『イリヤッド』11巻ティトゥアン地下迷路編(2)
8月31日分の続きです。
入矢・ロッカ・バシャ(入矢・ロッカ・デメルにはムンツと偽っています)の三人は、入矢がサントリーニ島のテラ遺跡で発見した円盤を頼りに迷路を進んでいきます。奥へと進むと、地中海の女神を描いた壁画が現れます。
最初は、エジプトの女神ネート・・・牝牛の化身・天空を支える柱・水と生命の樹木とされます。
次に、メドゥーサ・・・アテナ神の原型で、ギリシア人はそのことを隠すために怪物に貶めましたが、豊饒の女神で蛇の化身であり、アテナ神のイージスに描かれたアマゾネスの最強の守り神とされます。
最後に、アテナ・・・梟の女神で生と死を見守る聖処女とされます。古くから、アテナはエジプトの神であるネートやイシスと同一とされていて、メドゥーサには二人の姉妹がいたとされています。ヘラクレスが探した黄金の林檎の島に住んでいたのは、アトラスの七人の娘のうち三人だけでした。入矢は、この三つの女神が元は同一だったと推測します。
迷路を奥へと進む途中、バシャは入矢に、入矢を狙う組織はなぜアトランティスの場所を隠蔽したいのか?と尋ねます。入矢は、それは分からないが、「山の老人」が一種の宗教的信念に基づいた組織なことは間違いない、と答えます。
これにたいしてバシャは、「もし、彼らの方が正しかったら?たとえばあなたの探す真相が、人類から夢を奪う行為だとしたら?」と入矢に問いかけます。入矢は「人類から夢を奪うなんて不可能だ」と述べますが、バシャは「夢を奪われた人間は、絶対にいないと思いますか?」と再び問いかけます。
二人の会話がしばし途切れた後、入矢はバシャに、もし夢を奪われるほど傷ついた人がいたら、救うことはできない、どうして夢を奪われたのか、その人の気がすむまでずっと話を聞くことしかできない、と言います。
三人は、入矢・バシャ・ロッカの順にさらに奥へと進んでいき、天井に扉が隠れているのに気づいたバシャは、細工をしてその扉を落下させ、入矢と自分を扉の内へ入れ、ロッカは奥に進めないようにします。入矢は扉の向こうのロッカに、自分たちは先へ進むから、デメルを呼ぶように、と言います。
入矢とバシャが少し先に進むと、高くて急な階段が待ち構えていました。入矢がどうしようかと思案していたところ、いきなりバシャが入矢を階段の下へと突き落とします。
一方、「山の老人」から派遣された、連絡員を兼ねた殺し屋の男は、一人でシャリーンを殺そうと、シャリーン宅へ向かいますが、街の住民はシャリーンの支配下にありますから、その行動はシャリーンに筒抜けで、シャリーンの側に仕える者に捕まってしまいます。
連絡員の男は拷問を受け、直接の描写はありませんが、入矢のボディーガードとして迷路の中へ入っていった男が、じつは殺し屋であることを自白します。そのことをシャリーンから聞いたデメルは、迂闊だった!と叫んで迷路の中へ走っていきますが、前回も述べたように、ボディーガードの顔もろくに確認していなかったため、バシャの偽装を見破れなかったわけですから、自分でも言っていたたように、本当に迂闊で、呆れてしまいます(笑)。
デメルは迷路の奥へと入っていき、扉を開けようとしているロッカと出会います。何とか二人で扉を開けた後、ロッカは、自分が扉を支えているから、入矢を助けにいくようにと言い、デメルは奥へと走っていきます。
一方、突き落とされた入矢は、重傷を負ったものの、幸運にも命はとりとめました。しかし、重傷を負っても探究心のやむことのない入矢は、その先がどうなっているのか気になってライトを点滅させてしまいます。
入矢を突き落とした後、十二番目の仕事完了、と言って入矢の似顔絵を描いていたバシャですが、この明かりで入矢が生きていることに気づき、グレコ神父の言う通り入矢は強運だ、と言いつつ、下へと降りていきます。
下へ降りてきたバシャに気づいた入矢は、「山の老人」か?と尋ね、ムンツと偽っていたバシャは、本名を名乗ります。入矢を見た馬車は左足と左手が折れていて、肋骨も折れて突き刺さっているかもしれない、と言います。
