今年の古人類学界(1)新C14法・象徴的思考・最古の子供人骨・ロブストスの食性
この1年の古人類学の動向について、今日から何回かに分けて振り返っていこうかと思います。
まず大きな話題としては、新C14法により、欧州の旧石器時代の実年代が大幅に繰り上がる可能性が出てきた、ということが挙げられます。旧石器時代の場合、試料がわずかでも汚染されていると、実年代よりもかなり若く数値が出てしまうという問題で、これまでの欧州旧石器時代の遺跡・人骨の実年代については、大幅な見直しが必要となるでしょう。
この問題は、欧州の旧石器時代におけるネアンデルタール人と現生人類との関係の考察にも大きな影響を及ぼすでしょうが、他地域の遺跡・人骨の実年代についても、大幅な見直しが必要なのではないか、との懸念も生じるわけで、たいへん衝撃的でした。
激論が展開されている、現生人類の象徴的思考の起源についても新たな研究成果が提示され、著名な遺跡であるイスラエルのスフール洞窟の10万年以上前の遺物が、貝殻製のビーズではないか、との指摘がなされました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200606article_3.html
また、アフリカ南部のザンビアのツイン=リヴァーズという遺跡で、人類が20万年前に象徴的な方法で様々な色の顔料を使用していた、との研究も報告され、このブログでも取り上げました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200609article_14.html
この遺跡の人類種は未確定とのことですが、ハイデルベルゲンシスから現生人類への移行期の人類種である可能性もあり、現生人類は、その誕生時より象徴的思考を備えていた可能性が高いように思われます。
ハイデルベルゲンシスがすでにある程度は象徴的思考能力を備えていたとなると、現生人類と同じくハイデルベルゲンシスから分岐したネアンデルタール人にも、一定水準以上の象徴的思考能力が備わっていたのではないか、との推測もできるでしょう。
宗教的儀式が7万年前にさかのぼる可能性も指摘され、
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_6.html
現生人類の象徴的思考が中期石器時代にまでさかのぼる可能性がますます高くなった、と言えるでしょう。
エチオピアで330万年前のアウストラロピテクス=アファレンシスの女児の化石が発見されたことは、現時点での人類最古の子供の骨であること、良好な残存上京であることから、大きな反響を呼び、このブログでも取り上げました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200609article_22.html
この人骨で注目すべきなのは、チンパンジーよりも脳の二次的晩熟性が進んでいることと、肩や腕の骨が類人猿に似ていたことで、初期人類は、樹上生活者としての性格を多分に残していたと言えるでしょう。
その頑丈な顎で、サバンナの植物の根茎のような固く低栄養価(同時代のホモ属の食していた肉や骨髄などと比較して)のものをおもに食べていたとされる、いわゆる頑丈型猿人のロブストスですが、歯の分析により、その食性はじゅうらい考えられていたよりもずっと多様だったと判明した、との研究が報告され、このブログでも取り上げました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200611article_13.html
頑丈なロブストスは乾燥化により拡大したサバンナに適応し、サバンナの植物の固い根茎を、その頑丈な顎で噛み砕いていたように、サバンナの環境に特化した人類種だった、という美しく説得力のある仮説が、歯の分析という現実の前に脆くも崩れたわけで、古人類学の恐ろしさと楽しさを再確認させられた研究でした。
まず大きな話題としては、新C14法により、欧州の旧石器時代の実年代が大幅に繰り上がる可能性が出てきた、ということが挙げられます。旧石器時代の場合、試料がわずかでも汚染されていると、実年代よりもかなり若く数値が出てしまうという問題で、これまでの欧州旧石器時代の遺跡・人骨の実年代については、大幅な見直しが必要となるでしょう。
この問題は、欧州の旧石器時代におけるネアンデルタール人と現生人類との関係の考察にも大きな影響を及ぼすでしょうが、他地域の遺跡・人骨の実年代についても、大幅な見直しが必要なのではないか、との懸念も生じるわけで、たいへん衝撃的でした。
激論が展開されている、現生人類の象徴的思考の起源についても新たな研究成果が提示され、著名な遺跡であるイスラエルのスフール洞窟の10万年以上前の遺物が、貝殻製のビーズではないか、との指摘がなされました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200606article_3.html
また、アフリカ南部のザンビアのツイン=リヴァーズという遺跡で、人類が20万年前に象徴的な方法で様々な色の顔料を使用していた、との研究も報告され、このブログでも取り上げました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200609article_14.html
この遺跡の人類種は未確定とのことですが、ハイデルベルゲンシスから現生人類への移行期の人類種である可能性もあり、現生人類は、その誕生時より象徴的思考を備えていた可能性が高いように思われます。
ハイデルベルゲンシスがすでにある程度は象徴的思考能力を備えていたとなると、現生人類と同じくハイデルベルゲンシスから分岐したネアンデルタール人にも、一定水準以上の象徴的思考能力が備わっていたのではないか、との推測もできるでしょう。
宗教的儀式が7万年前にさかのぼる可能性も指摘され、
https://sicambre.seesaa.net/article/200612article_6.html
現生人類の象徴的思考が中期石器時代にまでさかのぼる可能性がますます高くなった、と言えるでしょう。
エチオピアで330万年前のアウストラロピテクス=アファレンシスの女児の化石が発見されたことは、現時点での人類最古の子供の骨であること、良好な残存上京であることから、大きな反響を呼び、このブログでも取り上げました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200609article_22.html
この人骨で注目すべきなのは、チンパンジーよりも脳の二次的晩熟性が進んでいることと、肩や腕の骨が類人猿に似ていたことで、初期人類は、樹上生活者としての性格を多分に残していたと言えるでしょう。
その頑丈な顎で、サバンナの植物の根茎のような固く低栄養価(同時代のホモ属の食していた肉や骨髄などと比較して)のものをおもに食べていたとされる、いわゆる頑丈型猿人のロブストスですが、歯の分析により、その食性はじゅうらい考えられていたよりもずっと多様だったと判明した、との研究が報告され、このブログでも取り上げました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200611article_13.html
頑丈なロブストスは乾燥化により拡大したサバンナに適応し、サバンナの植物の固い根茎を、その頑丈な顎で噛み砕いていたように、サバンナの環境に特化した人類種だった、という美しく説得力のある仮説が、歯の分析という現実の前に脆くも崩れたわけで、古人類学の恐ろしさと楽しさを再確認させられた研究でした。
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