『イリヤッド』11巻ティトゥアン地下迷路編(1)
先月28日に発売された『イリヤッド』の最新刊である11巻について、発売から一ヶ月以上経っていまさらではありますが、何回かに分けて感想を述べていこうと思います。11巻の構成については
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_28.html
にて述べましたが、81~84話をティトゥアン地下迷路編、85・86話をソロモンの壺編としてまとめ、87・88話は一話ずつ述べることにします。ティトゥアン地下迷路編を述べるにあたっては、11巻所収の81~84話だけではなく、必要に応じて10巻所収の話にも言及します。はじめに述べておくと、このティトゥアン地下迷路編では登場人物(おもに「山の老人」の暗殺者であるバシャですが)の行動がヘラクレス神話になぞらえられ、物語の世界に入り込む効果を高めています。
入矢とデメルは、チュニジアのチュニスにある遺跡で出会った女性考古学者のアニタ=ロッカとともに、アトランティスの痕跡を求めてモロッコのタンジェを訪れます。
チュニスの遺跡で発掘されたランプと陶片が、アトランティスの謎をとく鍵と思われるアマゾネスの故郷を探る手がかりであり、そのランプのうちの一つに描かれている絵は、古代の地図にみえて、現在のモロッコにあるとされる「七兄弟塚連峰」を示しており、別のランプの絵は、ヘラクレスとアンタイオス(タンジェの地神)との戦いを描いている、と推測したからです。
タンジェにある「ヘラクレスの洞窟」を訪れた三人は、古代の地図にみえる「七兄弟塚連峰」と同じ位置にあるリフ山脈のふもとの街ティトゥアンに重要な鍵があると推測し、ティトゥアンを訪れます。ティトゥアンは、古くからベルベル人の街ですが、ベルベル人は自らをアマゾクと称していて、アマゾネスと似ている、と入矢は言い、アマゾネス伝説との深い関わりが示唆されます。
ここでデメルは、以前入矢がサントリーニ島のテラ遺跡で発見した円盤を持ってくるため、ウィーンにあるエンドレ財団の考古学研究所に行き、入矢とロッカの二人が先にティトゥアンを訪れます。
入矢とロッカは、ティトゥアンで街を支配する老女シャリーンと出会います。シャリーンの邸宅の地下には複雑な迷路があり、その中心にはアマゾク人(ベルベル人)の女王の墓があるとされています。入矢は、迷路の謎を解明する手がかりがテラ遺跡で発見した円盤にあると考え、デメルの到着を待ちます。
ウィーンのエンドレ財団考古学研究所に到着したデメルは、自分たちと同じく「山の老人」と敵対している組織の一員であるプリツェルと会い、入矢の命を「山の老人」の凄腕の殺し屋が狙っていること、『旧約聖書』以前の神の経典と思われる『ヌビア聖書』に奇妙で恐ろしい一節があることを知ります。
その一節は、「神は、ご自分にかたどり人を創る前に“山の老人”に命じ、彼の島を沈めた」というものです。つまり、人類創造以前に「山の老人」は存在したということになりますが、この一節の解釈について今はおいておきます。
入矢が凄腕の殺し屋に狙われていることを知ったデメルは、ムンツというボディーガードをティトゥアンに派遣します。ムンツはスペインから船に乗りモロッコへと向かい、甲板で海を眺めていると、男が話しかけてきますが、この男こそ、「山の老人」の幹部であるグレコ神父が派遣した凄腕の殺し屋であるゾラン=バシャなのでした。
気さくにムンツに話しかけて油断させ、ムンツの顔を鉛筆で描いたバシャは、その鉛筆をいきなりムンツの喉に刺し、海に投棄して殺害します。殺害相手の顔を描くのが、バシャの癖なのです。
タンジェに到着したバシャは、武器商人を訪ねて爆弾やナイフを購入しますが、両者の会話から、バシャがキリスト教徒であることと、かつてイスラム教徒を大勢殺したことが判明します。武器商人から軍事教官にならないか、と誘われたバシャは、世界中の神様を守るというやりがいのある仕事に就いているから、と言って断ります。
一方、入矢とロッカは、シャリーン宅の地下の迷路とその中にあるだろう墓を探検する準備にかかります。シャリーンから、墓はアマゾク人のものだが迷路はフェニキア人が造ったと聞いた入矢は、フェニキア人がクレタ文明の後継者だからだ、と納得します。
クレタ文明は、危険な魔物を封じ込めるためには迷路が必要だと考えられていたなど(代表例がクノッソスの迷宮)、独特な宗教観をもち、クレタ文明がサントリーニ島の噴火で衰退した後、フェニキア人はクレタ文明の文化や公開技術を継承して地中海を制覇した、というわけです。
デメルはサントリーニ島で発見された円盤をもってティトゥアンに到着し、入矢・ロッカと合流します。入矢の予想通り、円盤は迷路の地図になっていて、三人は迷路の探検に乗り出すことにします。
デメルは、殺し屋が入らないよう自分は入り口で見張ると言い、入矢には呼んでいた護衛をつけると言います。その護衛がシャリーン邸に到着し、デメルと会い、握手して「私はムンツです」と名乗りますが、この「護衛」こそ、ムンツを殺した凄腕の殺し屋のバシャなのでした。デメルも顔くらいちゃんと確認しておけよな・・・と思いますが(笑)。
バシャには連絡員を兼ねた殺し屋の男が一人つき、その男はバシャに援護しましょうか?と尋ねますが、バシャは一人でじゅうぶんだ、と答えます。
