『イリヤッド』100話「参商の如し」(『ビッグコミックオリジナル』7/20号)
最新号が発売されたので、さっそく購入しました。昨日感想を書こうと思ったのですが、北朝鮮のミサイル発射という大きなニュースが入ってきたので、今日になったというしだいです。今号で『イリヤッド』もついに100話を迎えたわけですが、何話まで続くのでしょうね。
さて、タイトルの「参商の如し」ですが、中国では、オリオン座を参、さそり座を商といいます。両者は天球上では反対側に位置して同時には上らないので、不仲や疎遠な人間関係を「参商の如し」というのだそうです。というわけで今回は、中国を舞台として、オリオン座が重要な鍵であることが語られます。
今回の主要登場人物は、中国で翼馬グループを率いる(台湾にも拠点があるようですが)実業家で、アトランティス探索者でもある呉文明(シーマンミン)です。香港出身ですが、北京に会社を移してからは、姓の発音は北京語風にウーとし、欧米向に名前はリチャードと名乗っています。実は、第1回に登場し、その後4・5巻でも登場するという古株なのですが、当時は欧州人との対面ということもあり、リチャード=ウーと名乗っていて、今回はじめて本名が判明したというわけです。
今回の話は、呉文明の少年時代から始まります。呉文明には異父兄の呉規清がいましたが、兄は正妻の子で、弟は愛人の子です。というわけで、ありがちな話ですが、二人は仲がよくなかったようです。しかし、ピンクイルカ見学ではじめて意気投合し、香港のランタオ島から沖合いにボートを出しますが、ボートは転覆し、二人は死にかけます。
何とか生還した二人に、実業家の父は、溺れそうになりながら何を考えた?と問いかけます。兄の規清は、弟に誘われたが、弟のせいで死ぬのかと思うと腹が立った、と返答します。弟の文明は、ただ空を見ていた、と返答します。二人の返答を聞いた父は、兄の呉規清は歴史学者になるよう、弟の呉文明は自分の事業を継ぐように言い渡します。
話は現代に戻ります。呉文明率いる翼馬グループは買収をしかけられて苦境に立たされています。買収を仕掛けている投資集団の親会社は、プラトンズとオリハルコン貿易です。この報告を受けた呉文明は、それら親会社の背後に「山の老人」がいて、アトランティスから手を引けという警告だと即座に悟ります。85話で、「山の老人」の幹部とおぼしき人物が、呉文明の財閥に買収をしかけてアトランティス探索を妨害している、と言ってますが、それが伏線として今回の話に活かされているわけです。
大株主でもある兄の呉規清が難物だと部下から報告を受けた呉文明は、現在は古代中国史の教官でランタオ島にいる兄を訪ねます。呉文明は始皇帝について兄に尋ねます。「アラジンと魔法の物語」の舞台が中国で、アラジンがランプを発見したのは始皇帝陵であり、そのランプとは、アトランティスの秘密が隠されている「ソロモンの壺」なのです。
呉文明は兄に2冊の本を見せます。一つは、19世紀に出版された『千一夜物語』の中国語版。もう一つは、『秦始皇伝奇』の明代の写本ですが、成立は明代よりずっと古いとされています。
『千一夜物語』中国語版には、始皇帝陵に若者と妖術師が潜入したという、99話で触れられた『東方見聞録』の祖本の一節と似た記述が見られるのですが、『史記』にあるように、始皇帝陵には様々な仕掛けがあって、潜入は容易ではなさそうです。そこで呉文明は、妖術師が始皇帝陵内部に通じる秘密の抜け道を知っていたと推測し、『千一夜物語』の中国語版にしか見えない妖術師の呪文「二十八、二十一、三」「左後ろ足を東南に伸ばし、空色の龍に向かう」に着目します。
もうひとつの『秦始皇伝奇』には、始皇帝陵に関わった工匠のうち何人かは、抜け道から脱出したとの記述がありました。これにたいして『史記』では、全員生き埋めになったとされています。『秦始皇伝奇』にて、その抜け道を解く暗号とされているのが
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という図形です。
呉文明は兄にこの図形を見せますが、兄もすぐには分からず、太陽(日)と月ではないか、と推測します。呉文明は、この図形の謎解きを兄弟いっしょにやろうと兄の呉規清にもちかけますが、兄は、これが大株主である自分の歓心を買う手段なのではないかと疑います。それにたいして呉文明は、少年時と同じく、ピンクイルカを見にいこうと兄を誘います。洋上で兄は弟にたいして、なぜ父が弟を後継者に指名したか、尋ねます。