死を覚悟した入矢ですが、その探究心はやむことなく、少しでも夢に近づきたいので、前方にある迷路の中心の部屋まで運んでくれないか、とバシャに頼みます。それにたいしてバシャは、話を聞いてほしいので、自分にも少し時間をくれないか?と入矢に頼みます。どうせ自分は動けないからということで、入矢は了承し、バシャが話し始めます。
その昔、バシャは、小さな国の平和な村で妻子とともに幸せに暮らしていました。明示されてはいませんが、この国はユーゴスラビアのことと思われます。しかしその国には、人種・宗教の異なる人々が住み、じつはお互いに少しだけ不満を囲いながら暮らしていました。人々が我慢していたのは、その国が恐ろしい大国(ソ連のことでしょう)の支配下にあり、その大国を怒らせることがとても怖かったからです。
ところが、その大国が消滅し、内戦が始まりました。同じ国・村・の人々が、隣同士の人々が、殺し合いを始めました。バシャも軍隊に志願し、憎い異教徒(イスラム教徒のことでしょう)を、男のみならず女子供まで殺していきました。
ある日、バシャが小隊を率いて自分の村を訪れると、異教徒たちが知り合いを全員殺戮しており、自分の家も焼け落ちていました。バシャは迷わず復讐し、異教徒たちを爆弾や銃で殺しました。
ところが、自宅の隣の異教徒の家を焼きはらったとき、バシャは、逃げ惑う隣人家族の背後に、燃えている妻子の姿を見ます。異教徒の隣人一家は敵であるはずのバシャの家族をかくまっていたのに、バシャは誤って妻子を焼き殺してしまったのです。
それ以来、バシャは夢を見なくなりました。それどころか、悲しみや怒りといったすべての感情が消えてなくなりました。生ける屍となったバシャに、ある神父が使命を与えました。それは、人類を守る崇高な使命で、人が嫌がる仕事だが、やり遂げればもう一度夢を見られる、というのです。この神父とはグレコ神父のことで、バシャは、グレコ神父の命ずるままにアトランティス探索者を次々と殺していき、今回の入矢殺害が、十二番目の任務というわけです。
バシャの話を聞いた入矢は涙を流し、それを見たバシャは、入矢の希望通り、入矢を担いで前方にある中心の部屋まで運びます。そこで入矢が見たものは・・・長くなったので、続きは次回ということにします。
入矢・ロッカ・バシャ(入矢・ロッカ・デメルにはムンツと偽っています)の三人は、入矢がサントリーニ島のテラ遺跡で発見した円盤を頼りに迷路を進んでいきます。奥へと進むと、地中海の女神を描いた壁画が現れます。
最初は、エジプトの女神ネート・・・牝牛の化身・天空を支える柱・水と生命の樹木とされます。
次に、メドゥーサ・・・アテナ神の原型で、ギリシア人はそのことを隠すために怪物に貶めましたが、豊饒の女神で蛇の化身であり、アテナ神のイージスに描かれたアマゾネスの最強の守り神とされます。
最後に、アテナ・・・梟の女神で生と死を見守る聖処女とされます。古くから、アテナはエジプトの神であるネートやイシスと同一とされていて、メドゥーサには二人の姉妹がいたとされています。ヘラクレスが探した黄金の林檎の島に住んでいたのは、アトラスの七人の娘のうち三人だけでした。入矢は、この三つの女神が元は同一だったと推測します。
迷路を奥へと進む途中、バシャは入矢に、入矢を狙う組織はなぜアトランティスの場所を隠蔽したいのか?と尋ねます。入矢は、それは分からないが、「山の老人」が一種の宗教的信念に基づいた組織なことは間違いない、と答えます。
これにたいしてバシャは、「もし、彼らの方が正しかったら?たとえばあなたの探す真相が、人類から夢を奪う行為だとしたら?」と入矢に問いかけます。入矢は「人類から夢を奪うなんて不可能だ」と述べますが、バシャは「夢を奪われた人間は、絶対にいないと思いますか?」と再び問いかけます。
二人の会話がしばし途切れた後、入矢はバシャに、もし夢を奪われるほど傷ついた人がいたら、救うことはできない、どうして夢を奪われたのか、その人の気がすむまでずっと話を聞くことしかできない、と言います。
三人は、入矢・バシャ・ロッカの順にさらに奥へと進んでいき、天井に扉が隠れているのに気づいたバシャは、細工をしてその扉を落下させ、入矢と自分を扉の内へ入れ、ロッカは奥に進めないようにします。入矢は扉の向こうのロッカに、自分たちは先へ進むから、デメルを呼ぶように、と言います。
