アフリカで7万年前頃の儀式の跡が発見される
古人類学関係で面白そうな報道が複数ありました。
(1)世界最古の儀式の跡がボツワナで発見された。
(2)ネアンデルタール人と現生人類との、労働の性的分業の違い。
(3)ネアンデルタール人の食人習慣。
まだ全部は詳しく把握していないのですが、とりあえず今回は、(1)について述べていきます。
アフリカ南部のボツワナ共和国のカラハリ砂漠にある“Tsodilo”という丘(世界最大の岩絵集中地帯として有名で、サン族は「神々の山々」と呼んで聖地として崇めています)で、人類最古の儀式の跡が発見されたとの報道がありました。
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2006-11/trco-wor112906.php
http://www.livescience.com/history/061130_oldest_ritual.html
http://news.nationalgeographic.com/news/2006/12/061222-python-ritual.html
これは、オスロ大学のシェイラ=クールソン助教授が、“Ngamiland”として知られるボツワナ北西部の地域に散在しているサン族の起源を研究しようとして、“Tsodilo”丘で中期石器時代の遺物を探していた中に発見したものであり、4万年前頃に欧州で始まったとされる人類の高度な儀式が、すでに7万年前頃にアフリカで始まっていたことを示す驚異的な発見だ、と報道では高く評価されています。
サン族にとってもっとも重要な動物の一つがニシキヘビで、サン族の創世神話によると、人類はニシキヘビの子孫で、すっかり干上がったかつて流水により形成された窪地も、ニシキヘビが絶えず水を求めて丘を回したから創られたのだ、ということです。
クールソン助教授によると、“Tsodilo”丘の北側の隔離された小さな洞窟にニシキヘビと関連する儀式の跡が保存されており、隔離されていたため、1990年代まで発見されなかった、とのことです。
クールソン助教授と3人の博士課程の院生は、今年の夏にその洞窟に入り、神秘的な岩が巨大なニシキヘビの頭に類似しているのに衝撃を受けました。4人は、長さ6m・高さ2mの岩に、300~400の人工的な刻み目を見つけました。また、その刻み目に日光があたると、蛇の肌のように、夜に灯りをともすと、蛇がじっさいに動いているように見える、とのことです。
4人は、この刻み目が近年に彫られたという証拠を見つけられず、じっさい、岩の表面は広く侵食されていました。4人は、ニシキヘビの形をしたこの岩の正面を試験的に彫ってみて、刻み目を彫るのに使用されたと思われる石を多数発見し、それらのいくつかは7万年以上前のものでした。また、石とともに、岩を彫ったさいの破片も発見されました。
発見された人工遺物は13000にもおよび、それらは槍の穂先とそれに類するものばかりで、岩を刻むのに用いられた道具と同様に、儀式と関連がありそうでした。それら以外の発見物はありませんでした。
槍先の材料となる石は、“Tsodilo”丘付近からだけではなく、数百km離れた地域からも持ち込まれています。また洞窟で発見された槍先は、同時代の“Tsodilo”丘付近で発見されたものと比較すると、精巧で色彩豊かでした。人々はそれら色彩豊かな槍先を洞窟に持ち込んで彫りましたが、焼かれたのは赤い槍先だけで、儀式的な破壊と思われます。
また洞窟には通常の居住の痕跡が見当たらないので、儀式のためだけの場所だったと思われます。おそらく10万年間にわたって、“Tsodilo”丘一帯は人類にとって特別な場所だったのだろう、とクールソン助教授は推測しています。
「ニシキヘビの岩」の後ろには秘密の部屋があり、そこへの入り口は滑らかになっていたので、人々が長年にわたってその入り口から秘密の部屋へと向かったのではないか、とクールソン助教授は推測しています。
またクールソン助教授は、サン族の文化ではシャーマンがひじょうに重視されており、シャーマンが秘密の部屋に身を隠して声を出せば、あたかも「ニシキヘビの岩」から声が出ているように錯覚されたのではないか、と推測しています。さらにクールソン助教授は、シャーマンは這って小さなたて坑を通りぬけることで、秘密の部屋から姿を消すこともできただろう、とも推測しています。
洞窟画や岩絵の集中地帯である“Tsodilo”丘ですが、この洞窟にはキリンと象の小さな絵しか描かれていませんでした。キリンと象の絵は、ちょうど水が流れ落ちるところに描かれていましたが、これはサン族の神話と関連があるかもしれない、とクールソン助教授は推測しています。
あるサン族の神話では、ニシキヘビが水に落ちて出られなくなったところをキリンが救い出し、象は、その長い鼻からよくニシキヘビの比喩とされます。こうしたこともあって、この洞窟は儀式の場だったのだ、とクールソン助教授は推測しています。
報道はおおむね以上の通りなのですが、クールソン助教授の推測が妥当かどうかとなると、さらなる検証が必要でしょう。ただ、近年になって人類の象徴的思考の起源がどんどんさかのぼる傾向にあり、7万年前頃に、クールソン助教授の推測するような儀式が行なわれていたとしても、まったく不思議ではないと思います。