ここで兄弟が少年時代に溺れた直後と思われる場面に移ります。呉文明は父に、事業を継ぎたくないのか?と問われ、今はシュリーマンのような歴史学者兼宝探し屋が夢だと答えます。ここでも、シュリーマンが憧れの存在・目標として登場し、『イリヤッド』におけるシュリーマンの存在感の強さを改めて思い知らされます。
父は息子の呉文明に、次のように語ります。私は、文明と規清は「人生相見えざること参商の如し」の関係だと考えていたが、お前には、今日見たものをいつか思い出してほしい。それが自分の愛する息子二人が並び立つ方法だと思う。
では、呉文明が見たものとは何だったのでしょうか。呉文明は、溺れた直後に、ただ空を見ていた、と父に返答しています。そのとき空には、日の入りと月の出が同時に見えた、つまり月と太陽が同時に出ていたのです。少年だった呉文明は、同時に出た月と太陽をはじめて見て驚いたのです。
父の意思は、「参商の如し」ではなく、たまには同時に見える月と太陽、つまり、沈みゆく太陽が昇りゆく月と交代するように、弟が先に事業を継ぎ、その後で兄が弟から事業を継ぐ、ということだったのです。もちろん、少年時代の呉文明はすぐには父の言わんとすることに気づいたわけではないでしょうが、成長する過程で、いつしか悟ったのでしょう。
呉文明は、事業を兄に引き継いでもらい、自分は引退してアトランティス探索に専念することを兄に告げます。これにたいして兄は、『秦始皇伝奇』に見える暗号が、月と日ではなく、オリオン座であると弟に答えます。古代の中国では、天空の星を二十八に分割し、二十八宿と呼んでいました。その二十八宿の二十一番目で、三=参・・・つまりオリオン座というわけです。
ここで場面は東京の入矢堂に移ります。呉文明は、アイルランドの実業家の口利きで、入矢修造と組むことになったのです。このアイルランドの実業家とは、イアン=ワードのことと思われます。
ワードと呉文明は、1話のアトランティス会議にともに出席していて、その後、4巻と5巻とでも両者が会っている場面が描かれています(5巻の場面では、入矢も同席しています)。ワードは、現在は妻の看病に専念し、アトランティス探索の夢は入矢に託しています。
入矢とゼプコ老人は呉文明から説明を受け、中国に向かうことになりますが、『秦始皇伝奇』に見える暗号が、カナリア諸島のテネリフェ島の地下(山中)ピラミッドに安置されていた「冥界の王」のミイラに描かれていた図形
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と似ていることに気づきます。さて、これがどのような意味をもつのか、というところで今回は終了です。
さて、『秦始皇伝奇』に見える暗号がオリオン座を表しているとしたら、よく似た「冥界の王」の図形との関係はどうなるのでしょうか。多少異なりますが、どちらもオリオン座を表しているということなのでしょうか。96話にて、「山の老人」の幹部であるグレコ神父が、「冥界の王」の図形を見て衝撃を受けた場面が描かれていますので、アトランティスの謎を解明するうえで重要なヒントであることは間違いないのでしょう。
オリオン座説が正しいとすると、オリオンは、海神にして子孫がアトランティスを治めたとされるポセイドンの子ですから、『イリヤッド』ではアトランティスと深い関わりがあるという設定になっているのでしょう。また、オリオンの母については、アマゾンの女王との説もあります。アマゾネス伝説は、『イリヤッド』において重要な位置を占めていますので、この方面からも、アトランティスとの関わりは深そうです。
また、オリオン座は、シュメールでは羊に見立てられていたそうです。『イリヤッド』において、羊はアトランティスの謎を解明するうえで重要な鍵の一つとされていますので、これも作中で取り上げられるのかもしれません。こうしてみると、オリオン座は今後作中で重要な役割を担うことになりそうです。
今回は、古典を引用しての人生訓を交えつつ、以前にはられていた伏線を活かして謎解きも進めるという、ヒューマンストーリーと歴史ミステリーの融合した、『イリヤッド』らしい話でした。
