ユーラシア東部内陸部の鉄器時代以降の人口史

 ユーラシア東部内陸部の鉄器時代以降の人類のゲノムデータを報告した研究(Li et al., 2025)が公表されました。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、【現在は中華人民共和国の支配下にあり、行政区分では新疆ウイグル自治区とされている】東トルキスタン中央部の鉄器時代から歴史時…
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前期完新世の海水準上昇

 前期完新世の海水準上昇に関する研究(Hijma et al., 2025)が公表されました。前期完新世の最終退氷期の最終段階における相対的な海水準上昇の速度は、温暖化する気候下での将来の氷の融解と海水準変動を理解する上で重要となります。こうした速度についてのデータは乏しく、これが、前期完新世の全球海水準上昇に対する北アメリカ大陸と南極…
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山東半島の古代ゲノム研究の進展

 昨年(2024年)後半から今年にかけて、山東半島の人類集団の古代ゲノム研究が一気に進展したように思われ、当ブログでもそれなりの数の研究を取り上げてきましたので、黄河中流域(中原)の人類集団の近年の古代ゲノム研究にも言及しつつ、一度短くまとめておきます。ただ、的確とはとても言えないので、今後の研究の進展を踏まえて、さらに修正していく必要…
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コイサン人の複雑な人口史

 アフリカ南部のコイサン人(Khoe-San、略してKS)の複雑な人口史について、先月(2025年3月)20日~23日にかけてアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア市で開催された第94回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Edington et al., 2025)。この報告の要約はPDFファイルで読めま…
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岡本隆司『倭寇とは何か 中華を揺さぶる「海賊」の正体』

 新潮選書の一冊として、新潮社から2025年2月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書は、多くの人が想像するだろう倭寇の概説ではなく、そうした意味での倭寇も解説しつつ、「倭寇」という言説を通じて、前期倭寇から現代までの「日中関係」も含めての「中国史」を浮き彫りにしています。倭寇や日中関係史の概説は少なくないでしょうが、本書は表題か…
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九州の弥生時代から古墳時代の人類のミトコンドリアDNA

 九州の弥生時代から古墳時代の人類のミトコンドリアDNA(mtDNA)解析結果を報告した研究(角田他.,2025)が公表されました。九州地方の弥生時代人類集団はその形態的特徴に基づいて、ユーラシア大陸東部から到来した集団の遺伝的特徴が強い北部の「渡来系」、縄文時代人類集団(縄文人)の特徴が強い「西北九州系」、きょくたんな特徴の頭骨形態の…
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オマーンの中部旧石器時代の遺跡

 オマーンの中部旧石器時代の遺跡を報告した研究(Chlachula et al., 2025)が公表されました。本論文は、オマーンのホクフ(Huqf)地域のワディ・バウ・イースト(Wadi Baw East)として知られる地域で発見された、中部旧石器時代の遺跡を報告しています。この地域のワディ・バウ3(Wadi Baw 3、略してWB3…
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マカク属のゲノム

 マカク属のゲノムを報告した研究(Zhang et al., 2024)が公表されました。カニクイザル(Macaca fascicularis)とアカゲザル(Macaca mulatta)は、生物医学や進化学の研究にきわめて重要です。しかし、それらのゲノムの複雑性および種間の遺伝的差異はまだ解明されていません。本論文は、カニクイザルの完…
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北周の高官である高賓のゲノムデータ

 北周の高官である高賓(Gao Bin)のゲノムデータを報告した研究(Yu et al., 2025)が公表されました。高賓の息子が隋の高官で煬帝(明帝)に誅殺された高熲(Gao Jiong)、高熲の息子が高表仁(Gao Biaoren)で、高表仁は日本(倭国)からの遣唐使の送使として来日したことで、日本でも比較的有名でしょう。本論文は…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第16回「さらば源内、見立ては蓬莱」

 今回は平賀源内の退場が描かれました。前回描かれた徳川家基の毒殺と松平武元の死(暗殺?)が、今回の源内の退場にもつながっており、これが源内と田沼意次の関係を悪化させ、源内の精神状態をますます不安定化させることなど、長期の一話完結ではない連続ものの時代劇としてなかなか上手い構成だと思います。源内の精神状態が不安定化していく前提として、直接…
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『卑弥呼』第148話「動き」

