現生人類の起源(6)

 前回(8月23日分)の続きです。
 前回は現生人類のアフリカ単一起源説について述べましたが、今回は、この説をめぐる議論について述べていきます。

 現生人類のアフリカ単一起源説とは、現生人類が世界各地で誕生したのではなく、アフリカでのみ誕生し、世界各地に拡散したとする説です。では、有名なネアンデルタール人をはじめとして、すでにユーラシア大陸各地に長く生存していた先住民と、アフリカよりやってきた現生人類との関係はどうなるのでしょうか。
 古人類学者の多くは当初、先住民とアフリカ出身の現生人類との間には、多少なりとも混血があったと考えていました。後に、単一起源説の代表的論客として、多地域進化説の代表的論客であるウォルポフ氏と激論をたたかわせたクリス=ストリンガー氏にしても、現生人類と先住民との間で完全な交代があったとの考えはなく、多少は混血があったのではないか、との考えでした。
 ギュンター=ブラウアー氏の見解はもっと「穏和」で、現生人類の起源はアフリカにあるが、現生人類は世界各地に進出する過程で先住民と混血し、その頻度は地域ごとに異なる、というものです。

 1980年代後半以降、遺伝分野の研究成果から、単一起源説は一気に支持を広げましたが、この分野からは、現生人類と先住民との混血を示唆するデータは得られず、現生人類と先住民との間に混血はなく、いわば完全置換だ、との見解が有力になりました。
 アラン=テンプルトン氏のように、遺伝的に大規模な混血があったと主張する研究者もわずかながらいますが、現代にいたるまで、遺伝分野の研究からは、現生人類と先住民との混血を示唆するデータはほとんど提示されていません。
 そのため、最近では、現生人類と先住民との間に混血はなく、完全な交代がなされたとの見解が有力になっていますが、私は、ネアンデルタール人などの先住民と現生人類との間には、わずかながら混血があった、と推測しています。ただ、現生人類のほうが圧倒的に人口が多く、混血自体もほとんどなかったため、現代人の遺伝子に先住民の痕跡を見出せなくなっているのだろう、と思います。
 7月21日分で紹介したように、ネアンデルタール人のゲノム解読が始まります。ネアンデルタール人と現代人や欧州の初期現生人類とのゲノム比較が進めば、混血の有無についてもっとはっきりしたことが言えるのでしょう。

この記事へのコメント

2006年08月24日 19:56
こんにちは。新着から入りました。私も何とか皆さんを驚かせようとブログを作っています。うちにもどうぞお越しください。
2006年08月24日 21:19
二度目のコメント、ありがとうございます。
再びブログを拝見しましたが、ユニークな
商品が紹介されていて、面白いと思います。

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