呉兄弟とその父の心理状況を丁寧に描きつつ進められる話は、最近では一番の出来だったのではないかと思います。改めて、原作者さんのストーリー構成と、それを見事に漫画化した魚戸氏に感服した次第です・・・ってちょっと誉めすぎでしょうか(笑)。こんなことを書いていると、私が関係者なのでは?と疑われるかもしれませんが(笑)、もちろん私はただの一読者で、『イリヤッド』の制作には一切関わっていません。
さて次号では、入矢・ゼプコ老人・呉文明が中国に向かうようですが、なんと巻頭カラーです。7月28日に単行本第11巻が発売されるので、それに合わせているのでしょう。前回の巻頭カラーも、単行本第10巻の発売に合わせたものでした。予告ページでは、以下のように書かれています。
>通説や定説を覆す、古代史の新説、いや真説がある。本作は危険な作品である。<
>アトランティスの核心に触れることは、誰かの“神”を冒涜する行為なのか。<
>入矢は遂に、アトランティスの謎に迫る“真の道”へと歩を進める。だがそれは、進むことも戻ることも許されぬ危険な道だった・・・!?<
うーん、じつに楽しみなのですが(笑)、肩透かしになりそうな心配も・・・。巻頭カラーとはいっても、増ページというわけではなさそうですし、一気に「アトランティスの謎に迫る真の道」に足を踏み入れるところまで描けるかとなると、疑問です。
とはいっても、「人類がぜったい知るべきではない、太古の呪われた秘密」の核心に迫る文章で、今までこれほど明確に文章化されたことはなかったという意味では、注目に値します。あるいは、オリオン座(二つの図形)が数々の謎を結びつける重要な役割を演ずるのかもしれず、いよいよ最終回に向けてラストスパートに入ったのかな、とも思いますが、「人類がぜったい知るべきではない、太古の呪われた秘密」を知ったとしても、入矢とその仲間の反応がどうなるのかが描かれるでしょうし(公表すべきか、秘密にすべきか)、さらには人情話もからめて描くとなると、すぐには終わらないのでしょう。
早く謎を知りたいとの気持ちはもちろんありますが、一方で、この質の高い作品を長く楽しみたいという気持ちもあるので、複雑なところです。ともかく、次回をたいへん楽しみに待っています。
さて、タイトルの「参商の如し」ですが、中国では、オリオン座を参、さそり座を商といいます。両者は天球上では反対側に位置して同時には上らないので、不仲や疎遠な人間関係を「参商の如し」というのだそうです。というわけで今回は、中国を舞台として、オリオン座が重要な鍵であることが語られます。
今回の主要登場人物は、中国で翼馬グループを率いる(台湾にも拠点があるようですが)実業家で、アトランティス探索者でもある呉文明(シーマンミン)です。香港出身ですが、北京に会社を移してからは、姓の発音は北京語風にウーとし、欧米向に名前はリチャードと名乗っています。実は、第1回に登場し、その後4・5巻でも登場するという古株なのですが、当時は欧州人との対面ということもあり、リチャード=ウーと名乗っていて、今回はじめて本名が判明したというわけです。
今回の話は、呉文明の少年時代から始まります。呉文明には異父兄の呉規清がいましたが、兄は正妻の子で、弟は愛人の子です。というわけで、ありがちな話ですが、二人は仲がよくなかったようです。しかし、ピンクイルカ見学ではじめて意気投合し、香港のランタオ島から沖合いにボートを出しますが、ボートは転覆し、二人は死にかけます。
何とか生還した二人に、実業家の父は、溺れそうになりながら何を考えた?と問いかけます。兄の規清は、弟に誘われたが、弟のせいで死ぬのかと思うと腹が立った、と返答します。弟の文明は、ただ空を見ていた、と返答します。二人の返答を聞いた父は、兄の呉規清は歴史学者になるよう、弟の呉文明は自分の事業を継ぐように言い渡します。
話は現代に戻ります。呉文明率いる翼馬グループは買収をしかけられて苦境に立たされています。買収を仕掛けている投資集団の親会社は、プラトンズとオリハルコン貿易です。この報告を受けた呉文明は、それら親会社の背後に「山の老人」がいて、アトランティスから手を引けという警告だと即座に悟ります。85話で、「山の老人」の幹部とおぼしき人物が、呉文明の財閥に買収をしかけてアトランティス探索を妨害している、と言ってますが、それが伏線として今回の話に活かされているわけです。