入矢とバシャが少し先に進むと、高くて急な階段が待ち構えていました。入矢がどうしようかと思案していたところ、いきなりバシャが入矢を階段の下へと突き落とします。
一方、「山の老人」から派遣された、連絡員を兼ねた殺し屋の男は、一人でシャリーンを殺そうと、シャリーン宅へ向かいますが、街の住民はシャリーンの支配下にありますから、その行動はシャリーンに筒抜けで、シャリーンの側に仕える者に捕まってしまいます。
連絡員の男は拷問を受け、直接の描写はありませんが、入矢のボディーガードとして迷路の中へ入っていった男が、じつは殺し屋であることを自白します。そのことをシャリーンから聞いたデメルは、迂闊だった!と叫んで迷路の中へ走っていきますが、前回も述べたように、ボディーガードの顔もろくに確認していなかったため、バシャの偽装を見破れなかったわけですから、自分でも言っていたたように、本当に迂闊で、呆れてしまいます(笑)。
デメルは迷路の奥へと入っていき、扉を開けようとしているロッカと出会います。何とか二人で扉を開けた後、ロッカは、自分が扉を支えているから、入矢を助けにいくようにと言い、デメルは奥へと走っていきます。
一方、突き落とされた入矢は、重傷を負ったものの、幸運にも命はとりとめました。しかし、重傷を負っても探究心のやむことのない入矢は、その先がどうなっているのか気になってライトを点滅させてしまいます。
入矢を突き落とした後、十二番目の仕事完了、と言って入矢の似顔絵を描いていたバシャですが、この明かりで入矢が生きていることに気づき、グレコ神父の言う通り入矢は強運だ、と言いつつ、下へと降りていきます。
下へ降りてきたバシャに気づいた入矢は、「山の老人」か?と尋ね、ムンツと偽っていたバシャは、本名を名乗ります。入矢を見た馬車は左足と左手が折れていて、肋骨も折れて突き刺さっているかもしれない、と言います。
死を覚悟した入矢ですが、その探究心はやむことなく、少しでも夢に近づきたいので、前方にある迷路の中心の部屋まで運んでくれないか、とバシャに頼みます。それにたいしてバシャは、話を聞いてほしいので、自分にも少し時間をくれないか?と入矢に頼みます。どうせ自分は動けないからということで、入矢は了承し、バシャが話し始めます。
その昔、バシャは、小さな国の平和な村で妻子とともに幸せに暮らしていました。明示されてはいませんが、この国はユーゴスラビアのことと思われます。しかしその国には、人種・宗教の異なる人々が住み、じつはお互いに少しだけ不満を囲いながら暮らしていました。人々が我慢していたのは、その国が恐ろしい大国(ソ連のことでしょう)の支配下にあり、その大国を怒らせることがとても怖かったからです。
ところが、その大国が消滅し、内戦が始まりました。同じ国・村・の人々が、隣同士の人々が、殺し合いを始めました。バシャも軍隊に志願し、憎い異教徒(イスラム教徒のことでしょう)を、男のみならず女子供まで殺していきました。
ある日、バシャが小隊を率いて自分の村を訪れると、異教徒たちが知り合いを全員殺戮しており、自分の家も焼け落ちていました。バシャは迷わず復讐し、異教徒たちを爆弾や銃で殺しました。
ところが、自宅の隣の異教徒の家を焼きはらったとき、バシャは、逃げ惑う隣人家族の背後に、燃えている妻子の姿を見ます。異教徒の隣人一家は敵であるはずのバシャの家族をかくまっていたのに、バシャは誤って妻子を焼き殺してしまったのです。
それ以来、バシャは夢を見なくなりました。それどころか、悲しみや怒りといったすべての感情が消えてなくなりました。生ける屍となったバシャに、ある神父が使命を与えました。それは、人類を守る崇高な使命で、人が嫌がる仕事だが、やり遂げればもう一度夢を見られる、というのです。この神父とはグレコ神父のことで、バシャは、グレコ神父の命ずるままにアトランティス探索者を次々と殺していき、今回の入矢殺害が、十二番目の任務というわけです。
バシャの話を聞いた入矢は涙を流し、それを見たバシャは、入矢の希望通り、入矢を担いで前方にある中心の部屋まで運びます。そこで入矢が見たものは・・・長くなったので、続きは次回ということにします。
この記事へのコメント