスはアトランティスの生き残りで、最初からそこにいたのであり、クレタ人やフェニキア人はカナリア諸島をポセイドンの「幸福の島」と呼んだくらいだ、との答えが返ってきます。
その答えを聞いたバトラー神父は、アトランティスっぽいと言いますが、入矢はまったく反応しません。バトラー神父がさらに、グアンチェスは今でもカナリア諸島に生存しているのか、とゼプコ老人に尋ねると、スペイン王国が植民地化に乗り出したとき、4万人近い各島民ははげしく抵抗して多数が殺され、生き残った者もスペイン人と同化したので、純粋民族としては絶滅したが、グアンチェスは長身で美しい白人種だった、との答えが返ってきます。
グアンチェスの言語について尋ねるバトラー神父にたいして、モロッコ南部の古い言語、ベルベル語の一種だった、とゼプコ老人は答えます。つまり地中海系だ、と言ったバトラー神父は、何か意見は?と入矢に訊きます。
すると入矢は、「それでわかった。グアンチェスとアトランティスは無関係だ」と答え、ゼプコ老人はムッとします。グアンチェスは古代ユーロ=アフリカンで、紀元前4000年頃、ケルト人が定住する以前に北アフリカから欧州に移住した人々で、そのころ何らかの理由でカナリア諸島に漂着したのだ、と入矢がいうと、こういう頭でっかちな学者に、シュリーマンも苦労させられただろう、とゼプコ老人は言い返し、雰囲気がいっそう険悪になります。
バトラー神父は場をとりなそうとして、みんなで一杯やらないか、と提案しますが、入矢もゼプコ老人も、自棄酒なら付き合う、と言うだけで、両者の関係が改善される様子はまったくありません。
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_4.html
襲撃者を撃退した入矢とバトラー神父は、ユカタン半島のチチェンイツァにいるゼプコ老人を訪ねます。ゼプコ老人は30年間、チチェンイツァでピラミッド登りを繰り返しつつ、アトランティスの痕跡を探しています。このチチェンイツァのピラミッドは傾斜が急で、登ろうとして落下する事故が絶えない、とゼプコ老人の口から語られますが、近年になって、やはり危険だということで、登るのは禁止になりました。
ゼプコ老人と入矢・バトラー神父とは、ピラミッドの頂上で出会います。このマヤ文明がアトランティスだと思うか?とゼプコ老人から訊かれた入矢は、年代・技術などからいって違うだろうと言い、アメリカ大陸とユーラシア・アフリカ大陸との間には、コロンブスが訪れるまで交流がなかったと思う、と述べます。では、エジプトとそっくりなこのピラミッド群をどう思うか?とゼプコ老人に訊かれた入矢は、偶然の一致だと答えます。
ゼプコ老人は入矢に、自分は30年間ここでアトランティスの痕跡を調査したが見つからず、アメリカ大陸は絶対にアトランティスではない、と言います。ゼプコ老人によると、パウルはゼプコ老人の父に、ハインリッヒ=シュリーマンも最初は南米大陸(中米も含めて南米としているのでしょう)がアトランティスだと考えていたが、南米になければカナリア諸島以外にありえないと言った、とのことです。
なぜカナリア諸島に行かないのか?とバトラー神父に訊かれたゼプコ老人は、金がないから、と答えます。さらにゼプコ老人は、ユカタン半島かカナリア諸島にアトランティスがなければ、プラトンのいうアトランティスは存在しないとシュリーマンは考えていた、と言います。
ゼプコ老人はさらに、アトランティスについての自説を、入矢とバトラー神父相手に熱心に語ります。初のアフリカ周航者とされる、フェニキア人のハンノは、アフリカ北西部の大西洋岸にあったとされるケルネという島を植民地としたという伝説と、ケルネはかつてアトランティスの領土だったとするディオドロス『歴史叢書』を引用しつつ、ゼプコ老人は自説を力強く述べ続けます。
伝説では、ハンノはケルネから巨大な湖もしくは内海を航海し、そこで三つの島と、色とりどりの木の生い茂る陸地、かぐわしい匂いを放つ島、活火山を目撃したとされますが、ゼプコ老人は、これがカナリア諸島のことだと断言します。
バトラー神父から、内海とはどこのことだ?と問われたゼプコ老人は、バトラー神父に自分の想像図を見せます。その地図では、太平洋に巨大な大陸アトランティスが浮かび、アトランティスとアフリカは内海をはさんだ位置関係にありました。
バトラー神父が入矢に感想を尋ねると、入矢は、ハンノの航海伝説は実話だとしても紀元前7~6世紀のことだ、とそっけなく答えます。カナリア諸島行きは気が進まないようだね、とゼプコ老人に問われた入矢は、悩んでいる、と答えます。
ゼプコ老人になぜか、と問われた入矢は、この何年か地中海沿岸にアトランティスの痕跡を見つけたが、悲しいことにその間に何人かの人が落命したので、もう人の死は見たくない、今さら自分が違うと思う場所に行って時間を費やす必要があるか疑問だ、と答えます。
これを聞いたゼプコ老人は、30年間アトランティスに心血を注いできた自分の前でよくそんなことが言えるな、と入矢に反発し、アトランティスがメキシコ(ユカタン半島)かカナリア諸島になければ、プラトンのいうアトランティスは存在しない、というシュリーマンの考えはどうするのだ?と入矢に詰め寄ります。