大株主でもある兄の呉規清が難物だと部下から報告を受けた呉文明は、現在は古代中国史の教官でランタオ島にいる兄を訪ねます。呉文明は始皇帝について兄に尋ねます。「アラジンと魔法の物語」の舞台が中国で、アラジンがランプを発見したのは始皇帝陵であり、そのランプとは、アトランティスの秘密が隠されている「ソロモンの壺」なのです。
呉文明は兄に2冊の本を見せます。一つは、19世紀に出版された『千一夜物語』の中国語版。もう一つは、『秦始皇伝奇』の明代の写本ですが、成立は明代よりずっと古いとされています。
『千一夜物語』中国語版には、始皇帝陵に若者と妖術師が潜入したという、99話で触れられた『東方見聞録』の祖本の一節と似た記述が見られるのですが、『史記』にあるように、始皇帝陵には様々な仕掛けがあって、潜入は容易ではなさそうです。そこで呉文明は、妖術師が始皇帝陵内部に通じる秘密の抜け道を知っていたと推測し、『千一夜物語』の中国語版にしか見えない妖術師の呪文「二十八、二十一、三」「左後ろ足を東南に伸ばし、空色の龍に向かう」に着目します。
もうひとつの『秦始皇伝奇』には、始皇帝陵に関わった工匠のうち何人かは、抜け道から脱出したとの記述がありました。これにたいして『史記』では、全員生き埋めになったとされています。『秦始皇伝奇』にて、その抜け道を解く暗号とされているのが
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という図形です。
呉文明は兄にこの図形を見せますが、兄もすぐには分からず、太陽(日)と月ではないか、と推測します。呉文明は、この図形の謎解きを兄弟いっしょにやろうと兄の呉規清にもちかけますが、兄は、これが大株主である自分の歓心を買う手段なのではないかと疑います。それにたいして呉文明は、少年時と同じく、ピンクイルカを見にいこうと兄を誘います。洋上で兄は弟にたいして、なぜ父が弟を後継者に指名したか、尋ねます。
ここで兄弟が少年時代に溺れた直後と思われる場面に移ります。呉文明は父に、事業を継ぎたくないのか?と問われ、今はシュリーマンのような歴史学者兼宝探し屋が夢だと答えます。ここでも、シュリーマンが憧れの存在・目標として登場し、『イリヤッド』におけるシュリーマンの存在感の強さを改めて思い知らされます。
父は息子の呉文明に、次のように語ります。私は、文明と規清は「人生相見えざること参商の如し」の関係だと考えていたが、お前には、今日見たものをいつか思い出してほしい。それが自分の愛する息子二人が並び立つ方法だと思う。
では、呉文明が見たものとは何だったのでしょうか。呉文明は、溺れた直後に、ただ空を見ていた、と父に返答しています。そのとき空には、日の入りと月の出が同時に見えた、つまり月と太陽が同時に出ていたのです。少年だった呉文明は、同時に出た月と太陽をはじめて見て驚いたのです。
父の意思は、「参商の如し」ではなく、たまには同時に見える月と太陽、つまり、沈みゆく太陽が昇りゆく月と交代するように、弟が先に事業を継ぎ、その後で兄が弟から事業を継ぐ、ということだったのです。もちろん、少年時代の呉文明はすぐには父の言わんとすることに気づいたわけではないでしょうが、成長する過程で、いつしか悟ったのでしょう。
呉文明は、事業を兄に引き継いでもらい、自分は引退してアトランティス探索に専念することを兄に告げます。これにたいして兄は、『秦始皇伝奇』に見える暗号が、月と日ではなく、オリオン座であると弟に答えます。古代の中国では、天空の星を二十八に分割し、二十八宿と呼んでいました。その二十八宿の二十一番目で、三=参・・・つまりオリオン座というわけです。
ここで場面は東京の入矢堂に移ります。呉文明は、アイルランドの実業家の口利きで、入矢修造と組むことになったのです。このアイルランドの実業家とは、イアン=ワードのことと思われます。
ワードと呉文明は、1話のアトランティス会議にともに出席していて、その後、4巻と5巻とでも両者が会っている場面が描かれています(5巻の場面では、入矢も同席しています)。ワードは、現在は妻の看病に専念し、アトランティス探索の夢は入矢に託しています。
