富の源泉としてのアトランティスと邪馬台国

 『イリヤッド』では欧州文明の源流と言われているアトランティスですが、今回は、『イリヤッド』を離れて、アトランティスについて少し雑感を述べようと思います。
 欧米社会におけるアトランティスへの関心は今でも強いようで、さまざまな本が刊行されたり、新説が提示されたりしています。アマチュアだけではなく、アカデミズムの側からの発言もあります。今でも、古そうな遺跡(に見えるもの)が発見されると、アトランティスとの関連が取りざたされます。欧米社会において、アトランティスは、まさに金のなる木なのです。今年も、ボスニアで、たいへん古いピラミッドが発見されたと話題になり、アトランティス関連の遺跡ではないか、と騒がれました。もっとも、考古学者は、そもそもピラミッドではない、と主張していますが。
 こうした状況は、日本の邪馬台国論争に似ているところがあります。今でも、日本では邪馬台国への関心、とくにその場所がどこかというのが、日本史上有数の謎とされていて、ネットの掲示板でも激論が展開されており、邪馬台国関連の出版物も少なくありません。ただ、学界の側では、邪馬台国の位置をめぐって論争されることは皆無に近く、一般では根強い人気の九州説がほとんど相手にされていません。専門家と一般社会との間で認識の違いが大きいことは珍しくありませんが、邪馬台国問題では、とくに違いが大きいと言えそうです。

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