『イリヤッド』11巻ソロモンの壺編(3)
9月19日分の続きです。
場面は変わって、スペインのアンダルシア地方です。ティトゥアンでシャリーンを殺そうとして失敗し、拷問を受けた「山の老人」の連絡員兼殺し屋が、グレコ神父の配下によって見つけられ、神父の元に連れてこられます。
最初は穏やかな表情でご苦労だったね、とねぎらい、報告を怠ったことにたいして許しを乞う連絡員にたいしても、話せば罰は加えない、といっていたグレコ神父ですが、失敗しました、との報告を受けると、表情が一変して険しくなります。
バシャが地下で自爆したとの報告を受けたグレコ神父は、険しい表情のままご苦労と言い、連絡員は、神父様、お許しを!と叫びますが、グレコ神父の配下により連れ去られます。明示されてはいませんが、おそらく殺されたのでしょう。連絡員が叫びながら連れ去られるとき、グレコ神父は、「安心しろ!私もじき、おまえの待つ地獄に落ちるから」と独り言をいいます。
おそらく、その晩のことと思われますが、月光の差し込む部屋に一人で、グレコ神父は「主よ・・・・・・私は・・・・・・使命のために多くの犠牲を払い、多くの人を・・・・・・あなたのためです。あなたの・・・・・・バシャ・・・・・・・キミはどうして・・・・・・キミはとうとう夢を見られたのか?実は私は・・・・・・いまだに見られない・・・・・・」と告白し、号泣します。
場面は変わって、入矢・デメル・ロッカの三人のいるラバトに、ユリが到着し、ロッカが、ソロモン王の壺と思われる金属製の壺の蓋を開けます。蓋を開けたロッカは、中を調べると何かが入っていることに気づき、慎重に取り上げます。それは何かの骨の破片でした。
何日か後、その骨の分析結果が出ます。それがネアンデルタール人の骨だということが判明したところで、ソロモンの壺編は終了です。
ソロモンの壺にネアンデルタール人の骨が入っていたことの意味については、88話「二つの神様」についての感想でいっしょに述べることとして、この「ソロモンの壺編」では、ヒューマンストーリーの部分に触れつつ、ソロモンの壺と「山の老人」について考えてみることにします。
島田親子は、後の98話にて再登場します。泥棒の父とその娘との葛藤と和解を、入矢の母である淑子を仲介として描きつつ、アトランティスにまつわる謎を解く伏線にもなっているという、『イリヤッド』によくあるパターンの話ですが、父の心理描写が丁寧で、なかなか面白く、感動的です。
娘の美奈のほうの心理は、あまり描かれておらず、想像するしかありませんが、父を警察に告発したことには、たいへんな真理的葛藤があったものと思われます。父のことを思って告発したのでしょうが、同時に、父を裏切ったという罪の意識を強くもったので、父が逮捕されてから二年間手紙を出さなかったのでしょう。
思い切って手紙を出してはみたものの、父からの返事はなく、それでも父を待ち続け、最終的に許した娘は、人間として大きく成長し、厳しさ・優しさ・寛容さといった、人間が生きていくうえで必要なものをしっかりと身につけたわけです。
この島田親子のように、挫折しながらも最終的には幸せになるというか、ほっとさせられることが多いのが『イリヤッド』の特色で、このため、残忍な暗殺集団(当人たちは否定していますが)である「山の老人」との対決という殺伐とした要素がありながら、作品全体の印象は、あまり殺伐としたものにはなっていません。
次に、「山の老人」についてですが、この組織が単なる暗殺者集団ではないということが、「山の老人」の幹部によって語られます。ただ、前回にも述べたように、幹部が「マンハントに参加させてもらうよ」などと言ってしまうのですから、それはどうかと思うのですが・・・。
ただ、グレコ神父の号泣と、72話でグレコ神父が毒殺を思いとどまったこと
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_15.html
からすると、「山の老人」の構成員の主観としては、人類の護民官だ、との発言や、101話での「むやみに人を殺す結社なぞ、存在しませんよ。我々はいつもやりたくないんだ」との発言は、
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_20.html
本音なのでしょう。
グレコ神父が夢を奪われた理由については、
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_13.html
にて述べましたが、使命のためとはいえ、多くの人を殺していることについては、グレコ神父も罪の意識に苛まれていて、それが、自分も地獄に落ちる、との発言になっているのでしょう。
最後に、アトランティスにまつわる謎についてですが、この「ソロモンの壺編」では、かなり重要な情報が提示されているように思います。
グレコ神父が地獄落ちを覚悟しながらも隠蔽したいこととは、「太古の呪われた人類の秘密」であり、これを解く重要な鍵が、ソロモン王の壺であることが、グレコ神父の説明により明らかになりました。
また、ネート・アテナ・メドゥーサが三位一体を示す像であるということと、波を渡る兎と、兎の目指す先の黄金の羊とが、アトランティスの謎を解くには重要だということも判明しました。7・8巻では、兎は最初に都市を築いた人々の象徴とされていますから、兎はアトランティス人のことと思われます。
そうすると、波を渡るというのは、地震と津波に襲われた都市から逃れるということでしょうか?アトランティス人のその向かう先の黄金の羊とは何を意味するのでしょうか?地中海沿岸の神々であるネート・アテナ・メドゥーサが元は一体であり、アトランティスの謎に関わるということは、アトランティス文明こそ、地中海沿岸の諸文明の源だということを、あるいはそれ以上の何かを示しているのでしょうか?