入矢とゼプコ老人は呉文明から説明を受け、中国に向かうことになりますが、『秦始皇伝奇』に見える暗号が、カナリア諸島のテネリフェ島の地下(山中)ピラミッドに安置されていた「冥界の王」のミイラに描かれていた図形
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と似ていることに気づきます。さて、これがどのような意味をもつのか、というところで今回は終了です。
さて、『秦始皇伝奇』に見える暗号がオリオン座を表しているとしたら、よく似た「冥界の王」の図形との関係はどうなるのでしょうか。多少異なりますが、どちらもオリオン座を表しているということなのでしょうか。96話にて、「山の老人」の幹部であるグレコ神父が、「冥界の王」の図形を見て衝撃を受けた場面が描かれていますので、アトランティスの謎を解明するうえで重要なヒントであることは間違いないのでしょう。
オリオン座説が正しいとすると、オリオンは、海神にして子孫がアトランティスを治めたとされるポセイドンの子ですから、『イリヤッド』ではアトランティスと深い関わりがあるという設定になっているのでしょう。また、オリオンの母については、アマゾンの女王との説もあります。アマゾネス伝説は、『イリヤッド』において重要な位置を占めていますので、この方面からも、アトランティスとの関わりは深そうです。
また、オリオン座は、シュメールでは羊に見立てられていたそうです。『イリヤッド』において、羊はアトランティスの謎を解明するうえで重要な鍵の一つとされていますので、これも作中で取り上げられるのかもしれません。こうしてみると、オリオン座は今後作中で重要な役割を担うことになりそうです。
今回は、古典を引用しての人生訓を交えつつ、以前にはられていた伏線を活かして謎解きも進めるという、ヒューマンストーリーと歴史ミステリーの融合した、『イリヤッド』らしい話でした。
呉兄弟とその父の心理状況を丁寧に描きつつ進められる話は、最近では一番の出来だったのではないかと思います。改めて、原作者さんのストーリー構成と、それを見事に漫画化した魚戸氏に感服した次第です・・・ってちょっと誉めすぎでしょうか(笑)。こんなことを書いていると、私が関係者なのでは?と疑われるかもしれませんが(笑)、もちろん私はただの一読者で、『イリヤッド』の制作には一切関わっていません。
さて次号では、入矢・ゼプコ老人・呉文明が中国に向かうようですが、なんと巻頭カラーです。7月28日に単行本第11巻が発売されるので、それに合わせているのでしょう。前回の巻頭カラーも、単行本第10巻の発売に合わせたものでした。予告ページでは、以下のように書かれています。
>通説や定説を覆す、古代史の新説、いや真説がある。本作は危険な作品である。<
>アトランティスの核心に触れることは、誰かの“神”を冒涜する行為なのか。<
>入矢は遂に、アトランティスの謎に迫る“真の道”へと歩を進める。だがそれは、進むことも戻ることも許されぬ危険な道だった・・・!?<
うーん、じつに楽しみなのですが(笑)、肩透かしになりそうな心配も・・・。巻頭カラーとはいっても、増ページというわけではなさそうですし、一気に「アトランティスの謎に迫る真の道」に足を踏み入れるところまで描けるかとなると、疑問です。
とはいっても、「人類がぜったい知るべきではない、太古の呪われた秘密」の核心に迫る文章で、今までこれほど明確に文章化されたことはなかったという意味では、注目に値します。あるいは、オリオン座(二つの図形)が数々の謎を結びつける重要な役割を演ずるのかもしれず、いよいよ最終回に向けてラストスパートに入ったのかな、とも思いますが、「人類がぜったい知るべきではない、太古の呪われた秘密」を知ったとしても、入矢とその仲間の反応がどうなるのかが描かれるでしょうし(公表すべきか、秘密にすべきか)、さらには人情話もからめて描くとなると、すぐには終わらないのでしょう。
早く謎を知りたいとの気持ちはもちろんありますが、一方で、この質の高い作品を長く楽しみたいという気持ちもあるので、複雑なところです。ともかく、次回をたいへん楽しみに待っています。
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