エチオピアで330万年前のアファレンシスの女児の化石発見

 ドイツや米国などの国際チームが発見したそうで(人骨は2000年に発見されていたのですが、幼児の脆い骨だけに、完全に取り出すのに5年かかったとのことです。)、掲載誌の『nature』では特設サイトで大きく扱われていて、フロレシエンシスの発見に匹敵する評価となっています。女児は研究チームによって“Selam”と名づけられました。エチオピアの公用語であるアムハラ語で「平和」という意味です。
http://www.nature.com/nature/focus/hominiddevelopment/index.html
 また、BBCなどでも大きな扱いで報道されました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5363328.stm
http://www.asahi.com/science/news/TKY200609200512.html
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060921k0000m040158000c.html

 この発見が大きく扱われているのは、人骨の残存状態が、古人類学における大発見とされて、同じくアファレンシスの女性である「ルーシー」よりも良好であることと、最古の子供の化石であることによるのだと思います。古人類がどのように成長したのかという問題は、人類の進化を明らかにするために重要なのですが、これまでは、ホモ属登場前の初期人類の子供の化石がほとんどなかったため、難しいところがありました。
 ところが今回、300万年以上前の残存状況の良好な子供の骨が発見されたことで、これまでよりもずっと古い年代の子供の人骨と、現代人や現生類人猿との比較が可能となったのですから、古人類学界にとってはまさに大発見だったといえます。

 推定年齢の上限は3歳とのことで、脳容量は、成人の63~88%程度であり、3歳のチンパンジーの脳容量は、成人の90%程度ですから、チンパンジーよりも子供の成長は遅いということになります。脳の二次的晩熟性は人類の特徴とされているのですが、脳の巨大化した(体格も巨大化していますが)ホモ属の登場以前に、すでにその傾向があったことは、かなり興味深いことです。
 アファレンシスの直立二足歩行は確実とされていますが、その一方で、樹上生活者としての性格も濃厚に有していた、とされています。この女児も、解剖学的には直立二足歩行をしていたものの、肩や腕は類人猿と似ていました。

 「ルーシー」が古人類学に大きく寄与したように、この“Selam”も、古人類学に大きな知見をもたらすことでしょう。それにしても、古人類学では次から次へと興味深い発見があり、本当に飽きません(笑)。

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  • アファレンシスの脊椎骨

    Excerpt: これは5月28日分の記事として掲載しておきます。330万年前頃の人類の脊椎骨に関する研究(Ward et al., 2017)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。エチオピア.. Weblog: 雑記帳 racked: 2017-05-24 07:08
  • アファレンシスの幼児の足

    Excerpt: エチオピアのディキカ(Dikika)で2002年に発見されたアウストラロピテクス属の幼児化石の足に関する研究(DeSilva et al., 2018)が報道されました。この幼児化石(DIK-1-1).. Weblog: 雑記帳 racked: 2018-07-05 16:50