(1)世界最古の儀式の跡がボツワナで発見された。
(2)ネアンデルタール人と現生人類との、労働の性的分業の違い。
(3)ネアンデルタール人の食人習慣。
まだ全部は詳しく把握していないのですが、とりあえず今回は、(1)について述べていきます。
アフリカ南部のボツワナ共和国のカラハリ砂漠にある“Tsodilo”という丘(世界最大の岩絵集中地帯として有名で、サン族は「神々の山々」と呼んで聖地として崇めています)で、人類最古の儀式の跡が発見されたとの報道がありました。
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2006-11/trco-wor112906.php
http://www.livescience.com/history/061130_oldest_ritual.html
http://news.nationalgeographic.com/news/2006/12/061222-python-ritual.html
これは、オスロ大学のシェイラ=クールソン助教授が、“Ngamiland”として知られるボツワナ北西部の地域に散在しているサン族の起源を研究しようとして、“Tsodilo”丘で中期石器時代の遺物を探していた中に発見したものであり、4万年前頃に欧州で始まったとされる人類の高度な儀式が、すでに7万年前頃にアフリカで始まっていたことを示す驚異的な発見だ、と報道では高く評価されています。
サン族にとってもっとも重要な動物の一つがニシキヘビで、サン族の創世神話によると、人類はニシキヘビの子孫で、すっかり干上がったかつて流水により形成された窪地も、ニシキヘビが絶えず水を求めて丘を回したから創られたのだ、ということです。
クールソン助教授によると、“Tsodilo”丘の北側の隔離された小さな洞窟にニシキヘビと関連する儀式の跡が保存されており、隔離されていたため、1990年代まで発見されなかった、とのことです。
クールソン助教授と3人の博士課程の院生は、今年の夏にその洞窟に入り、神秘的な岩が巨大なニシキヘビの頭に類似しているのに衝撃を受けました。4人は、長さ6m・高さ2mの岩に、300~400の人工的な刻み目を見つけました。また、その刻み目に日光があたると、蛇の肌のように、夜に灯りをともすと、蛇がじっさいに動いているように見える、とのことです。
4人は、この刻み目が近年に彫られたという証拠を見つけられず、じっさい、岩の表面は広く侵食されていました。4人は、ニシキヘビの形をしたこの岩の正面を試験的に彫ってみて、刻み目を彫るのに使用されたと思われる石を多数発見し、それらのいくつかは7万年以上前のものでした。また、石とともに、岩を彫ったさいの破片も発見されました。
発見された人工遺物は13000にもおよび、それらは槍の穂先とそれに類するものばかりで、岩を刻むのに用いられた道具と同様に、儀式と関連がありそうでした。それら以外の発見物はありませんでした。
槍先の材料となる石は、“Tsodilo”丘付近からだけではなく、数百km離れた地域からも持ち込まれています。また洞窟で発見された槍先は、同時代の“Tsodilo”丘付近で発見されたものと比較すると、精巧で色彩豊かでした。人々はそれら色彩豊かな槍先を洞窟に持ち込んで彫りましたが、焼かれたのは赤い槍先だけで、儀式的な破壊と思われます。
また洞窟には通常の居住の痕跡が見当たらないので、儀式のためだけの場所だったと思われます。おそらく10万年間にわたって、“Tsodilo”丘一帯は人類にとって特別な場所だったのだろう、とクールソン助教授は推測しています。
「ニシキヘビの岩」の後ろには秘密の部屋があり、そこへの入り口は滑らかになっていたので、人々が長年にわたってその入り口から秘密の部屋へと向かったのではないか、とクールソン助教授は推測しています。
またクールソン助教授は、サン族の文化ではシャーマンがひじょうに重視されており、シャーマンが秘密の部屋に身を隠して声を出せば、あたかも「ニシキヘビの岩」から声が出ているように錯覚されたのではないか、と推測しています。さらにクールソン助教授は、シャーマンは這って小さなたて坑を通りぬけることで、秘密の部屋から姿を消すこともできただろう、とも推測しています。
洞窟画や岩絵の集中地帯である“Tsodilo”丘ですが、この洞窟にはキリンと象の小さな絵しか描かれていませんでした。キリンと象の絵は、ちょうど水が流れ落ちるところに描かれていましたが、これはサン族の神話と関連があるかもしれない、とクールソン助教授は推測しています。
あるサン族の神話では、ニシキヘビが水に落ちて出られなくなったところをキリンが救い出し、象は、その長い鼻からよくニシキヘビの比喩とされます。こうしたこともあって、この洞窟は儀式の場だったのだ、とクールソン助教授は推測しています。
報道はおおむね以上の通りなのですが、クールソン助教授の推測が妥当かどうかとなると、さらなる検証が必要でしょう。ただ、近年になって人類の象徴的思考の起源がどんどんさかのぼる傾向にあり、7万年前頃に、クールソン助教授の推測するような儀式が行なわれていたとしても、まったく不思議ではないと思います。
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