どうも現時点では私にはよく分かりませんが、最終的には、これらの謎がすべてつながり、解決することを願っています。
場面は変わって、スペインのアンダルシア地方です。ティトゥアンでシャリーンを殺そうとして失敗し、拷問を受けた「山の老人」の連絡員兼殺し屋が、グレコ神父の配下によって見つけられ、神父の元に連れてこられます。
最初は穏やかな表情でご苦労だったね、とねぎらい、報告を怠ったことにたいして許しを乞う連絡員にたいしても、話せば罰は加えない、といっていたグレコ神父ですが、失敗しました、との報告を受けると、表情が一変して険しくなります。
バシャが地下で自爆したとの報告を受けたグレコ神父は、険しい表情のままご苦労と言い、連絡員は、神父様、お許しを!と叫びますが、グレコ神父の配下により連れ去られます。明示されてはいませんが、おそらく殺されたのでしょう。連絡員が叫びながら連れ去られるとき、グレコ神父は、「安心しろ!私もじき、おまえの待つ地獄に落ちるから」と独り言をいいます。
おそらく、その晩のことと思われますが、月光の差し込む部屋に一人で、グレコ神父は「主よ・・・・・・私は・・・・・・使命のために多くの犠牲を払い、多くの人を・・・・・・あなたのためです。あなたの・・・・・・バシャ・・・・・・・キミはどうして・・・・・・キミはとうとう夢を見られたのか?実は私は・・・・・・いまだに見られない・・・・・・」と告白し、号泣します。
場面は変わって、入矢・デメル・ロッカの三人のいるラバトに、ユリが到着し、ロッカが、ソロモン王の壺と思われる金属製の壺の蓋を開けます。蓋を開けたロッカは、中を調べると何かが入っていることに気づき、慎重に取り上げます。それは何かの骨の破片でした。
何日か後、その骨の分析結果が出ます。それがネアンデルタール人の骨だということが判明したところで、ソロモンの壺編は終了です。
ソロモンの壺にネアンデルタール人の骨が入っていたことの意味については、88話「二つの神様」についての感想でいっしょに述べることとして、この「ソロモンの壺編」では、ヒューマンストーリーの部分に触れつつ、ソロモンの壺と「山の老人」について考えてみることにします。
島田親子は、後の98話にて再登場します。泥棒の父とその娘との葛藤と和解を、入矢の母である淑子を仲介として描きつつ、アトランティスにまつわる謎を解く伏線にもなっているという、『イリヤッド』によくあるパターンの話ですが、父の心理描写が丁寧で、なかなか面白く、感動的です。
娘の美奈のほうの心理は、あまり描かれておらず、想像するしかありませんが、父を警察に告発したことには、たいへんな真理的葛藤があったものと思われます。父のことを思って告発したのでしょうが、同時に、父を裏切ったという罪の意識を強くもったので、父が逮捕されてから二年間手紙を出さなかったのでしょう。
思い切って手紙を出してはみたものの、父からの返事はなく、それでも父を待ち続け、最終的に許した娘は、人間として大きく成長し、厳しさ・優しさ・寛容さといった、人間が生きていくうえで必要なものをしっかりと身につけたわけです。
この島田親子のように、挫折しながらも最終的には幸せになるというか、ほっとさせられることが多いのが『イリヤッド』の特色で、このため、残忍な暗殺集団(当人たちは否定していますが)である「山の老人」との対決という殺伐とした要素がありながら、作品全体の印象は、あまり殺伐としたものにはなっていません。
次に、「山の老人」についてですが、この組織が単なる暗殺者集団ではないということが、「山の老人」の幹部によって語られます。ただ、前回にも述べたように、幹部が「マンハントに参加させてもらうよ」などと言ってしまうのですから、それはどうかと思うのですが・・・。
ただ、グレコ神父の号泣と、72話でグレコ神父が毒殺を思いとどまったこと
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_15.html
からすると、「山の老人」の構成員の主観としては、人類の護民官だ、との発言や、101話での「むやみに人を殺す結社なぞ、存在しませんよ。我々はいつもやりたくないんだ」との発言は、
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_20.html
本音なのでしょう。
グレコ神父が夢を奪われた理由については、
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_13.html
にて述べましたが、使命のためとはいえ、多くの人を殺していることについては、グレコ神父も罪の意識に苛まれていて、それが、自分も地獄に落ちる、との発言になっているのでしょう。
最後に、アトランティスにまつわる謎についてですが、この「ソロモンの壺編」では、かなり重要な情報が提示されているように思います。
グレコ神父が地獄落ちを覚悟しながらも隠蔽したいこととは、「太古の呪われた人類の秘密」であり、これを解く重要な鍵が、ソロモン王の壺であることが、グレコ神父の説明により明らかになりました。
また、ネート・アテナ・メドゥーサが三位一体を示す像であるということと、波を渡る兎と、兎の目指す先の黄金の羊とが、アトランティスの謎を解くには重要だということも判明しました。7・8巻では、兎は最初に都市を築いた人々の象徴とされていますから、兎はアトランティス人のことと思われます。
そうすると、波を渡るというのは、地震と津波に襲われた都市から逃れるということでしょうか?アトランティス人のその向かう先の黄金の羊とは何を意味するのでしょうか?地中海沿岸の神々であるネート・アテナ・メドゥーサが元は一体であり、アトランティスの謎に関わるということは、アトランティス文明こそ、地中海沿岸の諸文明の源だということを、あるいはそれ以上の何かを示しているのでしょうか?
どうも現時点では私にはよく分かりませんが、最終的には、これらの謎がすべてつながり、解決することを願っています。
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