こうして、いよいよ入矢・ロッカ・バシャの三人は迷路に入っていきます。例によって長くなりそうなので(笑)、続きは後日ということにします。
https://sicambre.seesaa.net/article/200607article_28.html
にて述べましたが、81~84話をティトゥアン地下迷路編、85・86話をソロモンの壺編としてまとめ、87・88話は一話ずつ述べることにします。ティトゥアン地下迷路編を述べるにあたっては、11巻所収の81~84話だけではなく、必要に応じて10巻所収の話にも言及します。はじめに述べておくと、このティトゥアン地下迷路編では登場人物(おもに「山の老人」の暗殺者であるバシャですが)の行動がヘラクレス神話になぞらえられ、物語の世界に入り込む効果を高めています。
入矢とデメルは、チュニジアのチュニスにある遺跡で出会った女性考古学者のアニタ=ロッカとともに、アトランティスの痕跡を求めてモロッコのタンジェを訪れます。
チュニスの遺跡で発掘されたランプと陶片が、アトランティスの謎をとく鍵と思われるアマゾネスの故郷を探る手がかりであり、そのランプのうちの一つに描かれている絵は、古代の地図にみえて、現在のモロッコにあるとされる「七兄弟塚連峰」を示しており、別のランプの絵は、ヘラクレスとアンタイオス(タンジェの地神)との戦いを描いている、と推測したからです。
タンジェにある「ヘラクレスの洞窟」を訪れた三人は、古代の地図にみえる「七兄弟塚連峰」と同じ位置にあるリフ山脈のふもとの街ティトゥアンに重要な鍵があると推測し、ティトゥアンを訪れます。ティトゥアンは、古くからベルベル人の街ですが、ベルベル人は自らをアマゾクと称していて、アマゾネスと似ている、と入矢は言い、アマゾネス伝説との深い関わりが示唆されます。
ここでデメルは、以前入矢がサントリーニ島のテラ遺跡で発見した円盤を持ってくるため、ウィーンにあるエンドレ財団の考古学研究所に行き、入矢とロッカの二人が先にティトゥアンを訪れます。
入矢とロッカは、ティトゥアンで街を支配する老女シャリーンと出会います。シャリーンの邸宅の地下には複雑な迷路があり、その中心にはアマゾク人(ベルベル人)の女王の墓があるとされています。入矢は、迷路の謎を解明する手がかりがテラ遺跡で発見した円盤にあると考え、デメルの到着を待ちます。
ウィーンのエンドレ財団考古学研究所に到着したデメルは、自分たちと同じく「山の老人」と敵対している組織の一員であるプリツェルと会い、入矢の命を「山の老人」の凄腕の殺し屋が狙っていること、『旧約聖書』以前の神の経典と思われる『ヌビア聖書』に奇妙で恐ろしい一節があることを知ります。
その一節は、「神は、ご自分にかたどり人を創る前に“山の老人”に命じ、彼の島を沈めた」というものです。つまり、人類創造以前に「山の老人」は存在したということになりますが、この一節の解釈について今はおいておきます。
入矢が凄腕の殺し屋に狙われていることを知ったデメルは、ムンツというボディーガードをティトゥアンに派遣します。ムンツはスペインから船に乗りモロッコへと向かい、甲板で海を眺めていると、男が話しかけてきますが、この男こそ、「山の老人」の幹部であるグレコ神父が派遣した凄腕の殺し屋であるゾラン=バシャなのでした。
気さくにムンツに話しかけて油断させ、ムンツの顔を鉛筆で描いたバシャは、その鉛筆をいきなりムンツの喉に刺し、海に投棄して殺害します。殺害相手の顔を描くのが、バシャの癖なのです。
タンジェに到着したバシャは、武器商人を訪ねて爆弾やナイフを購入しますが、両者の会話から、バシャがキリスト教徒であることと、かつてイスラム教徒を大勢殺したことが判明します。武器商人から軍事教官にならないか、と誘われたバシャは、世界中の神様を守るというやりがいのある仕事に就いているから、と言って断ります。
一方、入矢とロッカは、シャリーン宅の地下の迷路とその中にあるだろう墓を探検する準備にかかります。シャリーンから、墓はアマゾク人のものだが迷路はフェニキア人が造ったと聞いた入矢は、フェニキア人がクレタ文明の後継者だからだ、と納得します。
クレタ文明は、危険な魔物を封じ込めるためには迷路が必要だと考えられていたなど(代表例がクノッソスの迷宮)、独特な宗教観をもち、クレタ文明がサントリーニ島の噴火で衰退した後、フェニキア人はクレタ文明の文化や公開技術を継承して地中海を制覇した、というわけです。
デメルはサントリーニ島で発見された円盤をもってティトゥアンに到着し、入矢・ロッカと合流します。入矢の予想通り、円盤は迷路の地図になっていて、三人は迷路の探検に乗り出すことにします。
デメルは、殺し屋が入らないよう自分は入り口で見張ると言い、入矢には呼んでいた護衛をつけると言います。その護衛がシャリーン邸に到着し、デメルと会い、握手して「私はムンツです」と名乗りますが、この「護衛」こそ、ムンツを殺した凄腕の殺し屋のバシャなのでした。デメルも顔くらいちゃんと確認しておけよな・・・と思いますが(笑)。
バシャには連絡員を兼ねた殺し屋の男が一人つき、その男はバシャに援護しましょうか?と尋ねますが、バシャは一人でじゅうぶんだ、と答えます。
こうして、いよいよ入矢・ロッカ・バシャの三人は迷路に入っていきます。例によって長くなりそうなので(笑)、続きは後日ということにします。
この記事へのコメント