ロブストスの食性

 いわゆる頑丈型猿人のロブストス(アフリカ南部に180~100万年前頃存在し、アウストラロピテクス属またはパロントロプス属に分類されます)の食性が、歯の分析の結果、通説とは異なることが判明した、との研究が公表されました。
http://sciencenow.sciencemag.org/cgi/content/full/2006/1109/1
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2006-11/uoca-vdo110606.php

 じゅうらい、ロブストスなどいわゆる頑丈型猿人は、その頑丈な顎で、サバンナの植物の根茎のような固く低栄養価(同時代のホモ属の食していた肉や骨髄などと比較して)のものをおもに食べており、乾燥化によるサバンナ出現に適応し、その環境に特化した人類種であって、その対象としていた食資源の範囲の狭さもあって絶滅した、とされてきました。
 ところがこの研究では、植物中の炭素同位体は採食者の体内に取り込まれるという現象を利用して、パロントロプスの歯を分析したところ、サバンナの根茎だけではなく、森林の果実や葉も食しており、さらには昆虫など動物性タンパク質を摂取していた可能性も指摘されています。

 つまり、パラントロプスの食性はじゅうらい考えられていたよりもずっと多様で、食資源の範囲の狭さを絶滅理由の一つとしていたこれまでの見解を見直す必要がでてきた、というわけです。
 では、絶滅理由は何かとなると、現時点では不明なところが多いのですが、パラントロプスの食性が多様だったとなると、食資源の獲得においてホモ属と競合する場合もでてきたでしょうから、それも一因となったのかもしれません。

 それにしても、頑丈なロブストスは乾燥化により拡大したサバンナに適応し、サバンナの植物の固い根茎を、その頑丈な顎で噛み砕いていたように、サバンナの環境に特化した人類種だった、という美しく説得力のある仮説が、歯の分析という現実の前に脆くも崩れてしまいそうなのが、古人類学の恐ろしくも楽しいところです。

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