入矢は、シュリーマンが本当にカナリア諸島を候補地の一つとして考えていたのか?と疑問を呈し、メキシコなら分かるが、カナリア諸島は小さすぎる、と否定します。ゼプコ老人は、大西洋上の大陸が沈み、小さな島だけが残った、と反論しますが、入矢は非科学的だ、と一蹴します。
ゼプコ老人が、「これだから学者先生はこまる!あんたはカナリア諸島の何を知ってる?」と問い詰めると、入矢は考古学的にはぜんぜん知らない、と告白します。カナリア諸島の先住民グアンチェスがミイラを作っていた話は?とのゼプコ老人の問いにも、入矢は知らない、と答えます。
百聞は一見に如かずだ、と言うゼプコ老人にたいして、入矢は、グアンチェスがどの程度の文明を持っていたのだ?と反問します。ゼプコ老人は一瞬言葉につまり、しぶしぶ、14世紀にスペイン人が入植したときの島民の文化水準は新石器時代程度だった、と答えます。
金属を知らない文明がアトランティスなわけない、という入矢にたいして、国が沈んで退化したんだ、とゼプコ老人は言いますが、入矢は納得しません。二人の間はすっかり険悪な雰囲気となり、バトラー神父は頭を抱えます。入矢を頭でっかちと罵り、こうしている間に誰かがカナリア諸島でアトランティスの手がかりを見つけるかもしれない、というゼプコ老人にたいして、可能性は万に一つもない、と入矢は一蹴します。
ピラミッドを降りてメキシコのカンクーンに赴いた入矢・バトラー神父・ゼプコ老人の三人は、歩きながら話を続けますが、相変わらず険悪な雰囲気で、間に立っているバトラー神父がとりなそうとしても、好転する気配がありません。
バトラー神父が雰囲気を変えようとして、カナリア諸島の先住民グアンチェスがどこから来たのか、とゼプコ老人に尋ねると、グアンチェスはアトランティスの生き残りで、最初からそこにいたのであり、クレタ人やフェニキア人はカナリア諸島をポセイドンの「幸福の島」と呼んだくらいだ、との答えが返ってきます。
その答えを聞いたバトラー神父は、アトランティスっぽいと言いますが、入矢はまったく反応しません。バトラー神父がさらに、グアンチェスは今でもカナリア諸島に生存しているのか、とゼプコ老人に尋ねると、スペイン王国が植民地化に乗り出したとき、4万人近い各島民ははげしく抵抗して多数が殺され、生き残った者もスペイン人と同化したので、純粋民族としては絶滅したが、グアンチェスは長身で美しい白人種だった、との答えが返ってきます。
グアンチェスの言語について尋ねるバトラー神父にたいして、モロッコ南部の古い言語、ベルベル語の一種だった、とゼプコ老人は答えます。つまり地中海系だ、と言ったバトラー神父は、何か意見は?と入矢に訊きます。
すると入矢は、「それでわかった。グアンチェスとアトランティスは無関係だ」と答え、ゼプコ老人はムッとします。グアンチェスは古代ユーロ=アフリカンで、紀元前4000年頃、ケルト人が定住する以前に北アフリカから欧州に移住した人々で、そのころ何らかの理由でカナリア諸島に漂着したのだ、と入矢がいうと、こういう頭でっかちな学者に、シュリーマンも苦労させられただろう、とゼプコ老人は言い返し、雰囲気がいっそう険悪になります。
バトラー神父は場をとりなそうとして、みんなで一杯やらないか、と提案しますが、入矢もゼプコ老人も、自棄酒なら付き合う、と言うだけで、両者の関係が改善される様子はまったくありません。
この記事へのコメント
古人類学関係の最近の記事2つ読ませて頂きましたよ。
とても興味深かったです。
劉公嗣さんはこの関係の本職さんですね。
近年の発掘調査や研究で、学生時代に学んだことが覆されたり、
謎だった部分が解明されたり、嬉しいような悲しいようなw。
これで私の年齢が想像できてしまいますねw。
イリヤッドにも関わりがあり、本当に興味深いです。
私の頭の中では、いつも旧人と新人が混ざってしまって
うまく整理できていないのが現状ですw。
劉公嗣さんがおっしゃっていたのか、別のところで
読んだのか忘れましたが、イリヤッドの中では通説と
逆の説で話が進められているとか。
このところ、かなりな勢いで古人類学の発見や新説が
出ているので原作者さんも、最初に起案したときと
状況が変わって戸惑ったりしていないのだろうかと、
余計なことを考えてしまいますw。
近所で、古人類の特集のサイエンス雑誌を
販売していたので、購入したいなと思っています。
入谷とゼプコ老人の仲がどうなるのか楽しみです。
入谷にもカナリヤ諸島に行って欲しいです。
ありがとうございます。
古人類学は本職ではなく趣味で
やっているもので、歴史と比較
して趣味としている期間は浅い
のですが、はまっています。
クロマニヨン人やネアンデルタール人
の話は、『イリヤッド』にも関係して
くることで、そういうこともあって
『イリヤッド』を楽しく読んでいる
のですが、こうした点について、
『イリヤッド』ではかなり創作が
認められるように思います。
そのうち、ブログでもこの問題に
ついてまとめてみようかと考えています。
確かにおっしゃるように、近年の成果で
通説が覆ることも多いので、原作者さんに
とっても難しいところだろうとは思います。
今日も古人類学関係の記事を掲載
したので、『イリヤッド』12巻の
続きについては、来週から掲載を
再開します。