 『ビッグコミックオリジナル』2025年5月5日号掲載分の感想です。前回は、日下(ヒノモト)国の吉備津彦(キビツヒコ)が、宍門(アナト)国の豊浦(トヨラ)で山社(ヤマト)連合軍が上陸したところで全滅させようと考えていたのに、山社の日見子(ヒミコ)であるヤノハがその策に乗らなかったため、自分は日見子と勝手に勝負して勝手に負けたのだ、と自嘲…
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宮崎市定著、井上文則編『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』

 講談社学術文庫の一冊として、2021年11月に講談社より刊行されました。電子書籍での購入です。すでに全集や文庫などで読んでいた論文も多く掲載されていますが、全集未収録作品と、宮崎市定氏の遺族(娘の一技氏)の証言も取り上げられており、編者の解説が掲載されて割引価格だったこともあり、購入しました。宮崎氏は講談社が大嫌いだったとのことで、こ…
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渤海の島嶼部の古代人のゲノムデータ

 渤海の島嶼部の古代人のゲノムデータを報告した研究(Zhang X, and Zhang F., 2025)が公表されました。本論文は、渤海の山東半島と遼東半島の間に位置する、苗島(Miaodao)諸島の砣磯(Tuoji)島の大口(Dakou)遺跡で発見された先史時代人類のゲノムデータを報告しています。大口遺跡は現在の行政区分では、中華…
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ホモ・フロレシエンシスの骨盤形態の比較

 ホモ・フロレシエンシス(Homo floresiensis)の骨盤形態と他の人類との比較について、先月(2025年3月)20日~23日にかけてアメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア市で開催された第94回アメリカ生物学会(旧称はアメリカ自然人類学会)総会で報告されました(Lewton et al., 2025)。この報告の要約はPDFフ…
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湿潤な熱帯林における人類最古の痕跡

 湿潤な熱帯林における人類最古の痕跡を報告した研究(Arous et al., 2025)が公表されました。本論文は、コートジボワール南部のベテI(Bété I)遺跡の堆積物の植物蝋状物質(ワックス)の生体標識や安定同位体や植物珪酸体化石(プラントオパール)や花粉分析から、ベテI遺跡が当時湿潤な森林環境だったことを示しています。さらに、…
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アフリカ東部における150万年前頃の骨角器

 アフリカ東部における150万年前頃の骨角器を報告した研究(Torre et al., 2025)が公表されました。本論文は、タンザニア北部のオルドヴァイ峡谷のFLK(Frida Leakey Korongo、フリダ・リーキー・コロンゴ)西小峡谷で発見された骨角器の分析から、この地域で150万年前頃には体系的に骨角器が製作されていた、と…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第15回「死を呼ぶ手袋」

 今回は、将軍の徳川家治の世継ぎだった徳川家基の死が描かれました。家基の若すぎる死について、毒殺と疑っている人は少なくないかもしれませんが、本作でも毒殺と描かれていました。本作では、家基が田沼意次をひじょうに嫌っている、と描かれており、自分の息子を将軍の後継者に考えていると思われる野心家の一橋治済と組んで、田沼意次が毒殺したのではないか…
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台湾沖で発見されたデニソワ人の下顎骨

 台湾沖で発見された人類遺骸のプロテオーム解析結果を報告した研究(Tsutaya et al., 2025)が報道されました。日本語の解説記事もあります。[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、台湾本島と澎湖諸島の間の水深60m~120mの海域で、他の脊椎動物とともに漁網にかかって発…
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白石典之『遊牧王朝興亡史 モンゴル高原の5000年』

 講談社選書メチエの一冊として、2025年1月に刊行されました。電子書籍での購入です。本書はおもにモンゴル高原を対象として、考古学の知見を活用した遊牧民の歴史の概説で、遊牧民の具体的な生活と行動を浮き彫りにしているところが特徴です。モンゴル高原は、西をアルタイ山脈、北をサヤン山脈とヤブロノーブイ山脈、東を大興安嶺山脈、南を陰山山脈と祁連…
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ミトコンドリアに基づくマンモスの進化史

 マンモスのミトコンドリアゲノムを報告した研究(Chacón-Duque et al., 2025)が公表されました。本論文は、シベリアと北アメリカ大陸で発見された前期更新世(Early Pleistocene、略してEP)および中期更新世(Middle Pleistocene、略してMP)のマンモスの新たなミトコンドリアDNA(mtD…
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山東半島の戦国時代~南北朝時代の人類のゲノムデータ

 山東半島の戦国時代~南北朝時代の人類のゲノムデータを報告した研究(Qu et al., 2025)が公表されました。本論文はオンライン版での公開が昨年(2024年)7月と早かったため、当ブログでこれまでに取り上げた研究(Wang B et al., 2024、Fang et al., 2025、Wang et al., 2025、Ma…
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古代ゲノムから推測される雲南貴州高原への漢文化の拡散

 取り上げるのが遅れてしまいましたが、古代ゲノムから現在の中国南西部に位置する雲南省から貴州省の高原地帯への漢文化の拡散を推測した研究(Zhu et al., 2024)が公表されました。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文は、ヒト起源(Human Origins、略してHO)…
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『サイエンスZERO』「最新報告 古代DNAで迫る 日本人の来た道」

 国立科学博物館特別展「古代DNA ―日本人のきた道―」で、石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡で発見された27000年前頃の男性人類遺骸(4号人骨、白保4号)のゲノム解析に成功した、と紹介されていたので、たいへん注目していましたが(関連記事)、NHK教育テレビの『サイエンスZERO』で取り上げられると知り(公式サイト)、視聴しました。国立科学…
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回「蔦重瀬川夫婦道中」

 今回は、蔦屋重三郎と瀬以(花の井、五代目瀬川)の関係の結末が描かれました。座頭金の問題で当道座が摘発され、鳥山検校(玉一)と鳥山検校に身請けされた瀬以も幕吏に連行されてしまい、抗議した重三郎も一旦は拘束されますが、重三郎も瀬以もすぐに釈放されます。当道座との関わりから、吉原にも類が及ぶところでしたが、吉原の有力者によって何とか回避され…
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『卑弥呼』第147話「計りごと」

 『ビッグコミックオリジナル』2025年4月20日号掲載分の感想です。前回は、ヤノハが山社(ヤマト)連合の兵2000人を遼東の近くまで行軍させる、と山社国の重臣に伝えるところで終了しました。今回は、宍門(アナト)国の豊浦(トヨラ)で、日下(ヒノモト)国の吉備津彦(キビツヒコ)が軍勢を率いて、豊浦の邑長に、ここは戦場になるから早急に避難す…
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森恒二『創世のタイガ』第13巻(講談社)

 2025年3月に刊行されました。第12巻は、現生人類(Homo sapiens)側の王であるタイガが、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)側(とはいっても、その指導者は第二次世界大戦のドイツとフランスの国境付近の戦場から来たドイツ人将校ですが)の王族(旧石器時代に時間移動させられた第二次世界大戦時のドイツ軍…
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哺乳類の外耳の進化

 哺乳類の外耳(耳介)の進化に関する研究(Thiruppathy et al., 2025)が公表されました。進化の過程で新しい構造がどのように出現するかは、生物学における古くからの関心事です。その一例が、哺乳類の中耳の小さな骨が祖先の魚類の下顎骨からどのように生じたのか、ということです。対照的に、哺乳類の別の新機軸である外耳の進化的起…
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『卑弥呼』第18集発売

 待望の第18集が発売されました。第18集には、 口伝135「戦う女王」 https://sicambre.seesaa.net/article/202408article_7.html 口伝136「大博打」 https://sicambre.seesaa.net/article/202408article_21.htm…
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愛知県の朝日遺跡の弥生時代人類のゲノムデータ

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、愛知県清須市にある朝日遺跡で発見された弥生時代人類のゲノムデータを報告した研究(篠田他.,2024)が公表されました。本論文は、朝日遺跡で発見された弥生時代中期もしくはそれ以降の人類23個体のうち、コラーゲンの残存状態が良好な1個体(13号)のゲノムデータを報告しています。この朝日遺跡の13…
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雲南省の後期更新世人類のゲノムデータの検証

 中華人民共和国の雲南省で発見された後期更新世人類のゲノムデータを検証した研究(Tabin et al., 2025)が公表されました。なお、[]は本論文の参考文献の番号で、当ブログで過去に取り上げた研究のみを掲載しています。本論文が検証したのは、雲南省の馬鹿洞(Maludong、Red Deer Cave)で発見された、MZR(Men…
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